1 柔らかな手から託されたもの
きっと健全な男子なら今の俺のこの気持ちは分かってくれるだろう。
朝起きて、目の前に女性が立っていて、しかも前屈みになり彼女の顔と俺の顔が今にもくっつきそうな距離で…微笑んでいる。
それだけでも理性が飛びそうなのに、彼女は…俺の理想の女性そのままであった。
まず、俺の目と鼻を魅了したのは綺麗でいい香りのする黒髪のセミロング。
それから絶対誰に対しても媚びない強い光を宿した猫のような釣り目。
そんな彼女の吸い寄せられそうになるぷっくりとした唇も忘れてはいけない。
絵に描いたよう美人とは彼女のためにある言葉だと俺は言い張れる。
その上、男としてどうしても見てしまう…とても素晴らしい膨らんだ胸。
そう、これは対男性用凶器である。
そんな美女が俺のベッドの横、俺の部屋で二人きりの状況。
今の俺の心臓は人に聞こえるのでは?というくらいにドクンドクンと脈を打つ。
それにしても…どこかで見たことあるような気がする女性だよな。
更に彼女は俺に次の一手を打って来た。
俺に右手をそっと差し出す。
そして、彼女はまるで春の雪解けを告げる温かい声で俺に言ってきた。
「私と共に戦ってはくれないだろうか?」
どう考えても夢だし、百歩譲って…トラップでしかない。
だが、その可能性が頭の中にあったのは刹那であった。
いつの間にか、俺の頭の中には「手を握る」「頷く」「抱き着く」の選択肢しか存在してなかった。
さすがに「抱き着く」は初対面の女性にできないので「手を握る」か「頷く」の二択だが、女性は右手を差し出しているのだ。
もう選択肢は一択である。
俺は小学校三年生の歌の発表会で女性教員が「空くんならできるよ。緊張しないでがんばろ!」と握ってくれて以来、触れたことのない女性の手に自分の手を伸ばす。
その手に触れた感想は…
柔らかくて…温かい。
このまま死んでも構わない。
いや、手を握るのと死を同列に扱うのはどうかしていた。
だが、その手よりも俺の目は豊かな、今にもこぼれ落ちそうな胸に視線が…いや、理性は頑張っていると思う。それ以上に本能が強かった。いや、頑張ってしまったのだ。
滅多にないチャンス!とばかり女性の胸を見ようとした時、一瞬、視界が歪んだ。
何と言えばいいのだろうか?
目の前が薄くなり、ぼやけて…動画の逆再生?みたいな感じで女性が動く。
そして直ぐに元通り?いや、女性が…少し下がったのかな?起きた時に見た時の状態に戻った。
もしかして「この男、エロい目でしか私を見てないのでは?」と思われたか!?
やはり胸を見るのはダメ…だよなぁ。
そんな俺の落ち込みに反して彼女は再び俺に手を差し出してきた。
「私と共に戦ってはくれないだろうか?」
同じことを二回?大事な事だから?それともこの女性、クールな美人に見えて実は天然?
再び俺は手を握る。
先ほどと変わらぬ柔らかさと温もり。
だが、またもや視界が歪み、今度は一瞬で女性が少し下がった…いや、俺がこの女性を認識した最初の位置にいた。
そして三度目、その女性は同じ言葉を言う。
「私と共に戦ってはくれないだろうか?」
普通ならここで手を握るのは躊躇われるはずなのだが…また、あの感触を味わいたい俺は考えもせず手を握る。すると、握った手が輝いているように見えたのは…気のせいだろうか?
