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真夜の唄を知る  作者: 春信 彦
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街を駆け回り、そして吐く

彼女は、ずっとこちらを見続けていた。

私は、不思議と普段ならば嘘でも、大丈夫だとか、怪我はないだとか、演じたような気遣いをするのだが、あいにく、今日はあまり気を使いたくない。

とりあえず。

『随分とみすぼらしい格好だな、黙って抱かせろよブス』

と、随分と直球に風潮した。

鳩が豆鉄砲を食らったかのような、顔をする。

どうやら、もう涙すらでないらしい。

膝の土を払い、立ちこっちに歩いてくる。

片方の足を引きずりながらみすぼらしく歩く。

彼女を、近くの公衆トイレに待たせ、服を上限突破しそうな、クレジットカードでリボ払いし、売春にねだる清潔感の全くないオス達が群がっているのを横目に、全く企業努力を感じられない、まずい100円コーヒーの口にキスをしてコンビニエンスストアを出た。

夜の匂いと、酒の匂い、マニアックで嗅いだことのないタバコの匂い、そしてゲロの匂いと前日に何を食したのか知りたくなるような臭い小便の匂い。

ただ、私は普通の社会よりこの腐敗しきった街を気に入っている。

人間の本性を隠し、したたかに裏切る混沌とした社会よりも、堂々と理性のない社会のほうが生きやすい。

だいたい、加害側が損をするではないか、、、

と、頭の中を足りない脳みそで巡らせる。

公衆トイレに戻ると彼女は、裸になっていた。

どこにでも、よくいるメスの体に別に大きくもない胸とやけにお尻にあおたんができている、犯されながら叩かれたのだろう。

私は、

『なぜ裸なんだよ、豚野郎、また犯されたいのかよ』と精一杯の嫌悪を込めて言葉をナイフのように投げたつもりだった。

彼女は、キスをしてきた。

妙に舌が滑らかな動きをする、さっきの初めてのセックスでやり方を覚えたのだろうか、タバコの匂いもかすかにする、あの男たちの臭いだろう。

ここまで、間違っていると思うキスは初めてだった。

彼女が股を開きながら口を開く。

『裸で走り回りたいな』

私は、何を血迷ったのかわからなかった。

彼女は、常識がないのだ。

全てめんどくさくなっていた。

そして、私は服を脱ぎ裸になり。

また、彼女の少しも興奮しないカサついた唇にキスをした。

公園の周りを裸で走った。

阿呆だと思った。

その時だけは、月の光が心地よかった。

まだ残る、残冬のなごりと体温が低くなる唇がとても気持ちが良かった。

全てから、この濁った社会から独立した気分になれた。

たまに、通りかかる猿共に写真やら、通報はされたが、どうでもよかった。

彼女もきっとそう感じているのだろうと不思議にそうわかった。

そして、公園の真ん中で陰部同士ををこすり合わせ、一度、射精する。

綺麗に乾いた唇と、あざだらけの顔で少女のような笑顔で愛玩する。

私達は、セックスをした。

二人で人工的な公園の土の上に二人で横たわった。

星が輝いていた。

光っているのだ。

自由になれた気がした。

2度も3度も彼女を抱いた。

疲れると私自身も彼女に抱かれた。

何度したかもわからない。

た今までのセックスで一番最高だったと今でも思う。

彼女は、あざだらけの顔と固まった鼻血を見せつけるように少女のような笑顔で言う。

『月が綺麗だね』と

そのまま、二人で公衆トイレで誰の靴がついたかもわからない清掃業者がサボりきった汚い床に頭を付け眠る。

彼女は、眠る私の前で顔をめがけ、ゲロを吐いた。


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