騎士と少女
「さて、それじゃあ次は準決勝第二試合に行きましょう。ローズ選手対ライエンバッハ選手ですね。どう見ますか、解説のハルトさん」
「そうですねぇ、これもまたさっきの準決勝と同様、機体性能だけを見ればアリアケに分があります。けれど純粋な戦闘能力だけで言えばライエンバッハ選手の方が高いですから、どちらが勝つかはやってみるまでわかりません」
壇上に上がるのは、アリアケに乗ったローズとオニワカに乗ったライエンバッハだ。
「ふむ……」
ライエンバッハは片目をつぶり、目の前の機体を見据える。
その中に入っているのは、未だ成人にも満たぬ女子だ。
ライエンバッハは近衛騎士団の団長として、王を守るための騎士として生きてきた。
騎士として生きるべき騎士道の根底には、婦女子へ奉仕すべきという考え方がある。
そのため彼も第一試合でローズと戦ったイグニス同様、戦うこと自体に少し抵抗があった。
けれどライエンバッハは騎士として生きてきたが、同時に誰よりもトッドのことを信じてもいた。
トッドが未だそれほど数の多くない機動鎧を、周囲の反対を押し切ってまで貸し与えたローズ。
その才能は昨日、直に見ることもできた。
若き才能は、なるほど見張るべきところがある。
タケルやローズといった少年少女達はこれからあと十年二十年と経った先、彼女は自分よりもはるか高みへと上ることができる可能性があるだろう。
けれどその時は、今ではない。
(まだまだ若い者には負けん……なんていうと少し年寄りくさいが。それでも血気盛んな若者にくれてやるほど、私の黒星は安くない)
ライエンバッハはヴィッツラート流の技の起点である、正眼の構えに。
対するローズは相手に向かい駆けることができるよう、前傾姿勢で試合開始の時を待った。
「それでは準決勝第二試合――開始ッ!」
猪突猛進のローズにしては珍しく、彼女は試合が始まってからも、すぐに攻めようとはしなかった。
(ライエンバッハさん、実際に戦うのはほとんど初めてだけど――これほどとは。なんて人なの……まったく隙が、見当たらない)
年齢も四十を超え、肉体的な盛りは超えているはずだ。
けれどその分だけその剣技や所作は円熟味を増しており、驚くべきほどに隙がない。
どこからどう攻め立てても攻撃は防がれ、返す刀でカウンターを見舞われる。
その光景が容易に想像できてしまうが故に、ローズは前に進むことをためらった。
危険が目の前にあるにもかかわらず何も考えずに前に進んでは、自ら罠にかかりに行く獣と変わらない。
彼女は本能に従って動きはするが、決して獣ではなかった。
「……」
ライエンバッハは正眼の構えを崩さず、驚嘆すべき精密さでオニワカを乗りこなしていた。 一歩踏み出し、ローズの反応を見る。
それでも何もないとわかると、更に足を前に出す。
じりじり、じりじりと進んでいくライエンバッハ。
それに合わせる形で、ローズが後退していく。
更に下がろうとしたところで――足下に違和感。
見ればローズは既に、ステージの端に追い詰められていた。
これ以上の後退しては、場外になり負けてしまう。
けれど考えもなしに前に出れば、カウンターを食らうことは必至。
(――それならっ!)
ローズは思い切り……前に出た。
そして――横へ飛び、再度前へ。それを繰り返しジグザグの機動で近寄り――。
「はあああああっっ!!」
飛びかかり、大剣を振り下ろす。
その一撃を――どっしりと構えていたライエンバッハは、受け止める。
「勘もいい。思い切りの良さもある。だが……まだまだ」
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