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第六回

 ゲームにログインすると、システムからの手紙が届いていた。昨日奪われたお金の補償があり、さらに修正がされていて、馬車に乗ると街の中心の広場に到着するようになったらしい。聞くところによると、街の中では馬車が禁止されているため、人力のかごが用意され、広場まで運んでくれるんだとか。同様に、馬車に乗りたい場合も、城門まで歩く必要はなく、広場でかご屋と話すだけで済むらしい。


 これは僕にとってとても便利だ!他の属性の内功心法を学ばなきゃいけないから、馬車で行くのが一番早い。今お金も戻ってきたし、使わない理由はない。さあ、行こう!


 僕は最初から五仙教ごせんきょうに入っているから、修練できるのは魔教系の内功だけだ。近くにあるのは百花谷ひゃっかこくで、そこは土属性。五仙教ごせんきょうの木属性とは相克の関係にあるけど、同時に装備しなければ問題なく学べる。


 馬車に乗り、すぐに百花谷ひゃっかこくに到着した。ここは本当に山谷の中で、様々な花が咲き乱れている。季節外れの花もあり、いつも満開の状態だ。


 山谷の入口で降りると、すぐに百花谷ひゃっかこくの女性弟子に止められた。


「申し訳ありませんが、外部の者は入れません…あ、五仙教ごせんきょうの方ですね。薬草を取りに来たんでしょう。」


 説明通り、通してもらえた。しかし、女性弟子は嫌そうな顔をしてこう言った。


「同じ魔門だから通すけど、活動は指定された範囲内にしてくださいね。臭い男がうろつかないで。」


「でも先輩、この人、女の子ですよ?」もう一人の門番がそう言った。


 え?


「えええっ!」


 僕と最初の弟子は同じ反応をして、驚いて彼女を見つめた。いや、僕の方がもっとびっくりしていた。


「でも…この人、男の服着てますよ?」

「でも、男性特有の匂いがしないわね。」

「試してみる?」弟子が僕をある場所に連れて行った。

「警報が鳴らない…」

「やっぱり女の子ね!」


 なんでこうなるの?


「でも、女の子なら最初から言えばいいのに!」

「だって、先輩が最初から怖すぎて、ビビっちゃったんじゃないですか?」

「それ、私のせい? まあいいわ。お詫びにこれをあげるわ。」


 そう言って、僕は装備【百花谷入門弟子服】をもらった。


「着てみなさい。門派内で動きやすくなるわよ。」


 彼女は有無を言わせぬ態度で僕を睨んでいた。着替えないとここを出られそうにない。幸い、女装といってもズボンだし、上着も男装とそんなに違わない。ただ、ウエストが絞られていて、上着の外套のせいで体のラインが強調される……僕は男なんだから、体のラインなんて気にしなくていいのに――!はあ、早く習得してさっさとここを出よう。


 百花谷ひゃっかこくに入ると、可愛い女の子のプレイヤーが目に入った。青いショートヘアで、僕と同じ服を着ている。女プレイヤーだろうか?あ、手を振ってくれた、可愛いな。…こ、こっちも手を振り返さなきゃ。でも、僕が手を振る前に彼女は消えてしまい、僕だけがその場で瞬きをしていた。


 百花谷ひゃっかこくの谷主を見つけ、百花心法ひゃっかしんほうを習得した。土属性なので、今は使えない。


「武功はいらないの?心法しんほうだけじゃ意味がないわよ。」


 僕は首を横に振った。システムってすごい、首を振るだけでちゃんと答えたことになるんだ。


「針を使うの?うちにも針の武功があるわよ。」

「本当ですか?」

「ええ、針を投げない武功よ。刺繍針を無駄にしないで済むわ。」

「無駄を減らせるんですか?」

「そうよそうよ。刺繍針はそんなに高くないけど、塵も積もれば山となるって言うでしょ?しかも、たった霊感ポイント1で習得できるのよ。お得でしょ?」

「お得……?」

「でしょ!ありがとう!」


 あれ?なんだか売り込まれた気がする……


 百花谷ひゃっかこくの武功は繍花功しゅうかこうといって、針を使って敵の弱点を突く技だ。だから、身法がとても重要で、百花谷ひゃっかこくは魔門の中でも一番軽功けいこうな門派だ。


 針で直接攻撃するなんて難しい?いや、そうでもない。武侠世界には拳や掌で攻撃する門派もたくさんある。針を使うのと拳や掌を使うのはそんなに大きな違いはない。


 そんな誘惑に負けて、僕は結局繍花功しゅうかこうを習得してしまった。山谷を出るときに気づいた。僕、今は使えないじゃん!学んでも意味がないんだ!


 営業って本当に恐ろしい。


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