第九回
どうして使い切ってしまったんだろう?計算してみよう。僕は最初、10ポイント持っていて、五仙教で武術、心法、それに軽功を習得するのに3ポイントを使い、さらに【採集】と【煉薬】に2ポイント使ったから、五仙教を出る時にはすでに5ポイントを消費していた。
その後は1ポイントで葵花神功を覚えて、続けて三つの心法、百花心法、玄陰訣、それに噬血経を習得したから……合計で9ポイント、えっと……繡花功もあった!僕、勧められるままに取っちゃったんだ!やっちまった……。僕は膝をついてその場に崩れ落ちた。
「どうしたの?」
「いや、僕が悪いんです……あ゛ーーー!」
顔を上げると、あの金髪のお嬢様が立っていて、僕はびっくりして思わず後ずさりしてしまった。
「な、何だよ!」
そんなに睨まないでくれよ!
「生まれつきなんだ」
睨んでるって?
「つり目」
「じゃあ、睨んでるわけじゃないの?」
「いや、ただ気になって」
「気になるって?」
「前は女装してたのに、今は男装してる……」
どう説明したらいいんだろう……
「男って女装できないのね」
女も男装できないっての。
「ゲームでも性別を偽装することはできないし、よっぽど女性らしくないとね」
「僕、見た目は編集してないんだけど」
「なるほど、そんなに女の子みたいな男の子って、ちょっと珍しいわね」
「そ、そんなわけないでしょ!」
僕はすぐさま否定した。妙な考えが浮かぶ前に止めなくちゃ……でも、もう遅いかも。金髪のお嬢さんはすでに興味を失っているようだった。
「ところで、時間はあるわね」
まだそのつり目のままで、何か期待しているような光が見えた。なんとなく嫌な予感がするし、それにどうして断言なの?
「僕……レベル上げもお金稼ぎもしなきゃ……」
「じゃあちょうどいいじゃない!」
金髪少女が組み組むチーム申請を送ってきた。彼女の名前は映月って言うらしい? でも僕は承認しなかった。少し待つと申請は自動でキャンセルされたけど、彼女は無表情のまま、また再度申請を送ってきた。黙っているから、僕のほうから話を切り出すしかなかった。
「な、何か用?」
声が震えていて、思った以上に怖がっているみたいだ。
「あるクエストなんだけど、女性プレイヤー二人組でしかクリアできないのよ」
「でも僕、男だよ?」
彼女は僕を静かに見つめてきて、なんだかすごい圧力を感じた。
それから彼女は取引申請を送ってきた。女装用の【丐幇女子服】がそこにあった。
「いや、女装なら僕も持ってるけど……」
彼女は取引申請を引っ込め、再びチーム申請を送ってきた。
「どうして僕なんだ?」
「君、面白いから。気に入ったわ」
な、何だって?心臓が一瞬止まるかと思った。彼女、僕が好きだって?そそそそんなこと!
いや、わかってる、そういう意味じゃないって。でも女子に(亞美以外で)「好き」なんて言われたのは初めてで、男なら誰だって嬉しいよね。
僕って単純だよな、ほんと。
また【百花谷入門弟子服】に着替えると、【武林聯盟】の受付のお姉さんも僕を女性と勘違いしてきて……。いや、僕はもう大丈夫、怒らない。
クエスト内容は変装して【青楼】(高級遊郭)に潜入し、そこに潜んでいる妖魔を探し出すこと。幸い、ゲームだからといって実際に変なことをする必要はなく、つまり「それ」をするわけじゃないらしい。でも考えてみれば、中国の昔の遊郭は必ずしも身を売るだけの場所じゃなく、技を見せたりすることもあって、特に有名な場所ではそうだったんだ。ちょっと昔の芸妓みたいな感じかな。
僕と映月が【青楼】に行くと、【老鴇】(つまり遊郭の女主人)が迎えてくれて、常連客の一人が妖魔かもしれないから確認してほしいって言ってきた。その常連は【錢莊】(銀行みたいなもの)の【掌櫃】(社長みたいな立場)だそうだ。
彼はいつも【青楼】の一番の人気者を指名するらしく、その子の名前は文君っていうらしい。僕たちの任務は、その彼女と一緒に妓女の格好をして、踊りのアシスタントをすること。
最初は文君が琴を弾いて、僕と映月が後ろで何となく踊るだけかと思ったら、文君も武術をやっている女性で、彼女が僕たちに剣舞を教えてくれたんだ。
剣舞の動きは大きくて、僕たちが着ているのは肩や背中が露出しているドレス、さらに裾にはスリットが入っていて、大きな動きをするたびに太ももがちらっと見えて、羽衣も舞い踊る感じで、まるで天女が舞い降りたみたいだった。
「いいぞいいぞ!」
【掌櫃】が叫び出し、あとは「アンコール」を言わんばかりだった。いや、「アンコール」は英語だから、この中国風のゲームで出るわけないけど……
僕も映月も剣法を習ってないから、このシーンは自動で進行するんだけど、それでも体を動かしているのは僕たちだから、息が切れて汗が出てくるし……周りに女性が五人もいるし……
ん?
視線を感じると、背中に冷たいものが走り、僕は思わず震えてしまった。その【掌櫃】が、まるで人を舐め回すような目つきで僕を下から上まで見てきて、途中で唇を舐めた……!
「いいね、息が上がったその表情、赤くなってる時もまた美しい、俺好みだ」
う、嘘だろ!
「そっちの子、おいで!」
き、決まっちゃった!!!!!!!!!!!!




