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旧機体の行方


 トッドがこのゲーム世界に転生してから、何より願ってやまなかった物。

 それが今、彼の目の前にあった。


「とうとう完成しましたねぇ、殿下」

「ああ……長かったような、短かったような……」


 目の前にあるのは、トッドが前世で見慣れていた機動鎧だった。

 その型も、オーガの魔物を使用した機動鎧である『鬼火』と比べると大きく違うが……それはたしかに機動鎧に間違いなかった。


 そのフォルムは、トッドが長年着ていたシラヌイを一回り大きくしたような感じだ。


 トッドの前世の知識でいうところのパワードスーツのような、ゴテゴテとした鉄の機械兵のような見た目をしている。

 無論、中に入っているのは精密動作を行うためのプロセッサやコンデンサなどではなく状態保存の為された魔物の素材である。


「一度できてしまえば、あとは原型がある物を量産すればいいだけだから微修正で済む」


 機動鎧には大きく分けて二つの型がある。

 まず一つ目はこの魔物素材型の機動鎧、そして二つ目はかつて繁栄していた国が使っていたとされる、古代の魔法技術がふんだんに用いられている機械製の機動鎧だ。


 基本的には前者である魔物を素材にしたタイプの機動鎧を量産しながら、操縦適性の高い機動士に遺跡などから発掘される後者の機動鎧を渡す形がゲームにおける常套手段だった。


「僕としては改良型の開発にさっさと進みたいんですけどねぇ」

「まだ二機しか作れてないんだ、あまり無茶を言わないでよ……気持ちはわかるけどさ」


 トッドは前世知識を使い、ある野望を企み、それをハルトと共有する立場にあった。


 その野望とは――古代の魔法技術を解析し、現代においても機械製機動鎧を量産させることだ。


 恐らくゲームの都合上、ゲームバランスが崩壊してしまうためにできない仕様になっていた、古代仕様の機動鎧の解析。

 これができるようになれば、恐らく周辺国を鎧袖一触で蹴散らすことも可能になる。

 だがそれはまだ先の話。


 今はとにかく、この機動鎧の力を試してみなければいけない。


「シラヌイとは、今日でお別れですねぇ。やっぱり感慨深いですかぁ?」

「……正直に言えばね」


 機動鎧の開発に成功したことによって、今までトッドが乗ってきた強化重装シラヌイはお役御免という形になる。


 長年乗ってきたが未だ現役のシラヌイは、成長する身体の分の余裕を持たせていたはずなのに、毎年すごい速度で背の伸びる今のトッドには少し窮屈になってしまっていた。


 同じ機動鎧を使い続けることなどできないのだから、機体を乗り換えるのは機動士としてやっていくには絶対に必要なことだ。


 けれど自分が未だ錬金王子と馬鹿にされていた頃から、なんとか試行錯誤を続けては失敗を続け。

 ハルトとレンゲを引き連れて、なんとかして機動鎧を開発するんだと倉の中で研究を続け。

 色んな人に迷惑をかけながらも強化兵装と魔道甲冑の作成に成功し、その二つの技術を掛け合わせて生まれたのが強化重装のシラヌイだった。


 山の民を討伐するのにも、エルネシア連峰を横断するのにも、アビスを倒すのにも。

 武力を使うときには、トッドの側にはずっとシラヌイがいた。


 けど恐らくはこのシラヌイも、技術競争の中で廃れていくことになる。

 修繕をしながら使ったとしても、使える期間はあと数年もあれば……。


「いや、そうか」

「どうされたんです、トッド殿下?」

「何もこいつを分解して廃棄する必要はない。肉体の延長線上として使うのは機動鎧と変わらないんだから。……シラヌイの使い道が、見えてきたぞ!」


 レンゲの質問に、トッドはにこにこと笑いながら振り返る。


「レンゲ、シラヌイと同程度の能力の強化重装をもう一機作ってもらうことはできるかな?」

「え、ええ。使われてる技術の根本は三年前のもののままですし、今ならさほど難しくはないと思いますが……」

「そうか、それならお願いするよ」


 そういってトッドは新たな機動鎧を着込む。

 機動鎧『ムラクモ』はトッドをその内へと包み込み、大きな排気音を出した。


 機動鎧の性能試験が始まることとなる。

 その結果は――それを見たハルトが狂喜乱舞していたと言えば、それ以上言う必要もないだろう。


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