「ありがとう。お前の決断に感謝する」
天国はここにあったのだ。
その女性は俺の後頭部にそっと手を回し俺を抱き寄せた。
なんて温かくて柔らかい。
不純な気持ちが強かったが、その中に、安心感すら芽生えるほどの包容である。
しばらくして彼女は俺から離れた。
離れた。
離れてしまった…。
「私の名は…オーチェ。この地上を作った神の従者の一人」
うん、夢だ。これは間違いなく夢だ。
神の使いが俺の元に来るなんて有り得ない。
過去に何回も「神様、お願いします!」と祈ったが、神の使いどころか、何の天啓もなく時間だけが過ぎたことしかない。
だったら…やりたい事やった方がいいのか?俺の夢なわけだし。
俺はオーチェと名乗った女性の前に立ち塞がると、呼吸を整えた。
「お、お姉様、一緒に寝ませんか?」
身も蓋もないバカなセリフ。
夢なんだからもっと格好良く…いや、何でもいい。
夢の中だとしても、卒業式が行われるのなら!
そんな俺をオーチェと名乗った女性は微笑を浮かべ見ている。
これは…まさかの…OK!?
「お兄ちゃん!遅刻するよー!」
下からとは思えないくらい大きな声が俺の耳に届く。
俺の部屋は家の二階なのだが、声は障害物が無いかのように俺の部屋まで届いていた。
夢まで声を届かせて邪魔するなよ、間子。お兄ちゃんはこれから卒業式なんだ!大人になれるんだ!
妹の声に気を取られていると女性はスッと俺の耳元に顔を近づけて、あの色気たっぷりの唇で吐息混じり…いや、吐息なのは妄想かもしれないが、ゆっくりと話しかけてきた。
「どうやら今は忙しいようだな。いずれまた会おう」
俺は初めて知った。
人は嬉しすぎると思考が停止し、何も考えられなくなる、と。
停止した思考のまま、いつの間にか頭の中が真っ白になり…意識が遠くなっていった。
次に目が覚めたのは先程とはまるで違う騒音…いや、俺を呼ぶ声であった。
「お兄ちゃん!いい加減にしてよ!私はお兄ちゃんの親でも彼女でもないの!これ以上起きないなら股間蹴って永眠させるよ!」
防衛本能発動。股間を両手でブロックする態勢を取る。
そんなことされては…オーチェとの卒業式が…。
急いで体を起こす。部屋を見渡すが、夢に出てきたオーチェの姿はどこにもなかった。
代わりにいるのは、不機嫌そうな顔でこちらを見ている学生服を着た少女であった。
正しいのだが本人に「不機嫌な少女」と言えば間違いなく殺されるだろう。
子供扱いされるのが大嫌いな我が妹。時光間子が俺に向かって容赦なく女の子と思えない…そう、野獣のごとき暴れっぷりで俺を蹂躙するだろう。
情けないが、俺は何をやっても平均以下のダメ高校生、時光空。
妹にすら腕相撲に負ける。
学校の成績は下から見た方が早い。
好きな事は寝る事とゲームとアニメ鑑賞。
でもゲームも上手くは無いし、アニメの知識も浅いダメ人間。
唯一誇れるのは身長が175cmということくらい…か。
妹は十六歳、俺は十七歳。
一年の年齢差は大したことないにしろ、男女の差はあるはずなのに…妹はスポーツが好きなせいか、体を鍛え、しっかりと筋力を上げ、兄である俺を負かす力を得たのである。
勉強においても平均的な成績であり、努力家なところは兄として感心する。俺には無い才能…コイツだけ親が違うのでは?
いや、俺が違う親から生まれたのか?
それにしても…さっきのお姉様に比べたら…実にあらゆる所が貧相。
しかも可愛げがない。
何より兄を敬わない。まあ、敬われることは特にしてない…というか実際無いのだが。
「何?まだ起きないの?永眠したいなら…永眠させたげるよ!」
恥も外聞もない間子は足を振り上げスカートの中のパンツが見えるのも気にせず俺を攻撃してきた!
