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vsヤマタノオロチ 1

 エズの洞穴の最深部にある封龍の間。

 道中はスペースが狭く動きづらさを感じることの多かった機動鎧ですら悠々と横列に並べるほどの空間が、そこには広がっていた。

 縦にも横にも長いその空間の天井に届いてしまいそうなほど、ヤマタノオロチの体長は大きかった。


 八つ頭の龍は縦にだけではなく、横にも長い。

 真ん中に胴体がついており、その胴体から扇状に八つの首が広がっている形だ。

 その表皮は青色で、隙間なくびっしりと鱗がついている。


 頭部は蛇のようになっていて、八つの頭の動きは連動していない。

 それぞれに脳みそがついているからか、独立して動いている。

 トッド達を睨んでいる者もいれば興味なさげに天井を仰いでいる者もおり、態度も様々だった。


 トッドはまず近付いて、封印の様子を探ることにする。

 使われている封龍の鎖は、なんでも今では再現が不可能なアーティファクトだという話だ。

「ううむ……今の魔法と違いすぎて、よくわからないな……」


 アキツシマ式の魔法にそこまで詳しいわけではなかったが、どうやらかなり強力な封印が施されているというのはすぐにわかった。

 本当ならハルトがいれば良かったのだが、流石にひ弱すぎる彼が洞穴に入るのはマズいため、入り口で待機してもらっている。


 トッドは自己流に分析を続けた。

 これだけ強固な封印を破れるだけの力があると仮定すると、やはりヤマタノオロチの力は相当に高いと考えた方がいいだろう。


「さて、どうするべきか……」


 身体を縛る鎖は、幸い未だ引きちぎれてはいない。

 けれどヤマタノオロチが与える負荷に耐えられなくなっているためか、その鎖は場所によって厚みにバラツキがある。

 正直な話、いつ壊れるのかヒヤヒヤするほどに摩耗している箇所もあった。


 噛みついたり地面に擦りつけたりして削れていったということなのだろう。

 ヤマタノオロチを放置できないことは、これを見れば明確。

 故にトッドは倒すための戦略を練っていくことにした。


「とりあえず削っていこうか」


 現状は鎖があるため、ヤマタノオロチに対して一方的に攻撃を仕掛けることができる。

 トッド達はなるべく鎖に負荷をかけないような形で、ヤマタノオロチに攻撃を仕掛けることにした。


 血気盛んであったり、経験が足りていない物に任せて何かあってはマズい。

 ということで今回はトッド・ライエンバッハ・トティラ・ガールーの四名でヤマタノオロチに攻撃を仕掛けていくことにした。

 トッド達が近接戦を行い、遠距離からはガールーがサジタリウスを使い援護射撃をする形だ。


「グギャアアアアオッ!?」


「硬いわけではないが……再生が速いですな」


 オニワカに乗り込んだライエンバッハの一刀が、ヤマタノオロチの表皮を裂く。

 断裂は大きく、鱗が割れて中の肉が丸見えになる。


 けれど徐々に肉がくっついていき傷が塞がり、最後には何事もなかったかのように鱗も修復されていた。

 同じ場所を再度斬り付け、別の場所も斬り付ける。

 するとわずかにだが、最初に傷をつけたところの方が治りが遅い。


「なるほど、とりあえず無限の再生能力を持ってるわけじゃないってのはありがたい情報だ」


 シラヌイに乗り込んだトッドとサザンカに乗り込んだトティラも、別の場所でヤマタノオロチに攻撃を加えていく。

 幸い図体がデカいおかげで、斬り付ける場所には事欠かない。

 鎖によってかなり動きが制限されているおかげで、トッド達はそこまで相手の反撃を気にすることなく攻撃を続けることができる。


「龍種だけど、魔法は使ってこないのかな?」

「恐らくですが、あのアーティファクトが魔法の使用を封じているのでしょう。あれを見て下さい」


 ライエンバッハに言われた通りにヤマタノオロチの頭部を見つめると、そこには身体を光らせているいくつかの蛇の首があった。


 光は一瞬強まるものの、すぐに弱まっていき消えてしまう。

 蛇達が苛立った様子でシャアッと鳴いている。

 恐らく魔法を使おうとしてできていない、ということなのだろう。


 なんにせよ反撃がないのはありがたい。

 トッド達はそのままひたすらに攻撃を繰り返していく。


 ただし連続稼働はかなり疲労感が溜まる。

 ある程度やってから、後続に攻撃作業を引き継いでもらうことにした。


 次陣はランドンとレンゲだ。ガールーには休んでもらう。

 そして第三陣には今までのやり方を見て覚えたタケルとローズに担当してもらう。

 二人だけでは少々危ないため、ガールーには援護を徹底してもらうことにした。


 それを二度三度と繰り返していく。

 戦闘というより正しく削っているといった感じだが、ヤマタノオロチは通常軍単位で攻撃にあたる、いわゆるレイドボスというやつだ。

 そんな敵をこの少人数で倒そうとするのだから、やり方は工夫する必要がある。


「グ……ギャアアアアアアオッッ!!」


 苛立ちと痛みから苦悶の声を上げるヤマタノオロチ。

 痛みに触発されてか、激しく動くようになり、鎖がミシミシと音を鳴らし始める。


 いっそのこと、ここで倒せちゃえばあとが楽なんだけど……というトッドの心の声は、残念ながら届かず。


「「「ギャアアアオッッ!!」」」


 攻撃開始から一時間も経たぬうちに、ヤマタノオロチは鎖の一部をブチブチと引きちぎり、その封印を自ら解いてしまうのだった――。

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