ドラゴン
ドラゴン。
かつて魔族以外の種族と魔族とで大きな戦争があった。
その時、魔族側のモンスターとして大きな体に固い鱗と口から出す光線で戦場を圧倒していたという存在。
魔族の王である魔王が討ち取られた際に、主を失ったドラゴン達は各々が場所へと去っていったと言う。
それ以来ばったりと存在を確認されなくなったドラゴン。それがこんな離れた誰も居ない島の地下にいた。
ドラゴンの口から放たれた激しい光線がリューノ達に向けられた。
その光線は洞窟を一キロ程まで破壊した。破壊された洞窟は瓦礫が崩れ跡形もなくなる。
リューノ達の姿が見えない。恐らく消し炭になったのだろう。
ドラゴンは何事無かったかのように元来た道に戻っていく。
「ナルタリカさぁぁぁぁん!無理無理無理むりですって!!」
「うるさぁぁい!!アンタは黙ってソイツの背中にそのナイフで刺しなさいよ!!!」
「うおおおおおおおおお!!」
しかし宙に浮くリューノとナルタリカと気絶している賀露島がそこにいた。
ドラゴンはそれに気づくが少し遅かった。
ナイフを持っていたリューノがドラゴンが反応する前にドラゴンの背中を切りつけた。
余程痛かったのか大きな咆哮が再び洞窟内に響き渡る。
リューノはその咆哮に身構える。
だが今回は何とも無かった。さっきはビリビリ伝わってきた咆哮を今回は何も感じなかった。
まるで体が何かに守られているような感覚。
「もしかしてナルタリカさん..?」
「何よ?アンタに加護を付けてるのは当たり前でしょ?そうじゃなきゃあのドラゴンに傷つけらんないでしょうが!!」
凄い。ただそれのみだ。
今日は驚いてばかりだ。しかし今こうして当たり前のように起こっているのか事は今まで体験した事も想像した事もない。
ドラゴンは見たことは無いがワイバーン等の翼竜ならあるし、肉体強化の加護等を魔術師に受けた事はあるが市販の何処にでもあるナイフで聖剣ですら弾くという竜の鱗ですら容易く切れてしまう程の強化の加護を受けたことは無い。
その加護を〈物体操作〉魔法を使いながら、難なくこなせる魔力。妖精が魔素の素だと言われるのが分かった気がする。
「コラァァ!リューノ次来るわよ!!」
「..はっ...ハイ!」
ドラゴンが振り落とした尻尾を何とか避けるリューノ。色々と考えすぎて今ある戦闘が疎かになっている。今は取り敢えず色々と考え過ぎるのは良くない。目の前の敵を倒すことを最優先に考えよう。
「すっ..凄いです...。少し飛んだだけであっという間にこの高い天井に手がつく。これならドラゴンにも勝てます!!」
ドラゴンの攻撃はとても重い。ナルタリカの加護を受けて防御力もかなり上がっているが、ナイフでドラゴンの攻撃を防御した時、押し負けそうになった。
やはりドラゴンは強い。だから圧倒的魔力を持つ妖精のナルタリカでもドラゴン相手に手を抜けないのだろう。しかも賀露島という負傷者を背負ってだ。
だが戦況は此方が優勢だ。ドラゴンの大きい体は広いとはいえ洞窟の中なので動きが制限される。折角の翼だって宝の持ち腐れだ。そんな中、ほぼ無制限で動ける此方は環境的に有利。
仮にドラゴンの攻撃を受けたとしてもダメージは受けるが何とか防げるし、此方は確実にドラゴンの体力を削れている。
「もう少し楽しめると思ったけど案外つまらないものね?」
ナルタリカは余裕の表情でドラゴンの眼前で小さな両手を合わせる。その手を開くと光の玉が出現していた。
まるでドラゴンが放出したあの光線のような。
「お返しだわ!アンタ程威力は無いけど同じようなもんの!属性魔法ホーリーランス!!」
ナルタリカは開いた両手をドラゴンに向ける。
「死になさいトカゲ!!」
するとナルタリカの両手で浮いていた光の玉からドラゴンと同じような光線が発射された。
光線と言うよりは巨大な槍がドラゴン目掛け放たれた感じだった。
あまりの高度な戦いに少しずつ天井の土が崩れ落ちてくる。崩壊するのも時間の問題だろうか。
「少しは参ったかしら?」
腕を組み勝利宣言をするナルタリカ。それを見てリューノが惜しみ無い拍手を贈る。
「さっすがナルタリカさんだ。レベルが違いすぎますよ...」
パチパチとリューノの拍手の音が寂しく響き渡る。砂煙が込み上げる中、ナルタリカが初めに洞窟内を明るくするために使用した光の魔法が消えて洞窟内は再び暗闇に包まれる。
そして照らし出す一筋の光。
リューノはこれをナルタリカによるものと思っていた。
だが違った。
「アンタ何やってんの!早く逃げなさいよ!!」
「はい?」
やがてその一筋の光は玉となり輝きが増していき、その光の正体がドラゴンであることを把握した。
しまった。早く逃げなければ!!
しかしその時、あれ程の威力の光線が自分に向けられたと知って恐怖してしまったのか体が上手く動かない。
ナルタリカもリューノが体が動かせない状況にあることに、やっと気がつき彼の体を〈物体操作〉で動かそうとしたが、一瞬突き刺さるような殺気に体が止まってしまった。
殺気?一体誰が!?
天井が激しい閃光と共に爆音を出して崩れ落ちてきた。




