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まさかの

謹慎期間5日目。

場所は謹慎1日目に泊まっていたホテル。駐屯地に潜入した時の部屋は昨夜に騎士団が去るのを見計らって後にしていた。


そんな賀露島とリューノは少しだけ早く起きる。

そして1つのベットを向くように正座をする。何も無いベットに向かってだ。


しかし本当に何も居ない訳ではなかった。



ベットの横にある窓から朝日が差し込む。その光に照らされるベットの上で何かがキラキラと輝きを放ちだした。



いよいよだ。ナルタリカからの説教タイムが始まる。4日間も部屋に置いてきぼりになっていたんだ。

あのナルタリカが怒らない筈がない。もしかしたら五体満足にはいられないかもしれない。

ならば賀露島達から許して貰うための誠意を見せる為に敢えてこうしている。





そしてそれは姿を現したのだった。




「「もっ....申し訳ございませんでしたァァァ!!!」」



2人は大きな声で謝罪の言葉を口にすると深々と頭を下げた。

これだけの誠意を見せれば例えナルタリカであろうと許してくれる筈だ。




「...いや~本当に申し訳ありませんナルタリカ様~。君を置いていくつもりなんて無かったんだけど....」



顔を上げる賀露島とリューノ。しかし予想外の事が起きていた。




「...あれ?ここは何処?それに貴殿方は、どなたですか?」



姿が現れたと同時に小さい何かから可愛らしい寝起きの少女の声が聞こえる。

それは賀露島がこの世界に来て初めて出会った妖精のナルタリカでは無かった。




「「...あっ..あれ?」」



賀露島とリューノはお互いを見つめ合う。決してボーイズラブ展開になった訳ではなく、本当に訳の分からない状況になってしまったからだ。



賀露島のベットにいた透明な何らかの感触は、ずっとナルタリカのものだと思っていた。

だが蓋を開けてみれば全く違う妖精の女の子であった。




「...あ...ええっと..もしかして初めまして....ですか?」



「ええ。貴方様とは初めての対面になりますよ。」



不思議な様子でこちらを見てくる妖精。なんだが気まずくなってきたので、取り敢えず足を崩す。


どうやら彼女はナルタリカ同様の妖精族で間違いは無さそうだ。

ただナルタリカと違いがあるとすれば、ナルタリカは少し狐顔のキリッとした感じだが、彼女はバンダのようなおっとりとした感じだ。

でも髪の色も瞳の色もナルタリカと一緒ではある。



「えーと...僕の名前は賀露島晃己って言うんだけど、君の名前を聞かせて貰っても良いですか?」



その言葉に彼女は手で口を抑えながらクスクスと小さく可愛らしい声で笑う。

何が面白かったのか分からなかったが、何か可愛かったから何でもいいや。



「ウフフフ...そうですね。先ずは自己紹介からですね?わたくし妖精族のネフィタリカと申します。」



「おお!何て可愛らしい名前なんでしょうか。君の可愛らしい顔にピッタリだよ。」



賀露島は何か口説いているように見えるが、彼も彼なりに必死に喋っているつもりだ。

ナルタリカだと思って連れ出した妖精がナルタリカではなく、ネフィタリカだというのだから誘拐したのと同じようなもの。

少しでもおだてておいた方がいい。まあ可愛い事に変わりはないのだが。



「ウフフ。そう言って御姉さんをタブらかされているでしょ?」



またクスクスと上品に笑うネフィタリカ。

しかし今の言葉。1つ気になる。



「御姉さん?」



御姉さん。一体だれの事を言っているのだろうか?



「あら。わたくしの御姉さんは貴方様もご存知の筈ですよ賀露島様。」



僕はネフィタリカの御姉さんを知っている?