「よせ、バカ!」
身をよじり間子の蹴りを何とか避け、ベッドの端に立ち上がり臨戦態勢を取ることに成功した。
「やればできるじゃない。…それにしても、それ、私に対して変な気起きたんじゃないでしょうね…」
言ってる意味が直ぐに分からなかったが、ブロックしていた両手が股間から離れていた事により、今朝の夢のお陰で…元気になっていた…。
「違う!これはきっと夢で!」
「そんな変なもん見せるな!早く起きなさいよ!おかぁ〜さぁ〜ん!お兄ちゃんが私を変な目で見てくる〜!」
とんでもないことを叫びながら妹は階段を駆け降りて行った。
…最悪だ。
このままだと俺は家庭内でシスコン変態兄貴になってしまう!
慌てて学生服に着替えて、階段を駆け降りたのであった。
「よ、冴えない顔してんな」
陽気な声が俺に飛んできた。
「焦馬、お前本当に毎日元気だよな…」
家を出て、しばらく歩くといつものパターン。幼なじみであり、親友の火野焦馬が話しかけてきた。
焦馬は隣のクラスで近所に住んでいる幼なじみ。一言で言えばスポーツ男子。角刈りに日に焼けた肌、パッチリとした目に濃ゆい眉毛。身長こそ俺より少し低いが筋肉質の体。その体は部活ではなく、趣味のフリークライミングで作り上げたもので、一度見せてもらったが、まるでヤモリのようであった。
更に勉強ができる。
学校で上から二十位以内の成績を持つ男である。
ここまでまるで共通点の無い俺となぜ親友なのか?
答えはシンプル。
それ以外は案外同じことが好きなので話が合うのだ。
ゲームだったり、動画だったり、マンガだったり…共通の作品や見る動画がかなり似ているのだ。ここまで話が合うのはコイツ以外現れていない。
まさに心の友と言える。
俺は焦馬に今朝の夢を含めた出来事を話した。
当然のように笑われた。
「大変だなぁお前も。でも間子ちゃん可愛いから羨ましいよ。下の兄弟いないからそういうのは憧れるなぁ」
「付き合いたいなら好きにしていいけど…あれはやめといた方がいいぞ」
そんな会話をしていると高校の門をいつの間にか通過していた。焦馬といると時間が経つのが早い…ってことだよな?
「あれ?何か今日早く着いた気がするな。そんなに話に夢中になってたっけ?」
どうやら焦馬も同じだったようだ。
焦馬のお陰で朝の鬱屈した気分は解消された。やはり持つべきは良き親友である。
教室に入るといきなり見慣れた顔の女の子に「ちょといい?」と腕を引っ張られて人通りの少ない階段へへと連れてこられた。
この女の子とは決してこの後ドキドキの展開が待っていないのは俺が一番知っている。
俺の手を引いて…いや、強制連行している女の子の名は波野香織。俺と同じクラスであり、こいつも火野同様に幼なじみ。
近所に住んでおり、焦馬と香織と俺は幼い頃からいつも遊んでおり、香織の好みの男性も知っている。俺には全く当てはまらないタイプである。
見た目は控えめに言って可愛いと思う。キリっとした猫のような目にシュッとした顎、細身で170cmある長身に少し明るい長い茶色の髪を後ろで一つにくくっている。
そんな素晴らしい点が霞んで消えるほどの性格の持ち主で、一言で言えば「最強の武闘派女王様」である。
そんな波野に人気のない階段に連れてこられるなんて決していいことがあるわけない。
「空、放課後、焦馬を私の家の近くの公園に連れてきてよ」
でた、俺や焦馬の都合を考えない命令。普通の女子なら「今日の放課後、時間、ある?」なんて切り出しだろうが、香織には関係ない。
女王様の命令は従者の都合より優先する、だな。
ただ、本人に悪気はない。
両親が空手教室の講師であり、両親とも学生時代に大会優勝を何度もしたことある強者であり、幼い頃から家で空手を仕込まれ、親から「弱気になるな!弱気になればそこに付け込まれやられるぞ!」と強気の英才教育を受けている結果なのだ。
「どうして急に?」
一応聞いてみる。
