第八回
紅葉が友達に会いに行くと言って、僕たちは別れた。僕はこれからの旅を続けるんだ。
まだ行くべき門派が三つ残っていて、それは金剛宗、玄陰門、そして血刀教。金剛宗は西北の砂漠地帯にあり、玄陰門と血刀教は東の方にある。僕が今いる西南の成都から出発すると、どちらに行くにもお金と時間はほぼ同じだ。
もちろん、相剋の観点から考えると、まずは玄陰門と血刀教に行くのが良い。玄陰門は水、血刀教は火だからだ。水は木を生かし、木は火を生かす。
そうと決まれば、僕はすぐに轎子に乗り込み、玄陰門と血刀教のある杭州へ向かった。
杭州は成都、西安、開封と同じく、馬車で移動できる都市だ。ゲームの序盤で門派任務を完了すると、その門派の所在地に基づいてこれらの都市のいずれかに来ることになる。だから、この四つの都市は「初心者の町」と呼ばれている。四つの初心者の町が存在することが、このゲーム【武侠仙蹤】と他の三つのゲームとの大きな違いの一つだ。
城の外で僕は馬車に乗り換え、もう一人のプレイヤーと、数人のNPCの乗客と一緒に旅が始まった。馬車がガタガタと揺れる感じは結構リアルだが、昔の馬車みたいに衝撃が直に伝わるわけじゃなくて、上下に大きく揺さぶられたり、放り投げられたりすることはなかった。まあ、そこは好評かな。
唯一のプレイヤーは、どんな相手でも睨みつけるような目つきをした女の子で、金髪がくるくると巻かれている。僕と同じくらいの年齢に見える。あっ、僕はただ一瞬見ただけなのに、そんなに睨まなくてもいいじゃないか……。
馬車が走っている道は、実際に自分の足で歩いても移動できるルートだ。だから、景色は進んでいる場所に応じて変わっていく。ちなみに、プレイヤーは馬車を使わなくても、自分で走って次の町まで行くこともできる。でも、この四つの初心者の町は馬車で自由に行き来できるし、一度訪れた場所ならお金を払って瞬間移動もできるから、とても便利なんだ。
杭州は東南の都市で、川沿いにあり、大きな湖の近くに位置している。その美しい景色と全く対照的なのが、玄陰門もその城の中にあるということだ。
玄陰門は暗殺を専門とする門派で、依頼を受け、どんな相手であろうと暗殺するんだ。相手が善人であれ悪人であれ、関係ない。ただ難易度によって料金が変わるだけなんだ。彼らの武功は敏捷さに特化していて、剣や暗器を使う(もちろん刺繍針なんかじゃない)。正派だけでなく、魔門の中でも彼らを嫌う者は少なくない。
杭州城内の大きな湖を望む宿屋にて、
「打尖ですか、宿泊ですか?」
「宿泊です。陰間の部屋をお願いします。」
「かしこまりました、こちらへどうぞ。」
こんな風に合言葉を言えば、玄陰門に入ることができる。ちなみに「陰間」とは、中国で死んだ人が行くとされる場所だから、玄陰門は「人を陰間に送る門派」という意味になるんだ。
僕は二階の一室に案内され、扉を閉め、衣装ダンスを開けると、その中にある木の梯子を使って地底へと降りていった。
「お嬢さん、何かご用で……おっと、五仙教の方でしたか、失礼しました。」
お嬢さん?あっ、まだ女装してるんだった……やばい、なんだかこのまま戻れなくなりそうな気がする。玄陰門の心法、玄陰訣を習得した後、僕は宿屋の部屋に戻り、五仙教の男性弟子の服に着替えた。
どうりで、なんだか落ち着かなかったわけだ。理由がわかって安心した、ははは……。玄陰訣を装備して、宿屋を後にした。
中央広場の轎子のところへ向かっていると、後ろから妙な視線を感じて振り返った。そこにはあの巻き毛の金髪とつり上がった目の女プレイヤーがいた。彼女はすぐにわかった。
また睨まれた。めちゃくちゃ睨まれてるんだけど、僕、何かしたかな?馬車の中でちょっと見ただけなのに……。もしかして、僕の目を抉り取ろうとしてる……?
僕は逃げた。仕方ないよね?ね?だって、広場までずっとついてきたんだよ。彼女は距離を詰めるわけでもないけど、遠ざかることもなく、ただ僕を睨みながらついてくるんだ……すごく怖いよ。子供の頃に初めてやった有名なゾンビゲームを思い出した。ゾンビが振り向いた瞬間、僕は怖くてコントローラーを投げ捨てちゃったんだ。それをアミにずっと笑われたっけ。
僕が血刀教の本拠地に向かうために轎子に乗り込むまで、彼女は諦めなかった。はぁ……。
血刀教は五仙教と似ていて、かつて地元の少数民族の宗教だった。血刀教は荊州地方の異民族の宗教なんだ。
三国志を読んだことがある人なら沙摩柯という名前を聞いたことがあるかもしれない。彼は劉備が呉を討つ時に協力し、【夷陵の戦い】で亡くなった。沙摩柯は荊州南部の異民族の一つで、後に何度も呉や東晋などの王朝に討伐され、追放されたり捕まったりして、最終的に北方の漢人と融合していった。でも、当時の宗教と武功は残り、それが異民族同士の武術と混ざり合い、血刀教へと進化したんだ。だけど、なぜか血刀教は男性しか受け入れない。
これは説明書に書いてあることだ。僕はたくさんの武侠小説が歴史と絡んでいることを知っているから、こういう設定に驚きはしない。そして、僕は男性(強調)なので、問題なく出入りできる。
血刀教は刀を主に扱い、拳法も学べる。彼らは攻撃を通じてHPを回復できるから、タンクとして最適な選択肢だ。多分、魔門の一つだからか、選ぶプレイヤーは少ないみたいで、僕が出入りする間、他のプレイヤーには一人も会わなかった。
でも、血刀教の心法、噬血経を学んだ時、僕は重大な問題に気づいた。……僕、気力ポイントを全部使い果たしてたんだ!