思い当たる節は勿論1つしかない。1つしか無いのだが、あまりにも似てなさすぎる。


ウ~ンっと考え込む賀露島。

それを見てリューノは賀露島の考えを何となく察し、アハハハと苦笑いをする。




「..あっ。申し遅れましたが私はリューノ・リド・エンフェルトソードです。」



「これはこれはご丁寧に。ネフィタリカです。」



お互いに軽く頭を下げるリューノとネフィタリカ。まるでお見合いのような雰囲気が醸し出される。



「それじゃあ質問があるんだけどいいかな?」


 

「ええ。構いませんよ。」



改めて賀露島はネフィタリカに対して質問をする。




「まず君は何故僕の部屋のベットで寝ていたんだい?」



そう。先ずはそこが疑問なのだ。

此所で拾ったのがナルタリカならまだわかるのだが、それが全く別人のネフィタリカが出てきたのだから疑問に思う事に間違いは無い筈だ。

知らない人間の部屋に警戒心の強い妖精が入ってくる訳がない。



「そうですね。それならわたくしでは無く、貴方の良きパートナーに聞くのが一番かと思います。」



なんの事だろう?

良きパートナーってのは誰の事を言っているのか。


そんな賀露島にリューノは肩をトントン叩いて小声で「ナルタリカさんの事ですよ」と教えてくれた。




「なるほど...ナルタリカか。でもナルタリカって何処に居るんだ?」



「恐らくですがバック機能に入っていらっしゃるのでは?」



そうなのか?