ちなみに焦馬も香織の好みではない。香織の好みは自分より強く賢い頼りがいのある男性、らしい。その存在を見つけるとしたら、もはやツチノコ探しに匹敵すると思う。
「雫知ってるでしょ?雫が焦馬のこと好きらしくて。アイツ、彼女いないから告白だけでもしてみたら?と言ってあげたの。だから、言った手前、その準備は私がすべきだなと思って」
さすが香織。きっと雫がそうしてくれと言ったのではないだろうが、行動力と責任感のある香織は思い立ったら即行動なのだ。
ちなみに雫とは香織の友達で、焦馬と同じ隣のクラスにいる水野雫である。
雫は香織と対照的に物静かで温厚な性格で…と言えば聞こえがいいのだが、何となく流されて自分の意見が言えないタイプの内向的な女の子である。
黒髪ロングヘアーにメガネをかけた地味を体現した小柄な女の子で、いつも潤んだような大きな目は、か弱き小動物のようである。
その地味でか弱い外見に違わず読書好きの趣味を持ち、一人でいる時に本を読む姿を何度か見たことがある。しかし運動神経は良いのが見た目に反していたりする。
香織と歩くと少し幼さがある顔も手伝って下手すれば小学生に見えてしまうんだよな。
「や、休み時間に焦馬に聞いとくよ。でも、どうして直接言わないんだ?」
俺の質問にちょっと困った顔になる香織。何かあったんだろうか?
「私は雫を説得しなきゃならないし、焦馬、私からこういう話されたら、また逃げそうだし…だから頼んだわ!」
力強く俺の肩を二度叩くと香織はニッと笑みを向け、教室に帰って行った。
香織の言うことは分からなくもない。
中学生の時、同じようなことがあった。その時、焦馬は「無理無理!そういうのやったことないから無理!」と香織の言葉を全て聞かずに逃げたのだ。
実に羨ましい。俺にそんな話一度も無いのに…。
「今日も面倒な授業を受けなきゃならないのに、香織の面倒事も増えるとはなぁ…」
俺は重くなった足を無理やり動かし、教室に戻るのであった。
昼休みになると焦馬は俺とよく飯を食う。今日も来たので食事の前に香織の話を切り出した。
やはり反応は以前に似たもので「そ、そんなこと言われても…」と、たじろぐ焦馬。
だが、俺も香織に殺されたくないので必死に説得を試みる。
「会うだけあったらどうだ?水野は可愛いとは思うけどな。まあ、お前の好みの年下ではないけどさ」
少しふざけたつもりではあったが、焦馬は真剣に悩んでいた。
焦馬って根は真面目なんだよな。
香織は知らないが、中学生の時、焦馬はプレッシャーゆえに逃げたのではない。
その時は「自分なんかよりいいヤツいるって」と逃げることで自分の情けなさをあえて出して相手を幻滅させたのだ。
褒めれるやり方ではない。
でも、その時、焦馬に告白しようとしていた女の子の事を好きなヤツがいたのだ。
それを焦馬は知っていた。
自分はその女の子の事を何とも思ってない。
でも、その女の子のことを好きと思ってくれている男がいる。
そんな気持ちで告白を受けちゃうってのは、その女の子の事を好きなヤツに申し訳ないという気持ちがずっと残りそうで、その女の子にも申し訳ない、と考え逃げたのであった。
結果、焦馬は翌日香織の鉄拳を喰らい、天使がお迎えに来たとか来ないとか…。
まあ、恋愛って難しいよな。…経験値無しの俺が言えたことではないけど。
「今回は逃げるなんてしないよ。あの頃の俺より成長したしな。ただ、週末…金曜日まで…後三日待ってもらおうかな。俺も言い方考えたり、気持ちの整理したいし。ま、水野さんがそれでいいなら、だけどね」
俺は「俺から香織に伝えておくよ」と言い、大役達成の安心感で腹が減っているのに今更ながら気が付いた。
きっとそのせいだろう。いつもより弁当を食べる時間が短かった…ように感じた。
短く感じたにしては…早すぎる気がするんだが…。
もしかして…俺の時間感覚が狂ってきているのか?
