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第十七話


「ちょ、ちょっと! お父さん! どういう事よー!」


「これは詳しい説明が必要。」


 娘たちから責めるような目で詰められるが、生憎こちらもよく理解できていない。

 それこそ帰ったら勇者がいた、としか言いようが無いんだが。


 それでは納得ができなかったか、しばらくギャーギャー騒いでいた二人だが、しばらくすると突然ピタリと止まった。視線の先を追って振り返ってみれば見覚えのある3人が。


「まだ家の前でなにしてんの……って、そっちが噂の娘さん? なるほど、ヤンが親バカになったってのも頷ける可愛さだ。

 はじめまして。俺はアイズ。ちょっと前まで勇者だった者だ。よろしく!」


「……おい、アイズ。気安すぎだ。まだ初対面だろうが。

 まあ、なんだ。俺たちはお父さんの古い知り合いのおじさんたちとでも思ってもらえればいいから……。」


「い、いえ! しょんなことにゃいです! ゆ、勇者しゃまたちが来てくれるなんて、感激です!」


「まあ、もう元勇者だけどねー。逃げて来ちゃったし。」


「さり気なく言ってるが、何があったかはちゃんと説明してもらうからな……。

 まあ、入れよ。話はそれからだ。」


 このままだと延々話し続けていそうなのを、強制的にぶった切る。フェマもディアも帰ってくるまでで疲れているだろうし、アイズたちの体調も万全ではなさそうだ。

 促すように扉をあけて、中に入る。数週間ぶりの我が家は、予想もしていなかった客を迎えて、なんだか真新しい感じがした。


「たっだいまー!」


「それじゃ、俺も。お邪魔しまーす、と。」


「……すまんな、ヤン。邪魔をする。」


 そんな風に、続々と扉をくぐる中。ひとりだけ躊躇するかのように足を踏み出せていない奴が。


「どうした? ウィル。」


「私を……許してくれるのですか?」


 過去を思い返すように目を瞑り、立ち止まって首を振るウィル。


「許されるって、なんの話だよ?」


「あなたが出て行く要因、直接はアイズの言葉でしたけれど。君の居場所を否定するような言葉を吐いたのは私です。私は自分が許せません。ああして、傷つけるような方法しかとれなかった自分自身が。」


 私はあなたに許される存在なのですか?

 そう、問いかけてくる。だが、それに対する俺の答えは一つだ。


「言っとくがな、許す許されるなんて俺らの関係で大したことねーよ。」


「……どういうことです?」


「そんなん全部ひっくるめて仲間ってことだろーが。アイズのセリフだって別に許したわけじゃねーし、というかまだ腹は立ってるし。」


「なら、どうして私たちを受け入れるのです?」


「だから言っただろ。許せないこともある。だけど、そんなん関係なく受け入れるのが仲間ってもんだ。」


 まあ、そう割り切るのにずいぶん時間がかかっちまったが。


「実際、会うまでは俺も不安だったがな。会ってしまえばそんなんどうでもよかったって気づけたよ。

 ほら、来いよ。昔みたいに話そうぜ。」


 許すか許さねーかは別問題だがな、と笑う


「そう、ですか。ではお邪魔させてもらいます。」


 そう言って、吹っ切れたような顔で此方へと歩むウィル。

 そういう、めんどくさいくせに一度割り切ったら一直線なところは昔と変わってないらしい。

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