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リュミエール

場所は王都メイシコ王国の宮殿内。宮殿内の1つ1つの部屋は複数の子供が走り回っても余る程の広さがあり、天井には大きなシャンデリアが幾つもキラキラと輝いており壁は華やかにゴージャスに骨董品などが飾られている。

まさに貴族のような部屋。



そんな沢山ある部屋の1つで4人が食事をしていた。

4人は1つの丸いテーブルを囲むように更に乗っている料理を食べていた。



「おや?リュミエール殿?一体どうしたのだね?」



4人の中で一番高齢であろう男が口を開いた。

この高齢の男は現メイシコ王国トップのイサジ・メイシコ三世である。

イサジは少し空を見上げていたリュミエールに問いかける。




「..はい?..ああ....すいません..ちょっとばかり騒ぎがありまして。たった今鎮圧した所ですよ。」



リュミエールと呼ばれるのは金色に輝く髪の長いエルフの女だった。蒼く透き通るその瞳は、どんな者も吸い込まれそうな程美しいものだ。


そんな彼女はメイシコ王国のイサジに微笑みながら話す。その言葉にイサジは「ご苦労様」と労う。




「ホホホ..しかしリュミエール殿は相変わらず清く美しい方だ。ワシが若かったら王妃に迎えたかった所だ。」



「フフフ..ご冗談を。それに私には運命を決めた方が居ますので...」



「ホホホ確かにそう言っておったな。すまんかった。」



「いえいえ。気にしていませんよ。」




リュミエールは手を止めていた食事を再び再開させ、食べ物を口に運ぶ。

すると、リュミエールの向かいの席に座っていた子供が口を開いた。




「カッカッカ!全くもって哀れよなイサジ?人間族の頂点に立つべくメイシコ王国の国王が異種族の女のご機嫌を取らねばならぬとは...」



「なっ!なんだと!!」



イサジの左の席にいた子供は国王イサジを煽る。

その言葉がイサジの逆鱗に触れたのか激怒するイサジは持っていたナイフを構える。




「まあ待ってください国王様?カワモラ様はまだ子供ですよ?」



ここはリュミエールが止めに入る。

イサジを煽った子供はメイシコ王国に敗れ、囚われの身となっている人間族の象徴である帝のトーヤノート・カワモラである。


カワモラは代々続いた帝の血を引く中で唯一の生き残りである7歳位の男の子だ。



「おのれガキが..貴様なぞ忌々しい帝の血が無ければ、この世の苦しみの限りを尽くしてから殺していたところだ!」



「ふん!このような下劣な男に王を務められてしまうからにて、国民は怒っておるのではないか?」



「貴様!言わせておけば!?」




その時だった。

言い争いを続ける2人は後ろから喉をナイフで刺された。

いや。これは比喩表現。実際には刺されてはいないが、それが鮮明に感じ取れる程の感覚に陥った。



リュミエールの威圧である。


リュミエールの仲裁を無視して言い争う2人。それを見かねたリュミエールが威圧を使用したのだ。



顔を伏せたまま何も話さなくなった両者。その額からは冷や汗が流れる。


何故人間として位の高い2人が顔を上げられないのか。

上げられる筈が無いのだ。

目の前にいるエルフの女は圧倒的強者であるからだ。


そんな強者の機嫌を損なわせたのだ顔を上げる事など出来る訳がない。



「さて...」



リュミエールが吐いた2文字の言葉。この言葉は部屋にいた全ての者に重くのし掛かった。

上から圧倒的強者に抑えつけられるような重圧。これは言霊である。



冒険者のように魔力を鍛えている者であれば、リュミエールの言霊はなんて事は無いが、全く鍛えていない一般人同然のイサジとカワモラには効果がある。




「私の忠告を無視されるのであれば、私もそれなりの態度をとらせて頂きますよ?」



イサジとカワモラに戦慄が走る。

彼らの頭上には複数の光輝く剣が2人を狙っていた。目の前にある死を連想させる光景。

リュミエールが少しでも指を振ればこれは彼らに目掛けて落ちてくるだろう。




「フフフ..人間族で最も高位な方々であるのは分かっております。本来ならこんな事すれば私は死罪不可避です。でも...」



リュミエールは突然立ち上がり満面の笑みで2人を見下ろす。



