弔いの日
弔いは室内で行われて、そこから棺の入った遺体をあらかじめ掘ってある土に埋めて最後に一人一人が火の付いた松明を棺に投げて燃やす。
そういうやり方らしい。
やはり葬式とあまり変わりなかった。
若干違うところもあるけど。
ジェイルと別れて会場に入った賀露島。
会場の中は意外と明るい雰囲気だった。
黒い服の礼装に身を包んでいたのは極わずかで、その殆どがそこら辺によくいる人の格好と同じだった。
「なるほど..ここの世界ではこれが普通になっているのか...文化が違うとはいえ複雑だね...」
TPOなんて言葉がある。
時と場所、場合に応じた態度や服装の使い分けをする。
そんな内容の言葉だったと思う。
普段良く見かける服装の人は、このTPOを何も考えてないように見える。っというよりかは、それが当たり前なんだと思う。
「まあ昔はもう少し違ったんだけどね?まあ私があの場所に囚われる前の話だけどね。」
肩にいた小さな妖精のナルタリカが話しかけてくる。
姿は勿論、周りの人達から姿を見られたくないので透明化をして姿を消している。
「私が外を自由に旅してた時の人間達の弔いは皆アンタみたいに黒い礼装が多かったのにね。100年で雰囲気もかなり変わってしまったわね。」
文化とは常に変わっていくもの。
それが今までのしきたり通りになるわけがない。
前いた世界でも言えた。
昔はよく友達通しと手紙でやり取りをしていて、伝言を受け取って欲しい相手に文字で伝える方法は昔からこの方法だった。
しかし携帯電話と言う新しい文化が昔ながらの手紙文化を変えていった。
この弔いもナルタリカの言うように文化が少しずつ変わっているのだろう。
すると突然会場に音が鳴り響く。
ブーとブザー音がする。
かなり大きい音で体が音を感じるような感覚だ。
ブザーが鳴り終わると会場は闇に包まれてポンッとバーミンが眠っているであろう棺桶の辺りで火が幾つか灯っていた。
火フワフワと浮きながら棺桶を照らすように灯る。
照らされた棺桶を見ていると今から演劇でも始まるんじゃないのかという演出に思えた。
会場の奥からお坊さんのような人が出てきて棺桶の前に立つと「キェーーーー!!」と奇妙な声をあげて、座った。
結構日本の葬式と同じ雰囲気だが、明らかに違うところもある為、これは葬式ではないと断言出来た。
その後は普通にお経を唱え始めた。
ただただお経を読むお坊さんに瞼が重くなり始め眠くなってきた。
寝てしまっては流石に不味い。
一旦会場の外に出て、トイレの手洗い場で顔を洗った。
「ねぇナルタリカ?起きてる?」
「は?アンタと一緒にしないでちょうだい!私は妖精よ!あの程度の催眠術受けた所で眠るわけないじゃない!!」
素直にあの場で眠気がこないナルタリカを凄いと思った。
「いや~。ナルタリカは凄いな~。」
「はいはい。そんな事で誉められても嬉しくないわよ。と言うか男のトイレの中で話しかけるんじゃないわよ!!」
相変わらずナルタリカの平常運転っぷりに僕も元気が出てきた。
「ありがとうナルタリカ!少し元気が出てきたよ。」
「え..ええ!!その通りよ!私に感謝しなさいよね!」
そんなナルタリカに和んでいたら、少し用を達したくなった。
ナルタリカに股間を抑える動作を見せるとナルタリカは「最低ね変態!!」と言いながらトイレの外に出た。
どうやらジェスチャーは異世界でも通じるみたいだ。っと言うか変態とかそんな事を言われても困るが尿意が近くなった為、便器の前に立った。
僕はフーと息を吐きながら聖水を外へと放出した。
いつも思うがこの力の抜ける感覚は一種の快楽なのだろう。
そう思いながら体をブルブルと震わせた。
しかしこの時、僕の快楽を邪魔する視線を感じた。
恐る恐る視線を感じる右側方向を向く。
するとそこには小さな女の子が1人立っていた。
その女の子は僕が用を達している所を手の届くほどの近さでジーと見つめる。
正直かなりビックリしたが、ビックリしすぎて逆に冷静になっていた。
「あの~。君はなにやってるのかな?」
「やぁ?ウチの事や?貴方の小さいアソコ見てるだけだけや?」
え?ただでさえ女の子がこんな男子トイレにいるのはオカシイのに、小さいとまで言われてしまった。
あまりにも納得いかないな。
「あの~。あんまり女の子がここにいるのは良くないと思うけど?」
「なんでや~?それぐらいいーや!もっとみせてみーや!!」
そう言いながら僕のズボンをグイグイ引っ張ってくるが、この力がまた強い。
なんなんだ、この子は。こんな痴女生まれて初めて見ました。
これが本当のビッチって奴なのか。
女の子の見た目は何と言うか理楊に似ている。
理楊と同じように耳も少し尖っていた。
さらに小さな身長に似合わない程の豊満な体が似ている。
だが理楊とは決定的に違うところがあった。
色気が足らなすぎる。
頭には大きなゴーグルを付けて、髪の毛はボサボサに寝癖が着いており、何よりいかにも男臭い仕事をしていそうな作業服を着ていた。
僕の見た感じの感想だと鍛冶屋で働いていそうな感じがした。
作業服は彼女の身長に合わせてあるのか胸部の所為で服の下の方が足りていないらしく、ヘソが見えている。
「そうや。貴方何ていうんや?」
ん?このビッチは僕の名前を聞いているのだろう。
なんか言葉が変になまっていて聞き取りずらい。
「僕は賀露島って言います..無色冒険者ですけど...」
「や!?そんなら何でノーカラーがあの武器もってるんや!?」
「あの武器?」
「ほらや!あの時やん山の中のギルド拠点の時や!大きめの身長の綺麗なオネーちゃんといたときや!その時、あの剣を落としたやろ床に!!」
あー。何か思い出してきた。
僕が初めてギルド拠点に行った時だったな。
その大きめの身長の綺麗なオネーちゃんって聞いてピンときた。
「あー。リタちゃんか...あの後、無事アイツから逃げてくれたかな?」
つい怖くなったリタカートから逃げ出してしまい、森から現れた巨人を1人で背負わせてしまった。
たしか巨人はトロールとかナルタリカが言っていたのを覚えている。
「って言うかまずアソコ見ないでって行ったよね!?出てって!!」
「煩いや!!早く言いなさいや!!その武器はどーやって手にいれたのや!!」
しかしさっきからドワーフ少女のしゃべり方は、なまりなのか分からないが「や」と言う言葉のイントネーションと不自然な使い方が気になる。
だがこの少女の方言かもしれないので下手に気になることを言わない方が良さそうだ。
僕も昔はしゃべり方や笑い方がキモいとか女に言われてきた。
そんな事を思い出したら、気分が落ち込んできた。僕は大きく溜め息を吐いた。