しかし全くナルタリカをバック機能でしまった覚えがないんだが。



取り敢えず賀露島は目の前に映るストレージを覗く。

きっとそんなのは無いだろうと探してみるが、やはりナルタリカやハエといった文字は無かった。



「ウ~ン。見当たらないな...やっぱり置いていったのかな?」



しかしそれはあり得ない。

ナルタリカは呪いにより伝説の剣【鈍器】から離れられる距離には制限がある筈だ。


ここから考えられるのは伝説の剣【鈍器】をバック機能にしまった賀露島はナルタリカをそのままにして引きずって来たのかもしれない。

そう思って足元を手探りで探してみたが反応は無かった。



「彼女なら居ませんよ?わたくしも驚いています。もしかすると賀露島様は伝説の剣を今はお持ちではないのでは無いですか?」



そんな筈はない。確かに伝説の剣【鈍器】はバック機能の中に入っている。それを見せようとストレージから伝説の剣【鈍器】を取り出す賀露島。


その時だった。

部屋中が殺気に満ちる。

これにビクッと反応する賀露島とリューノ。



〈狂化モード〉で無くても持てるようになった伝説の剣【鈍器】と一緒に賀露島の手の上から何かが出てきた。


そうこの殺気の元凶であるナルタリカであった。

どうやら賀露島はナルタリカを伝説の剣【鈍器】と一緒にしまっていたようだ。


しかしそこから出てきた彼女のその顔は怒りに満ちている。

この世の者ではない程に正に鬼の形相といったやつだ。




「あら~久しぶりねぇ~....元気にしてたかしら?」



鬼の形相から笑顔に戻ったナルタリカだったが、勿論心の底から笑っている訳ではない。これは完全に怒っている。



「ハハハ...元気だったよナルタリカ..。今日も一段と綺麗だね?」



その言葉が着火になったのか分からないが、ナルタリカの〈物体操作〉魔法をまともに受ける。

しかもその威力は優しく叩くなんてものじゃない。

まるでフクニーグの拳をもろに受けたような感じだ。




「へぶっしぃ!!」



賀露島の体は後方にあったホテルの窓ガラスを突き破り、3階の高さから落ちて行ったのであった。




ーーーーーーーーーーーー





「ふ~ん..まあ良いわ。少しだけ許してあげるわ?それはいいのよ。」



ナルタリカには、どうして置いていってしまったのかを事細かく説明した。

完全にナルタリカの存在を忘れていたとはハッキリ言えないので、誤魔化しも入れつつ彼女が納得のいく説明をした。

まあ一時間は使ってしまったが。




「それは良いとして私が一番気になるのはアンタよ...ネフィタリカ?」



まるで怒りの矛先が変わるかのようにネフィタリカの方を睨み付けるナルタリカ。

そのナルタリカの反応を嘲笑うかのようにクスクスと笑いだすネフィタリカ。



「コイツらにアンタの能力を使ってないでしょうね?」



「そんなに睨まないで下さい~怖いじゃないですか...わたくしは、まだ何もやってませんよ?まだ.....ね?」



何やら不穏な雰囲気になってきた。何の事なのか分からないが、どうやらナルタリカとネフィタリカは知り合いのようだ。



「あの~。仲の良いところ悪いんだけど...御二人はどのようの関係なんですか?」



「それはですね....」



「仲なんて良くないわよ!それにコイツは私の妹よ!!」



今に喋ろうとしていたネフィタリカより先にナルタリカが割って話す。


妹?つまり2人は姉妹同士という訳だ。



しかし驚いた。雰囲気は確かに何となく似ている両者だったが、性格がまるっきり正反対である。



「まあ。ナル姉様から妹と呼ばれるなんて夢みたいです。」



「..この~ふざけやがって.....」



端から見たら凄く仲が良さそうに見えるが、それを口にするとナルタリカにまた何かを言われそうなので止めておいた。


とても付いていけないリューノは、ただただ苦笑いするだけだった。



「さあナル姉様との仲良しごっこは終わりにして賀露島様の本題と行きましょうか。」



キリがないと早めに手を引いたネフィタリカ。それがまた癪に触ったナルタリカはまだ何かを言いたげだったが、彼女もキリが無いことは何となく分かっていたので此所は一旦引く事にした。



本題。

そう。連れ去られたマチを探し出す事。


手掛かりがないまま、ただ時間だけが過ぎていく。そして思い出したかのようにナルタリカを駐屯地から連れ出したのだが。



「まず答えから言って無理ね。私はそのマチって子の顔も魔力も知らない訳だから探すにも探せないわよ。」



その通りだ。突然知らない子供の名前を言われて探してくれと言われても無理な話だ。

マチの写真も無ければ、マチの物だってない。


そんな彼女をこの広い世界から探せっていうのは無茶というやつだ。



「あら?もしかするとこれは、わたくしの出番のようですね?」



「!?」



その言葉にナルタリカが動いた。


腕を上げて魔法でネフィタリカを浮かせる。少し苦しそうな表情を見せるネフィタリカを見るに、どうやらナルタリカはネフィタリカを締め付けているようだ。




「アンタ調子に乗るんじゃ無いわよ?それを使ったら許さないって言ったでしよ?」



ナルタリカから再び殺気が放たれる。しかしこの殺気は賀露島達に向けていたものとは全くの別物。

先のようなふざけた感じの殺気ではない。本気で殺そうとする冷たい殺気だ。



この事態が異常である事は蚊帳の外である賀露島とリューノでさえ分かる。



取り敢えずナルタリカの頭を人差し指でトンッと叩く。  



「痛ッッ!って何すんのよ!!」



「何してるのは君の方だよナルタリカ。今すぐネフィタリカを離しなさい。」



そう言って怒る賀露島の顔を見て、膨れっ面のままナルタリカはネフィタリカにかけていた魔法を解いた。


少しゲホゲホと弱々しく咳き込むネフィタリカに声をかける。そんな心配をする賀露島を見てナルタリカは更に顔を膨らませていたようだが、気にしない事にした。



「ありがとうございます。賀露島様は、わたくしの命の恩人です。」



「ハハハ...そんな事無いよ。実際ナルタリカだって本当に殺す気なんて無かったと思うしね?」



いや。こう言ったが、やはりアレは本気で殺そうとしていたようにも見える。

だがきっと何かの勘違いだろう。今はそう思う事にした。



「いえいえ...それでもわたくしは助かりました。なので賀露島様のお力になりたいのですが....確か人をお探しになっているとか?」



「...あっ..そうなんですが....手掛かりが無くて....彼女の情報も何一つ無いんです。」



するとネフィタリカは優しい顔で笑いかけてくる。



「大丈夫ですよ。そのお探しの彼女様の情報は賀露島様が持っていますよ?」



「え!?何処に!?」



ネフィタリカの言葉が暗く行き詰まっていた捜索に一筋の光を灯した。


もしかすると見つかるかもしれない。そんな手掛かりを僕が持っている!?

自分の周りを見渡して見たが当然そんな情報に結び付きそうな物は何もない。


一体ネフィタリカが何の事を言っているのか分からなかった賀露島。



「ウフフ。大丈夫ですよ。それは賀露島様の頭の中に入ってますから...」



笑顔で笑いかけるネフィタリカ。

だがこの時の顔が少し怖い顔だったのは見間違いだろうか?



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