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「……キラナ」
キラナの部屋がベレンによってノックされたのは、ちょうどキラナがそろそろベッドに入ろうかと考えていた時のことだった。
ここ一週間設計にかかりきりで、少し疲労が溜まっていたからだ。
「夜遅くにすまないが、急ぎで相談したいことがある。入っていいかな?」
「はい」
キラナは即答する。
彼女はベレンという人間をある程度理解していた。
彼が「急ぎで」と言ったのなら、その必要があることなのだ。
「――我々に逮捕状が出るようだ」
ベレンはキラナの部屋に入り、椅子に座った後、前置き無しでそう告げた。
それから、同僚のルークからもたらされた情報をそのまま彼女に伝える。
「ベレンさんは……どうするつもりですか?」
キラナの問いに、
「まずは君の話を聞くべきだと思ってね」
ベレンは答える。
「君に訊けばわかると思ったんだ。――最も真実に近づく方法が」
キラナは少しの間考えてから、
「……それでも私は、月に行かなければなりません」
「なるほど。ではそうしよう」
ベレンは気負うこともなく、あっさり頷く。そして、
「何かプランはあるかな?」
ベレンの問いに、キラナは答える。
「まずは、キエフに行かなければなりません。あれを――челове́кを、受け取らないと」




