ガンフローオンライン1
ガンフローオンライン。
僕がこのゲームに出会ったのは、まだお金の無い頃からだった。
最近は課金をするようになったが始めた頃はゲーム内の仲間と一緒に無課金でひたすら己の実力のみで戦っていた。
上に上がるに連れて敵が強くなって勝てなくなり止めそうになった。
だがそんな最中宝くじが当たる。
課金者連中は実力の無いカスの集まりだと仲間と一緒に馬鹿にしていた事も僕にはあったが、内心羨ましかった。
そんな中で大金の宝くじが当たったので少しだけ、少しだけと課金をしていく内に歯止めが聞かなくなり毎週5万は課金するようになり、いつしか僕も課金者の仲間入りを果たした。
使っても使ってもなかなか減らないお金に僕は天狗になっていた。
それに比例するかのように今まで戦ってきた仲間は僕の前から居なくなっていき、ゲーム内でも廃課金者だの色々と言われてきた。
しかし辛いとは思わなかった。
何故なら課金すればするほど強くなる自分が堪らなく好きだったから。
そんな僕の人生を満たしてくれたゲームの1つガンフローオンライン。
そして今、目の前にいる軍服を着た少女がいる。
その女の子はガンフローオンラインに出てくる女の子に容姿と声が一緒だった。
「コウノキ少尉!お久しぶりです!」
「え!あっ!?」
現状が全く読み取れなかった。
目を覚ませば見たこともない別の世界に飛ばされ、まだ少し戸惑いがあるのにゲームに出てくる女の子が出てくるんだから思考はもう機能していなかったが名前はすぐに浮かぶ。
「リタカート大佐ちゃん!?」
リタカート・ヤン・マードリカ。
ガンフローオンラインで出てきてゲーム説明をしてくれるヒロイン。
設定では確か主人公の部下に当たる存在だ。
その可愛さと声からゲーマーには、かなりの人気があった。
「もう!私の事はリタって呼んでって言ってるじゃないですか?大佐とか要らないですよ!!」
頬を少し膨らませる彼女に僕はときめいてしまった。
(こっ!これが恋というやつなのか!?)
「コウノキ少尉?」
可愛い娘が着るには不釣り合いの軍服の彼女は僕の顔の近くまで近づき首を傾げる。
硬っ苦しい筈の軍服でさえ彼女には可愛い服装に変わってしまうほどの美貌が僕の顔のすぐ近くにあった。
「かっ..可愛い...」
ついボソッ呟いてしまった。
その言葉を聞き取り、リタカートは両頬を両手で抑え顔を真っ赤にさせる。
「いや~。やめて下さいよコウノキ少尉!照れちゃうじゃないですか!!」
「ハハハ!」
あまり女子と喋ったことの無い僕は女性と喋ることは、つまらないと思っていたが案外話して見ると異性でも楽しい会話が出来るものなのだと25歳にて初めて実感した。
「そういえばリタちゃんは、この世界の住人じゃないよね?どうしてここにいるの?」
その質問にリタカートは少し考え込む。
左手人差し指を顎に付けて空を見つめながら考える彼女の1つ1つの仕草に僕はキュン胸が締め付けられた。
「..ごめんなさいコウノキ少尉...実は私もよく分からないんです。目が覚めたらいつの間にか、この世界になっていました。」
「なるほどリタちゃんも僕と同じ穴の虫か..」
「えへへ..//コウノキ少尉と同じ..か..」
先程同様に顔を赤くさせ下を向き顔を伏せるリタカートに僕はメロメロになっていた。
彼女から香る匂いが僕を惑わせているような感じがした。
「これから何処に向かわれるんですか?」
「実はついさっき冒険者になって初めて任務に挑もうと思ってね。お金がすぐにいるからそれで今から森に行こうとしてました。」
「任務は何ですか?」
「森にいる中型モンスターの狩りですよ。」
ナルタリカ曰く森で暴れる大熊1匹の駆除だそうだ。
報酬は宿泊費3泊分+食費1週間ほどのお金が貰えるらしい。
どうやら金額的にはかなり高い方らしく、かなりの難易度だそうだ。
いきなり初心者でそんな難易度でやってまだ大丈夫なのかと思ったがナルタリカがいけると言ってたのでとりあえずやってみる事にした。
「私も付いていってもよろしいですか?」
「えっ!?でもそうなると報酬が...」
僕が今一番欲しいのはお金である。
お金が無ければ僕はお金を払わず逃げなければならなくなる。
しかし彼女もこの任務に参加してしまうと報酬は半分に減ってしまう。
「あっお金が必要なんですよね!?いいですよ?お金なら私はたくさんあるんで報酬は要りませんよ?」
「そうなのかい?でもなんか悪いな...」
「それならお金にゆとりが出来た時に返してください!」
満面の笑みで語りかける顔に僕は押し負けてしまった。
また返せばいいというなら今は協力を頼もう。
「それならよろしくねリタちゃん!」
「ハイ!コウノキ少尉!」
僕は右手を差し出しお互いで握手を交わす。
任務遂行の為に早速リタカートと一緒に森に向かう事になった。
そういえばナルタリカの姿が見えない。
ナルタリカは信用する人間にしか見られたくないらしく僕以外の人間がいる時は僕の体の何処かに姿を隠れていた。
(リタちゃんなら信用出来るんだけどな?)
2人で平行して森に向かう僕とリタカートはゲームの世界のあるある話で盛り上がる。
その際時に時々小さい声で何かを言ってるようだっが僕は特に気にしなかった。
「..やっぱり他のメスのニオイガスル...」
また聞こえなかったが独り言かな?
やはり可愛いリタカートに僕の顔は緩む。
だがなんでだろうか。
背筋が冷えるのを感じた。
リタカート・ヤン・マードリカ
ガンフローオンラインのゲーム説明をしてくれるオペレーター役。
設定では主人公の後輩らしく革命軍として正国軍との泥沼の殺し合いする戦闘員。
好きな食べ物は甘い物。嫌いな食べ物はゴキブリ。
ゴキブリは革命軍の貴重な栄養源らしい..