「ならすれば良いじゃないですか!私を死罪に!!」



リュミエールの声は部屋中に響き渡る。



「殴り殺したければ私をミンチになるまで殴って下さい!刺し殺したければ刺す所が無くなるまで刺して下さい!犯し殺したければ貴方達が好きなプレイで犯して下さい!!」



今、この場いる者達に必要なのは沈黙である。今のリュミエールは、かなり危険な状態である。

少しの刺激も許されない。


だからこの場での最良の答えは喋らずリュミエールが落ち着くのを待つことだ。





「私は貴方達に遠慮はしませんよ?今からでも貴方達人間族に戦争を起こしても良いんですよ?..さあ始めましょうか?私と貴方達人間族との大戦争を!!」




無茶苦茶で自分勝手な言い(ぶん)であるが、適当な事を言っているように聞こえてしまうが、全部実際に彼女はそれが出来てしまうのだ。

それほどの力があるのを知っているが故に、このような横暴を人間族最高位であるイサジが認めているのだ。



リュミエールの美しかった蒼く透き通っていた瞳は、黒く濁っていた。

再びゆっくり席に座るリュミエールは2人に向けていた光の剣を解く。


ようやく動けるようになったイサジは慌ててリュミエールの近くまで行き、右足を床につけて中腰の体勢のまま頭を深く下げる。

これは本来兵士が王を相手にする時の最上級の敬意を表す動作である。




「まあ...これはこれはイサジ様..そのような真似は止して下さい。私は貴族でもないただのエルフ族の者ですよ?」



最早リュミエールは楽しんでいる。立場が高い者をひれ伏せさせ、屈辱を与える事に楽しさを見出だしている。


しかしイサジは、どれ程の屈辱を与えられようと我慢しなくてはならない。

例えこの頭に足を乗せられようとも。




「全くイサジ様は本当に可愛い御方なんですから...私はそんなイサジ様を許さざる得ないですね?」



「おお..リュミエール殿...感謝致します!」



「でも良いのですか...?」



リュミエールは頭を深々と下げるイサジの顎をクイッと上げてイサジの目を見つめる。

イサジに自分の顔をしっかりと見せるためだ。




「私が言うのはあれですが...イサジ様はカワモラ様の仰る通り、凄く哀れですよ?...それを通り越して惨めでしょか?」



リュミエールはイサジから手を離すとバカにするように腹を抱えて笑い出す。

それでもイサジは何も言わず悔しい顔をしながら、下を向くだけだった。




「お前は異常であるぞリュミエール..お前は一体何者なんだ!我は別にこの下劣な国王の仲間では無いが、コヤツと同じ人間族である事に変わりはない!」


「最早エルフとて我慢が出来ぬぞ...横暴が過ぎるぞ!!」



そんな光景を見て声を張り上げるカワモラ。

カワモラはイサジのように媚びはせず、リュミエールに反抗的な態度をとる。


リュミエールはこれに少しムッとしたが、ここはイサジの誠意を建てて許すことにした。



「横暴なんて酷いですよカワモラ様。私は私ですよ?確実に言える事としましては、私は反国軍の味方ではありません。」


「ですが貴方達人間族の騎士団でもありません。私は貴方達が勝手に私をナンバーズにしただけで、本当はあの御方と同じ普通の冒険者なんです。」



「お主が、その男を陥れたのに運命とは...本当にお主は何者なんだ。」



カワモラは震えながらリュミエールに質問する。エルフであるリュミエールだが比較的話しやすい人形の人種の筈だが、どうも彼女だけは違う。


カワモラは彼女と話す時、いつも舐められぬのう外見上では平気な振りをしているが、実の所リュミエールにはビクビクしながら生きている。



「だから言っておりますよカワモラ様?私は私です...当たり前じゃないですか。1人の殿方と運命の赤い糸で結ばれた只の普通の女の子ですよ?」



何も無かったようにカワモラの質問に答える。

リュミエールはその答えた質問が恥ずかしかったのか顔を手で抑える。

そんな彼女にカワモラを口を開くことは無かった。もう今のリュミエールは話を聞いていない事を悟ったからだ。



真っ黒に濁りきった瞳。これを見た者は、蒼く透き通る瞳をしていたリュミエールを思い出せないだろう。


この女。イカれてる。




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