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魔法使えました

場所は廃墟のような建物に囲まれた場所。

人が全くいないこの空間は誰にも気づかれず何かをするにはぴったりの場所だ。



「ぐるるるる!近づくんじゃない!!」


獣の耳に狐の尻尾をもつ人間と獣属の特徴を持つまだ幼い男の子は大人4人に囲まれる。

懸命に威嚇するが大の大人から見れば可愛らしい物だ。全く効果はない。



「おいおい獣の子が人間様の町で何やってくれてんだ?」


真ん中正面に立つ男がナイフを取り出し、獣の子を脅す。

どうやらこの男がリーダーと思われる。

それを見て獣の子は一歩下がるが真後ろにある壁にぶつかり、これ以上は逃げることは出来ない。



「盗んだものを直ぐに出せ!今すぐ素直に出せば許してやる。」



一時間位前に男が不自然な程、大切に小箱を持っていたので油断していたタイミングを見計らい盗みを結構した。

獣の子は言われた通りにポケットから恐る恐る男達から盗んだものを差し出す。


何やらポケットに子供のポケットに入ってしまう程の大きさの小箱が出てきた。

男はそれを獣の子から思いっきりブン取った。



「ケッ!盗みするなら相手をよく見て選ぶんだな。」

舌打ちする男は獣の子の腹に目掛けて下から足で蹴り上げる。


蹴られた獣の子はあまりの激痛に腹を抱えてうずくまる。

咳き込む様子と異常な程の震えから、かなりの痛たかったと見える。



「ったく。純粋な獣属なら売りもんになるんだけどな。お前みたいな人間と獣の中途半端な奴は売れねえんだよな...」


男は倒れる獣の子に近づき顔を踏みつける。

そして何度も何度も靴底を擦り付ける。



「まあ落とし前は付けて貰わねぇとな。」


持っていたナイフを獣の子の指に近づけ「指の3本で許してやるよ。」と言われ恐怖が襲う。


指を失ってしまう。

それでは仕事がやりづらくなる体になってしまう。



「ごめんなさい。ごめんなさい。」

獣の子は何度も男に許しをこう。指を失う訳にはいかない必死に許しをこう。

しかし男はこれを見てクククと笑う。



「いやいや?考えてみろよ獣のガキ。俺らが雨で、びしょ濡れになりながら、こんなことしてるんだぞ?」


「俺らを雨で濡らした責任はお前の指ぐらいでは、本当はすまんのだぞ?これでも済むだけ有りがたいと思え。」



男が指をパチーンと鳴らすと回りにいた男が近づき、取り押さえる。

流石に暴れだす獣の子だが男3人にガッチリ押さえ込まれ全くびくともしない。


 

「よし!ガキの指コレクション今日から始まるから早くその指を切らせろ!!」


ナイフを獣の子の指に近づける。

当然のように恐怖で暴れるしかし動かない。

しかしナイフは確実に近づく。



「ガキ!責任の取り方ってのは!こうやってやるんだよ!!」


指の真上でナイフを静止させ指を切ろうと力を入れようとした。



「あんたが責任とれーーー!!」


その時後ろからの声と共にナイフを持った男はドロップで水溜まりにダイブする。


それを見た獣の子を押さえつけていた男達はドロップキックした主に襲いかかる。

主とは勿論、賀露島である。


賀露島が男をドロップキックした理由は単純なものである、ただの仕返しである。



賀露島は始めに左側から襲ってきた男の掴みを華麗に避け、その男の後頭部を掴み右側にいた男の顔面にぶつける。

男2人は膝から崩れ落ち倒れる。

あまりにも綺麗に決まったので賀露島自身よく映画で見ていたカンフーのアクションを思い出す。


続いて来た男がナイフを持って迫ってくる。それを一心不乱に僕目掛けて振りまくる。



「..ちょっ!?ちょっと待ってよ危ないじゃないか!!」



右手で振り回されるナイフを一つ一つ避けていく際、不思議な感覚になる。動きがスローモーションで見えるのだ。

特に能力を発動した訳では無さそうで自分のステータスによる身体能力だと思う。



自分の凄さに感心している最中。男から降り下ろされたナイフが僕の左腕に傷をつけた。



熱い!

