提案
「ふむ……リィン王国からの使者か……」
「しかし、なかなかどうして……」
トッド達は紆余曲折を経て、大森林におけるエルフとドワーフの代表である二人の前へとやって来ることができていた。
ここに至るまで、実に三日程度の期間がかかっている。
こちらに対しやたら敵対的なエルフ達を殺してしまわぬように気をつけながらなんとか気絶させたり。
彼らからなんとかして上層部の者達に渡りをつけてもらうために苦心したり。
結構大変な道のりを経て、なんとかここまでこぎ着けることに成功したのだ。
「はるばる大森林までご足労いただいたことは誠にありがたいことだとは思う」
トッドから見て右にいるのは、ドワーフ達の代表であるゴ・ゴウガ・ゾンダールである。
ゴの子孫である偉大なるゾンダール、といったような意味らしい。
その見た目はいかにもドワーフの老人といった感じだ。
身長はトッドの胸のあたりまでしかなく、服から胸毛がこぼれだしている。
髭は真っ白で、くるんとカールしている。
全体的に毛量が多いのがドワーフの特徴で、びっくりすることに、女性の魅力は毛量の多さが一番重要らしい。
そしてその肉体は小さいながら、みっちりと筋肉が詰まっている。
ドワーフは八割以上が鍛冶仕事をするというのは本当のことらしく、来る道中に見てきたドワーフも、男女問わずみな筋骨隆々だった。
「けれど我々は、人とは交わらぬことを決めているのだ。帰りの道中は、エルフ達による案内をつけよう。一日と経たずに無事に送り返すことを約束しよう」
エルフの代表は、ドワーフよりも更に名前が長い。
アル=ドーナン=リフル=ミィ=ファグル=ミッシェル。
直訳するとアルの子孫でドーナンに居を構えていて、父の名はリフル、母の名はミィ、気高さと誇りを兼ね備えたミッシェルだ。
エルフとドワーフはこれを言うと絶対に怒るので言わないが、トッドは彼女の前の名前はまともに覚えず、ただのミッシェルとして扱っていた。
その見た目は、ドワーフのゾンダールと同様、いかにもエルフ的であった。
中性的な見た目に、鈴の音のような美声。
いったい性別がどちらかなのか、原作知識がなければ判断はつかなかっただろう。
肌はきめ細やかで、太陽の光をそのまま照り返してしまうかのような純白。
エルフ達の代表であるからには相当な高齢であるはずだが、その見た目は二十代前半にしか見えない。
長い耳が少し巻き気味に伸びていて、思わず手で掴んでしまいそうになるほどに不思議な魅力がある。
ちなみに今、ゾンダールとミッシェルと相対しているのはトッド、ライエンバッハ、トティラの三人だ。
トッドはシラヌイを身に纏い、ライエンバッハとトティラは強化兵装を身に付けており、完全に臨戦態勢である。
その様子を見て、ミッシェルなどは先ほどからピクピクと頬を引きつらせていた。
けれどトッドの方も、譲るつもりはない。
頑迷な大森林の亜人達を引き入れるためには、多少強引に行かなければならない。
そうしなければ、彼らが長いこと絡まれてきた時間という鎖を、解き放つことなどできないと彼は知っているからだ。
「それはできかねる。僕は君達のためを思って提案している。僕らが着けている武装の力は、下の者達から聞かされはしなかったかい?」
「……ああ、聞いている。君一人でドワーフ達を鎧袖一触にしたということも」
「恐ろしいほどの力だ……だがだからこそ、私達は外界と関わるべきでは……」
「ライ、トティラ――やれ」
瞬間、二人が前に出る。
ライエンバッハはゾンダールの、トティラはミッシェルの首に剣を当てる。
もういいというと、二人はすぐに剣を引いた。
急に空気が剣呑に変わったことで、ゾンダール達のトッドを見つめる雰囲気がキツくなる。
「この二人が着けている装備は、その名を強化兵装という」
「それがどうした?」
「僕らはこれの量産化にある程度の目処が立っている。恐らくそう遠くないうちに、僕らの国の兵達はこれらを標準装備することになるだろう」
「「――っ!?」」
二人が息を呑むのを確認してから、トッドは更にたたみかける。
冷静な判断力が生じぬうちに、強引に認めさせる必要があるからだ。
「更に言えば僕の着ているこのシラヌイ……これより強力な武装も、一年以内には開発を終えてある程度量産する用意がある」
「……リィンの人よ、貴殿らはそれほどの力を持って、いったい何を成すというのだ!」
「我らを武力で脅す気か? エルフの誇りにかけてそんなものには――」
「まさか!! 僕は君達に提案をしているんだよ。一緒に勝ち馬に乗らないかってね」
トッドはここで敢えて、冷静な声音で続けた。
自分達の国は軍備の増強を早々に始めることになる。
それに伴って周辺国でも軍備費の増加が始まるのは既に既定路線だ。
その中でエルフとドワーフがどのような立場を占めるかは、あなた方がどの段階で人間と関わりを持つかによって変わってくると。
トッドが知っているいくつかのルート上のエルフの行く末を、臨場感たっぷりに語る。
それを聞いておののいたのは、ゾンダール達である。
彼らはトッド達を体よく追い出すつもりだったが、なるほど話を聞いていればトッドの言葉には理がある。
このままでは自分達に残された道はどんどんと狭く、そして険しいものへと変わっていく。 そしてなんとかするためには、一刻も早くトッド達を手を組む必要がある。
けれどそれがわかっていてもなかなか動き出すことはできない。
だがそんなことは、トッドも百も承知の上だ。
だからこそ彼は、理解しながらも渋っているゾンダール達に提案した。
彼らが何に困っていて、何を欲しているのか。
知識を持つトッドには、手に取るようにわかっている。
「僕たちリィンスガヤ王国に与してくれるというのなら……友好の印に、僕らの主導で大森林に住まうアビス達の討伐を行うと約束しよう。あの異形の討伐に成功したら、その時に改めて、僕たちと手を取り合ってはくれないかな?」
【しんこからのお願い】
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが気になる!」
「応援してるよ!」
と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
あなたの応援が、しんこの更新の原動力になります!
よろしくお願いします!




