第十六話 門前の語らい
なんとかギリギリ間に合った……
家の前で待っていたのは、かつての仲間。
二十年という年月を経ても、大した事ではないと言うかのように至極あっさりと再会はなった。
「おま……お前なぁ……!」
こっちとしては行方不明になったという話を聞いて、心配してたというのに。ただ俺に会いたいからなんて理由で行方を眩ませただけとか……。
少し、相変わらずだなんて思ってしまうのは、案外俺もこいつに毒されてるってことだろうか。
こう、言いたいことは沢山あるのに、言葉にできない。
「色々言いたいこと、語り合いたいことはあるんだけどさ。ここで立ち話もなんだから、中に入らない?」
「そりゃ俺が言うセリフだっての! さも自分の家みたいに言ってんじゃねえよ!」
まったくこいつは!
前からちっとも変わってない!
ため息を一つついて、家の鍵を開ける。
「ほら、旅から帰ってきたばっかりで大層なもてなしはできんが、茶の一杯くらいは出してやる。さっさと中に入れ。」
そう言うと、アイズは顔を輝かせる。
「おっ!? いいのか?」
「なんだ。お前から言い出したことだろ?」
「いや、てっきり門前払いされる可能性も考えてたからよ。なんも言わずに迎え入れてくれるのかー、みたいな?」
確かに、二十年前だったらそこまで素直には受け入れなかっただろうが。怒りにまかせて追っ払ってた可能性もある。
「そりゃ結構時間も経ったしな。あんな前の事なんて時効だ、時効。気にしちゃないさ。」
本音を言えば、全く気にしてなかった訳でもない。今回の旅も、決着をつけるために行った部分もある。
だがなんでかな。実際に会ってしまえば、そんな事もうどうでもいいやって思える。
こうして再び話せることが本当に嬉しい。
「おう、そうか……。ならバズとウィルも呼んできていいか?」
「なんだ、あいつ等も来てたのか。じゃあ、なんでお前しかここにはいないんだ?」
「いや、そりゃ、全員お前に気を使ってだな。
ウィルなんて結構酷いこと言って追い出した自覚は有るから、顔あわせ辛いって……。呼んできても、いい感じ?」
「良いよ。そのことも含めて話しがしたいしな。」
「そっか……。じゃ、呼んでくる!」
そう言うと、アイズはぴょんぴょん跳ねながら裏の森へと向かって行った。
おそらくだが、そこにテントでも張っているのだろう。
なら、そう時間もかからずに戻ってくるだろうし、中でお茶の準備でもするか……。
「お父さーん! なんでそんな急いでるのよー!」
「お姉ちゃん、ちゃんと前見て……!」
娘二人も追いついて来て、どう説明したものかと少し悩む。
ポニ太に乗って目の前に止まる二人。表情は怒り半分、不思議半分といったところ。
「何があったのか、ちゃんと説明してよね!」
「説明求む……!」
少し迷ったがここは正直に答えておくことにする。どうせ俺が隠したところでアイズあたりが勝手にバラすしな。
「勇者だよ、勇者。あいつ等がなんか知らんがここにやってきたんだ。」
「「え……。」」
一拍。
なにを言ってるのか、理解に数秒かかったのか、一瞬の間をあけて大声で叫ぶ。
「「ええーーっ!?」」