切られた傷の線が描かれている部分に鮮明な温度を感じる。



「ぐわぁ!アッチぃ!!」


お腹を射された経験のある身としては今回の腕を切られた程度と思ってしまうが痛いものは普通に痛い。


だが痛みに反応した右腕が真っ直ぐ男の顎にクリーンヒットし、男は奥にある壁まで吹っ飛んでいった。



「え?」

予想外の出来事に僕から間抜けな声が溢れる。

僕の痛みの反射で当たった拳が男を予想外の放物線で描いた。


ステータスで肉体が強化されているのは分かっていた。だが少し当てただけでこれ程の力が出るとは思いもしなかった。



「まさか僕がこんなに強いと思わなかった。」

ナイフで切られた傷をポーションで治す。


よし。

とりあえずスカッとした。

目的の男とその後ろにいた4人の奴も倒した。


ん?

4人?



「おいてめぇ~?」

後ろからまた別の男が歩いて来た。


顔はサングラスで目を隠しており高身長でしかも横が太く全身黒の服装がさらに威圧的になっていて、正直に言うと今にもチビってしまいそうな外見をした大男が僕の後ろに立っていた。

そうこの大男が残っていた。



「てめぇ。よくも俺の護衛対象に怪我させやがったな?」

大男の拳が下から僕の腹に炸裂する。


鈍い音をたてる大男からの無慈悲の暴力は僕の意識を薄れさせるには充分だった。

だが何とか意識は保った。



「おいおい。それなりに魔力は込めていたんだがな~。結構大丈夫そうだな?」


男の周りから不思議な色をしたオーラのような物を見た。

青っぽい色をしているが少し薄く感じる。 


そして先程よりも鮮烈に肌に感じる。大男から感じる危険信号を。



「そんならもっと強烈な奴行くぜ!」

殴られても倒れない僕を見て味をしめたのか更なる攻撃に移行する。

大男が拳を構えるとその手から漏れるオーラのような魔力と呼ばれるものが色濃くなっていく。



あれをくらったら先のように耐えることは難しいかもしれない。

呼吸を整え念じる。



〈狂化モードに移行しますか?〉

イエス。



大男が僕に目掛けて放つ魔力を帯びた拳に僕も拳を振り抜く。


双方のぶつかり合う拳は風を発生させる。



「ほぅ。お前めっちゃやるじゃねぇか。」

ぶつかり合った拳はお互いが力を入れ続ける為震えている。

押し勝とうと拳に力が入る。


 

「おじさんもやるじゃん。」

なんて強がっているけど狂化モードを使って五分っていうのは、どうかと思う。



「お前、名前を聞いてもいいか?」


「冒険者の賀露島晃己です。」

どうせ名乗るなら最近なったばかりの冒険者を付けてカッコよく決めてやった。



「なるほど..なら!久々に全力が出せそうだ!」

魔力はさらに色濃くなり音を出し始める。



あれ?本当にやばくない?

さっき全力やないんかい。



「賀露島!!俺の全力の拳!耐えてくれよ!!」

風を常に感じる程の存在感を放つ大男から絶望とまで言えるほどの魔力を放った。


放たれた瞬間、僕の時間がゆっくりと流れ出す。

スローモーションの世界だ。


時間はできた。

このままでは流石に不味い。

死んでしまう前に考えろ僕。



目に表示される枠を調べる。

そういえば新しく見つけたスライドさせた時に開いたページの能力を見ていなかった。


調べていくとマジックと書かれた欄がある。


「これは?」

マジック欄に幾つか魔法名が書かれていた。

とりあえず。



「超暴風魔法!ハリケーン!!」

フェアリーワールド最上位風属性の魔法。


その掛け声と共に僕の後ろから風が勢いよく吹き荒れる。

その風は僕の思っていた以上の威力だった。



「うおおおおおおお!!!」

始めは踏ん張っていた大男はバランスを崩し遥か彼方に吹き飛ばされる。

一瞬で姿が見えなくなる程の速さで消えた。



風が止み、辺りが静かになった空間で僕はボーと立っていた。


直ぐに我に返り、辺りを見渡すとそこにあったはずの家々が全て消えていた。


明らかに先の号風だろうか。

いやそうだろ。



いつの間にか止んでしまった雨。これも恐らく自分のせいだろう。


おかあさん、おとうさん。

僕は魔法使えるみたいです。


とは言えこんな大惨事なったんだ。

ここはとりあえず。


逃げよう。



怖くなった賀露島はナルタリカの待つホテルへと去っていった。


その出来事を賀露島とは違い直ぐには我に返れない2人だけがポケーと見ていた。

獣の子と賀露島が蹴り飛ばした男だ。


否。

もう1人いる。

無邪気に笑う少女。

彼女もまたそれを見ていた。

いや。賀露島だけを。



段ボールが目の下部分に当たってしまった。

痛かったが一時的なものだと思ったがスゴい腫れていた。

まさかこれ程自分の体が脆くなっているとは(/´△`\)

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