とうとう香織のプレッシャーで俺の感覚も狂ってきたのかねぇ…。
まあ、考え過ぎか。
やっと学校という牢獄から解放された放課後。
夢とは思いつつ、僅かな希望を持ちながら俺の部屋に向かう。
慌てず、平静を装いながら、ウキウキしながら焦馬と家路を進む。
だが、そこにスッと気配もなく焦馬の肩に手をまわしてくる者がいた。
「しょ~ま、どうしてすぐに会ってあげないのかなぁ?」
誰が聞いても分かるような圧を感じさせる香織の声を耳元で聞かされている焦馬。
可愛い女の子が耳の近くで話しかけてくれたなら天国だろうが、焦馬は今、地獄で鬼に尋問されている気分ではなかろうか?
「い、いや、俺にも心の準備というものが…」
「それは三日も必要なのぉ?会って話す『だけ』なのに?」
すまん、焦馬。そんな小動物が肉食獣を目の前にしたような恐怖を醸し出している目を俺に向けられても助けることはできない。俺も同じ小動物なんだ…。
「まあいいわ。今回は逃げるんじゃないわよ!もし、逃げたら…」
一瞬焦馬が「ぐえっ!」と言う…と言うより声を吐き出さざるを得ないほどに肩に回された手に力が込められたようだ。
「に、逃げない逃げないって!」
もうここまで来ると恐喝なのではなかろうか?
ただ…力が込められた分、焦馬は香織に引き寄せられてるわけで…焦馬は香織の胸の感触を背中で…味わう余裕はなさそうだな。
「三日後放課後、絶対…逃がさないからね!」
そう念押しをすると、焦馬はやっと恐怖を与えていた香織の腕から解放された。
焦馬、モテる男は命がけになりそうだな。
「にしても…こうして三人で帰るのは久しぶりよね。あんた達は毎日一緒に帰っているみたいだけど…もしかして、私が女らしくなったから意識してるとか?」
イタズラっぽい笑みを浮かべて俺たちを見る香織。
まあ、大人しくしていれば見た目は悪くないし、胸もいい感じに発達しているので意識しないわけでもない。
ただ、決して手を出してはいけないと俺の本能が告げている。ここに万が一手を出せば、絶対王政という現代日本で体験できない世界を一生体験することになるだろう。
「はいはい、香織様は可愛いですから、俺らのような下々の者には高嶺の花でございますので」
あしらう焦馬だったが、香織はバンバン肩を叩き喜んでいる。
「そんな高嶺の花ってほどじゃないでしょ。こうして普通に話しできてるじゃん」
上の者が気さくに話しかけてきても、それを真に受けてはならない。
そんな知識をどこかで見た気がする。
もし、真に受けてそのまま返せば、権力の刃でめった刺しにされてしまう…と。
これを「そうそう、高嶺の花じゃないよね」と返そうものなら、俺は十七歳という短い人生に幕を下ろすことになるのは確実。
成長した俺は言葉の選択を間違ったりはしない。
「そうそう、庶民にも気さくに話して下さる香織様は優しいからね〜」
「ちょっと!それじゃあ、私は女王様みたいじゃない!私はそんなに高圧的でも権威を振りかざしてもないけど!」
香織の返答にきっと焦馬も心の中で「嘘だろ!?」と叫んだに違いない。顔が驚きの表情のまま固まっている。
あえて心の中で言うよ。お前は間違いなく女王様だよ、香織。
そう、こうやって今日は朝の夢以外はいつも通りに今までと同じような一日を送れた。
これが最後の日常生活と気が付くのは俺が家に帰った時となる。
今の俺は朝オーチェと握った手の感触を思い出しながらニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべていた。
この時、俺の右手がほのかな光を放っていたのを誰かが気が付けば…俺の未来は大きく変わっていたかもしれない。




