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第二回戦


「さぁ、それでは気になる二回戦の方に進みたいと思います」

「今回は予算と人員の都合上、これが事実上の準決勝になります。次はもっと沢山の機動鎧が戦う様を見たいですねぇ……まあそうなっても結果はあまり変わらなのは否めませんが」


 今日も好き放題言っているハルトだが、彼の言葉にもある程度耐性がついてきたのか、機能のようなブーイングは起きなかった。

 もっとも、それでも嫌そうな顔をしている団員は何人かいたが。

 更に言うのなら、そこには昨日ローズに負けたイグニスの姿もあったりしたが。

 まあそれはさておき。


「さて、今日の第一試合はトッド兄上対タケルですか……因縁の兄弟対決になります」

「王族同士がバチバチに戦うことが許されて何よりです。この戦いは間違いなく凄まじいものになるでしょうからね」


 トッドやタケルのような王族が出場すること、もっと言えば機動鎧に乗ること自体に反対する者もかなり多い。

 トッドが実際に山の民と戦って成果を出していなければ、恐らく父である国王リィンガルディア四世も許可を出すことはなかっただろう。

 周囲の視線はどこ吹く風なハルトは興奮気味に鼻息を荒くし始める。


「純粋な性能だけで言えば、後発型の不知火の方が上でしょう。けれどムラクモは殿下が機動鎧の開発時からずっと育ててきた愛機。手ずからチューンナップをしているせいで、既に元の機体とは似ても似つかない代物に仕上がっています。どちらが勝つのかはまったくわかりません。タケル殿下の機動鎧捌きは戦っていく度に成長していました。今はトッド殿下の方が上かもしれませんが、昨日の試合からわかる通り、タケル殿下の成長性は抜群。戦っていく最中に成長していくとなると……その牙はトッド殿下の喉元にも届きうるかもしれませ」


 怒濤の勢いでまくしたてるハルトが周囲が呆れるのも気にせずに熱弁を始める。

 そして機動鎧の内部機構や使われている魔物の素材の厳選具合について熱心に話し、話題がムラクモの製作秘話に移ったところでようやく戦いの準備が整った。


 壇上に上がるはムラクモに乗り込むトッドと、不知火に乗り込んだタケル。

 二人ともその顔には緊張の色があった。

 実は彼らがこうして真剣に手合わせをする機会はほとんどなかった。


 トッドはエルフやドワーフ達のいる大森林から山の民達が暮らすエルネシア連峰に至るまでの実に幅広い地域を股にかけて動き回り、同時に機動鎧の製作の統括責任者も兼任しながら、更には各種人材の囲い込みまで行っている。


 とてつもないハードスケジュールをこなすトッドはまずタケルが暮らす離宮の近くに来ることもほとんどないため、機動鎧周りで手すきの時間ができた時に稽古を見てやったりしたことしかない。


 タケルの方は明らかに顔色が強張っていたが、実はトッドの方もタケルに負けないくらいに緊張していた。


 タケルは作中の機動士達の中で最強に至るキャラクターである。

 母であるミヤヒが謀殺・暗殺された場合にのみ出現する覚醒タケルは、手が着けられないほどの化け物に成長する。

 もし覚醒タケルが王国を荒らすことになった場合は、如何にして彼を物量作戦で抑え込むかということが肝要になってくるという、ボスを除けば間違いなく最強であるキャラクターなのだ。


 今はミヤヒの愛情を受けてすくすくと成長しているとはいえ、それでも彼がタケルであることには変わらない。


(ひょっとすると瞬殺されるんじゃないだろうか……お兄ちゃん的にはなんとか頑張りたいところではあるけれど)


 周囲にいる比較対象があまりおらず、ここ最近はライエンバッハとくらいしかまともな戦いをしていないトッドは、自分がどの程度強いのかイマイチわかっていない。


 タケルを相手にどこまで善戦できるのかは未知数。

 勝てるかどうかという不安よりも、負けて弟達からの見る目が変わることの方が怖かった。

(まあ、やれるだけのことはやるさ。そう簡単に負けてやるつもりはないからね)


 キリリと顔を引き締め、ムラクモに乗り込むトッド。

 そして試合開始のゴングが鳴る。


「――試合、開始っ!」


 昨日の試合とは異なり、先に攻めてきたのはタケルだった。

 その攻撃を、トッドは受け止める。

 そして、こう思った。


(あれ、もしかして僕って――結構強くなってる?)

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