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フィジカルも技も文句なし、なのに残念な君との冒険者生活

僕はカイト君と一緒に町外れの森に来ている。

僕らは昨日活動開始したばかりの新人の冒険者だから奥へは進まないよ。


「今日はいいお天気だねー。昨日みたいにさっさと薬草採取終わらせて帰ろうね」


にこやかに笑うカイト君。いや、本来はカイト様と呼ぶべきなんだろうけど。


「そうですね」


僕は昨日みたいにはあっさり帰さないことを心の中で詫びた。


「あ、今日もうさぎ君が出てきたね。刺激しないように少し離れようか」

茂みのなかからウサギに似たウォーラビットが二匹顔を出した。

そんな風に言うけど、ウォーラビットは超初心者向けのモンスター。

彫刻のようにすばらしい筋肉を持つカイト君が逃げる必要は一切ない。

実際僕でも狩れた。毛皮が少額だが買い取ってもらえた。

時々うまい肉もドロップするらしい。


いよいよこの時が来た。

僕は気づかれないように袋から小瓶を取り出してカイト君の背中に振りかけた。


誘引のポーション(極小):使用すると短時間モンスターに襲われやすくなる を



*************************************************************************

カイト君、ことカイト・フォン・デラート様は今年15歳。

小さいころから俺の街の領主の三男坊として大事に育てられたお坊っちゃんだ。

デラート家は代々武門に秀でた家系といわれていて、もちろんカイト君も武芸に関しては文句なく一流だ。

学問も優秀で、今年の春に行われた騎士の入団試験には間違いなく合格するだろうとみんな思っていた。

だから、今年の6月に久しぶりに見かけたときは何かの用事で実家に顔出しに来ているのだろうと思ったよ。

街道わきの丘から遠くを眺めていたカイト君に声をかけたとき、、、、、

あまりに覇気のない顔に驚いたったりゃありゃしない。


「騎士の入団試験に落ちたんだ。しかも父上がとんでもなくお怒りになって家を勘当されてしまったよ」


隣に座ってよくよく話を聞いてみれば、入団試験の一次試験は文句なく通過したらしい。

カイト君、木刀を握らせたら文句なしの剣の腕。すでに騎士団小隊長を任されている8歳上のお兄さんとも互角勝負らしいし。


でも、2次試験は真剣での試合だったらしい。


あぁ~やっぱりかぁ。カイト君、まだ治ってなかったんだね。

子供の頃一緒に遊んでいた時から優しすぎたもんね。

けんかでも、相手を傷つけるような事は嫌がってたもんなぁ。


あ、俺はデラート家のおかかえ料理人の子供でお屋敷には時々出入りしてたんだ。

本来使用人の子供と一緒に遊ぶべきではないのかもしれないけど、デラート家はそういうところは割と緩くて年が近いからよく広いお庭で遊んでいたんだよ。

虫取りなんかはしてもさぁ、絶対逃がしていたもんね。


そんなことを思い出しながら打ちひしがれたカイト君を見てるとさ、思わず誘ってしまったよ。


「家に帰れないんならさ、俺と一緒に冒険者でもやってみないか?」


ちょうどその日、親からそろそろ独立しろと言われててさ、後を継いで料理人になろうかなとも思ったけど、俺、体は小さいけど普通より俊敏力がよくてさぁ、ソロだと厳しいだろうけど、誰か組んでくれる人がいたらしばらく冒険者とかやってみようかと思ってたところなのよ。

それで冒険者ギルドへ向かう途中だったしね。

カイト君はどこから見ても15歳には思えないほど立派すぎる体格、タンクでもアタッカーでも文句ない能力がある。


「ありがとう、フェル。明日からどうしていいか本当に途方に暮れていたけど・・・君と冒険者するのならちょっと楽しみになってきたよ」


涙目だったカイト君がいつものまぶしい笑顔になって俺は安心したんだよ。


昨日まではね


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