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旅に出てしばらく経つが、魔王城はまだ遠い。
国に来てすぐ旅立つことになり、故郷に連絡もできていないが両親は元気にしているだろうか?
そんなことを思いながら馬車の屋根で寝そべっていると、雲がうねって姿を変えた。
『元気にしてるよー』
そうか、それは何よりだ。
俺は雲に向かって笑うと、『がんばれよー』と形を変えた。
父ちゃん、母ちゃん。俺、少しはでっかくなれたかな?
「ちょっと待ってくださいませ! こんな遠く離れた場所に魔法を届かせるなんて、貴方の両親何者なんですの⁉ そんなの私でもできませんわよ⁉」
言われるまでもなく、どこにでもいる普通の魔導士だ。
「ふ、普通とは一体……?」
俺は頭を抱えているお嬢様は放っておいて、添い寝している獣人少女の頭を撫でた。