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にぃ、幸せになりたい。

手放しの幸福を享受する事の出来ない少年が、現世を思い出い、兄を慕い

そしてすべてのルートを、全てのフラグを叩き折る作品です。

定番の流れを見たい方は少し苦手かもしれません。

あと、主人公がブラコンこじらせているので、若干BLと思う程の表現が出てくる可能性がございます。ご注意ください。

チート故の理不尽にも感じる幸福を題材に書きました。

一度定番の流れをぶった切ってほしかったんです()

楽しんでいただければ幸いです。


【プロローグ】

———————

今、目の前に浮遊する女神。

その薄っぺらい笑顔を浮かべるソイツの。

ソイツの喉笛を掻っ捌いてやりたいと思った。

何だっていい。

どうだっていい。

僕にとって、兄が

お兄ちゃんが僕の全てなんだ。

だから、

もう誰も邪魔しないでくれ。





———————

ごめん。とりあえず、この物語を進める前に、僕の今までを説明しておきたい。

少し長くなるんだ。

まず。物心ついた時から家庭環境は最悪だった。

父親は全然帰ってこないし、母親は僕達に一切興味を示さない。

いわゆるネグレクトってやつ。

料理も洗濯も全くしない。

夕方には派手な化粧とむせる程の香水で出て行って、朝にはその香水の匂いがアルコールに変わっている。

そんな毎日だ。

でも、そんな中で僕が生きていけたのは

二つ年上の兄がいたから。

お兄ちゃんは、まだ六歳の頃から僕の世話をしていた。

試行錯誤して洗濯物を回して、震える手つきで料理をする。

小さい頃のイメージでは、その頃の兄は常に踏み台を持っていて、手は絆創膏でいっぱいだった。

それは全て生きる為。僕を生かす為。

今考えても偉大な兄だった。

それから僕が六年生になるまではそんな生活が続いた。

家事の手伝いも、三年生くらいには僕も覚えて、一緒にやった。

お世辞にも恵まれた境遇ではないけど、楽しかった。

幸せだった。

兄は良く僕に「凛は賢いな。きっと立派になる。」と言っていた。

でも僕にとって一番立派だったのは、目の前で頭を撫でている兄そのものだった。

僕はひたすら兄の背中を見ていた。

プロ野球選手よりも、お医者さんよりも、兄に憧れた。

僕のにぃが、世界で一番だと思っていた。

いや、今でも思ってるんだ。

ただ。神はどうやら僕たち兄弟が幸せになる事を、許さなかった。

ある日の事。

多分夏休みが開けた夕方の事だったと思う。

珍しく素面の母が上機嫌で帰って来た。

洗濯物を畳みながら一体どうしたんだろうと二人で顔を見合わせた。

すると、母は

後ろに男の人を連れてきた。


[ガッシャン!!!]

そこからは地獄も地獄。

再婚した父は僕等に暴力をふるった。

ある時は目障りだと、ある時は酒が足りないと。

そしてある時は、ただ暇だったから。と。

折角消えた兄の身体から、また絆創膏が増えた。

今度は全身に広がった。包帯となって。

兄はいつも僕を庇った。

「すぐ終わる、すぐ終わるから。」

後ろで蹴られ続けながら、諭す様に耳元でそう言う。

そんな光景を、今でも鮮明に覚えてる。

ただ、地獄はこれだけじゃ終わらない。

兄は今まで僕の世話を第一に考えてくれていた。

身だしなみも整えてくれたし、本当は心細いはずなのに、僕がサッカーに興味があるのを知って、部活に入れと勧めてくれた。

だから僕は学校では何不自由なく、楽しく過ごせた。

友達も多かったし、むしろ人気者の部類に入れていたんだと思う。

ただ

兄は違った。

兄は僕に気を回しすぎた所為で、身だしなみに気を遣う余裕もなく、身体も常に怪我ばっかりだったので、クラスでも浮いていたらしい。

だから、兄は中三の時からいじめられていた。

いや、僕が気付いただけで本当はもっと前から始まっていたのかもしてない。

とにかく、兄の世界に、居場所なんて無かった。

もう、どの打撲がどこで付いたのかも分からなかった。

何よりも、こんなに頑張っている兄が虐められて、僕なんかがのうのうと暮らしている格差が、申し訳なくて仕方なかった。

それでも、僕の前だけは気丈に振る舞う兄の、

「大丈夫だから。」と、笑って見せる姿が、どうしても見ていて苦しかった。

この時若干十三才の僕は、


初めて神というものを呪った。


ただ。今、まさにその【神】に、僕は面と向かって会っているのだ。



———————

「やっと見つけました!!!」

どこまでも白が続く空間。

その奥から風がそよぎ、どうやらCGとかでは無いらしい。

変な夢を見ているのだと思った。

「」

僕は何もしゃべらなかった。

しかしその人。いや、背中に白い翼の生えた生物は続ける。

「何万光年、何次元、何千宇宙を探し、やっと適合者に出会いました。しかも9999%...!」

今日はお兄ちゃんが夕飯はカレーだと言っていた。

高校に上がって部活もだいぶ過酷になったし、早く帰りたい。

いや、待てよ。

これは夢なんだろう?

帰るも何も、何故今僕はこんな滑稽は夢を見ているのだろう。

「夢じゃないですよ。」

咄嗟に彼女を見る。

まるで全てを見透かすような眼差しで、彼女は見下ろしていた。

ピンク色の髪はいっそ不自然な程その体に馴染んでいた。

「貴方は選ばれたんです......!!」

「......何に.....。」

思わずそう呟くと、彼女は目を輝かせて言う。

「異世界の伝説の勇者に......!!」

いや、知らない。

なんだその中学生でも思いつかない程のくだらないありきたりな台詞は.....。

それが率直な感想だった。

「結構です。」

僕の回答は早かった。

正直意味が分からなかった。

どうでも良い。

こんな茶番はよしてくれ。

本当に早く帰りたいんだ。

早く帰らないと、にぃが心配する。

「あの、ホントにもう帰って良いですか。」

今思えば少し焦っていたのかも知れない。

すごく嫌な予感がした。

「ダメですよ!!あなたは必要なんです!!!」

彼女はそう言って何か呪文らしき言葉を呟く。

すると地面に謎の魔方陣の様なものが描かれ、発光した。

「貴方には私の世界を救っていただきます!!!」

「ちょっ」

その光は段々と光度を増してゆく。

嫌な予感はピークに達した。

「大丈夫です!!あなたもきっと幸せになれますよ!!」

やめろ

「おい....!!!」

誰もそんな事望んでない。

やめてくれ

「おいって......!!!!」

にぃ、にぃ.....!

嫌だ、にぃと離れ離れになるなんて......!!!!!

絶対に嫌だ!!!

なんでどいつもこいつも俺達の邪魔をするんだ!!!!!!!!!

「にぃ!!!!!!!!!!!!!!」

殺す。

絶対に殺してやる。

その憎いピンクの髪に手を伸ばしたが

その抵抗も儚く、

俺は、永遠にもならない眠りに、ついてしまった。


まだプロローグで、しかもゴリゴリに回想ばっかですね。

次からは、結構異世界色出していきます。

頑張ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 表現が上手い。一番初めに感じたのは、それでした。分かりやすく、想像しやすい。まだたった第一部分しかないのが惜しい!真面目に、そう思いました。主人公の不幸っぷりもさることながら、あのお兄さん…
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