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それでも哀

作者: 小田上総

この物語はフィクションです。実際の人物、団体とは関係ありません。

ただただ、書き連ねた形なので、いずれ削除するかもしれません。自分はこんなにも思っているのにという気持ちをぶつける、男性視点の小説です。この時点で苦手な方はブラウザバックをお願いいたします。とりあえず読んでみて、こんなこともあるよねと思っていただけたら幸いです。


「お前おかしいよ」

友人に言われた

「何をいまさら」

僕は笑った。


 果たしてこれは恋なのか、愛なのか。妄信、執着、妄執、懺悔、憐憫、何が該当するのかは知らない。

興味もない。僕がただ望むことは、僕がしたいことはただ一つ。


たった一人の人間のそばにいて、その人を笑顔にしたい


ただそれだけだ。

「ただそれだけ」といっても、それのなんと為しがたいことか。


出会いは高校、クラスメートになったこともなく、友人伝いで知り合いになった。

それまではお互いに存在を知る程度。

「名前は知っている、伊藤君でしょ?」

「いや井島いしまだな」

「あれ?」

まさか名前を間違って覚えられているとはその時まで知る由もなかった。

本当の名前を知ってからも相手は僕のことを間違えた名前で呼ぶ。

そこまで呼び名にこだわりもないので、そのままにしておくことにした。


休み時間に会えば話をする。共通の趣味があったから、会話に困ることはなかった。

当時彼女は僕の友人と付き合っていて、僕にも校外に彼女がいた。

お互いに良い友人、それだけだった


そう、彼女と僕は友人だったのだ

それが、いつから変わってしまったのか。


友人として高校を卒業後もたまに遊んだりしていたからか

ある日、泣きながら彼女から電話が入った

「どうしようもない、ほかの選択肢があっても選ぶことができなかった

 私は、その選択肢を選びたくなかった。後悔するのがばかげていることも分かっている

 理解に心がついていかない。正しい選択がないと分かっているけど、その選択をしたことを

 悲しんでいる どうしようもないことで電話してごめん ごめん ごめんね」

状況は分からないが、普段笑っている彼女がこの世が終わるかのような声を出して

僕にただただ、語り掛けた。相槌を打ちながら、彼女の涙ながらの声に胸が痛むのが分かった。


始まりはその時かもしれない


その電話から暫くして、久しぶりにあった彼女は 

酷くやつれ、笑いはするのに、不安定で、割れる寸前の風船のようだった。

彼女は僕の前で、寂しそうに笑った。


それから、彼女はポツリ、ポツリと僕の弱音をこぼすようになった。

家族のこと、自分のこと 学校のこと

ただ僕は耳を傾け、ただただ自分に非を求める彼女にそっと


何気ないプレゼントで彼女が笑った。それまでの寂しそうな顔ではなく

周りに色がついたような気がした。


笑っていてほしい、笑わせたい、誰よりも自分の傍で


それからはひたすらに、彼女が笑ってくれたらと

一緒にいて楽しいと感じる時間を探した


不慣れなことに挑戦して必死に頑張る彼女を応援した

山へ、海へ、夜の星を見に、一面の花を見に 彼女とともに出かけた

そこには決して男女としての接触などなく ただ彼女が笑う姿を目に納めた。


僕は、彼女にとってなくてはならないものになっていると思っていた


そうではなかった


「好きな人がいるの、だからもう一緒にいられない」


彼女と僕の間にあったのはどこまでも親愛であったらしい

誰よりも傍にいて、彼女のいいところもダメなところも知っている自信がある

甘いものが好きで、花が好きで、犬が苦手なくせに触ろうとする

本が好きで、夏の夕暮れが好きで、冬の空の星が好きで


僕のことは好きではない彼女


嫌われているわけではない そこにそれ以上の気持ちが生まれなかっただけ


ただそれだけ 理解はできる でも、納得はできない

僕はこんなに彼女が好きなのに こんなにも こんなにも


彼女に会えない日々は僕から心を奪っていったようだ

日に日に、心が枯れていくのがわかる

心とともに体が枯れていくのがわかる


彼女がいない 楽しそうに笑っても 彼女が選ぶのは僕ではない


いっそ消えてしまいたい

彼女を好きな僕のまま、このまま消えてしまえたら


何とか自分の心と折り合いをつけようと

頑張ってみた


他の人と一緒に過ごしてみた 彼女と同じように

困っているところを助けて 一緒に出掛けて

プレゼントをしてみたり


わかっていた 代わりになるものでなく

むなしいだけだと 彼女の笑顔がちらつくばかりで

どうしようもなくなった


彼女のそばにいたい 傍にいてほしい

できれば彼女の一番になりたい


無理だと知っている

だって咲いたような笑顔が変わってしまったから

どこか僕に遠慮をした 笑っているけど 辛そうに


それでも 僕は彼女のそばで

彼女を笑顔にしたい そう思う


「おかしいよ」


わかってる


でも きっと僕の気持ちは

彼女へのきもちは  「あい」だろう





ここまで読んでくださりありがとうございます。初めましての方、お久しぶりの方、小田上総と申します。人の数だけ思い方があり、同じ重さでも、方向性でもない。それでもすり合わせていっしょにいられたらいいのかもしれません。 哀であり、愛になりますように。そんな気持ちを込めています。

だれかの心に少しでも残れば幸いです。 掲載期間は長くないと思います。

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