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学ぶ為に

外は段々と暑くなり、前のいた世界では夏にあたる季節になってきたのだろう。

ちょっと動くと汗をジワジワ出てくるようになる。


ナルタリカに聞いた所、この世界にも季節があり区分けも春、夏、秋、冬と四季に別れるらしい。

殆ど日本と変わらない。

さらにその季節毎に巫女さんがいるとか。


妙な所でなんとも神秘的で日本っぽいのだろう。




「皆さーん今日の授業はこれでおしまいでーす。」


「「「「ハーイ!」」」」



前にいる1人の大人の女性が発した言葉でその女性に向き合って座っている30人程の子供が一斉に元気な声で返事をする。


何処かで昔見たことがある光景。そう学校だ。



学生時代は無理矢理やらされる勉強に嫌気がさして学校なんて嫌いだと思っていた。


しかし大人になって社会に出たときの社会の厳しさに触れて初めて学生はどれだけ守られていて学校はどれだけ楽しい場所だったのかを知った。



そして今。

僕はその30人程いる小さな生徒側の位置に座っていた。



本当に恥ずかしい話ですが、でもこの感じが懐かしくて涙が出そうです。



そう思う年齢25歳。見た目8歳位の男の子。

それが今の僕。


何故僕はこんな姿(こども)なのかというのは学校転入の3日前だ。



ーーーーーーーーーーーーーー



「おい賀露島。お前あの戦いの時に魔法使って無かったがお前なんで手を抜いてたんだ?」


「え?ああ。実は僕、魔法使えないんですよ。」



ケロッと真顔で答える賀露島にバーミンは驚いた顔で「ハァァァ!?」と大声を出す。



彼の言い分は分かる。

魔法が中心のこの世界ではあらゆる事が魔法で決められていて、生まれた時から魔法が当たり前のように存在するらしい。


仕事からスポーツまで全てが魔法を使用するようで体を動かす際は肉体を強化するために魔法で肉体強化魔法をかけるらしい。



そうやって魔物討伐などを冒険者達も行うため魔法はあって常識の必要最低限のものらしい。



「もしかしてお前は無能者かよ。」


無能。よく言われた言葉。

この相手をバカにしたような単語はこの世界では魔力が生まれつき恵まれず僕のように魔法を使えない人々をそう呼ぶらしい。


僕のような異世界人ならまだ良いがこの魔法の世に生まれて来た子供としては、たまったものじゃない。


生まれた時から負け組。

努力をする間もなく貼られるレッテル。

まるでキュウカみたいな差別だ。



「バーミンさん...あんまりそう言う言葉は好きじゃないです。」


「は?知らねぇよ。そう呼ぶようになってんだよ。」



そう。結局はこの世界がそれを許してしまっている。

世界が変わらないと変わらない事だ。

ある時、カワモラ文字で書かれた新聞をナルタリカに訳して貰った事がある。


内争、テロが激しいらしい。

特に爆弾魔の正体不明の事件は今もまだ後をたたないという。



「まあこんな世界じゃ不満をもつ人は少数じゃ済まないだろうな。」


ハァと溜め息をつく。



「そう言えばお前新聞読めねぇのか?」


「え?あっハイ...実はカワモラ文字分かんないんです。」


「は?いやいや?お前喋ってるじゃねーか?」



そうナルタリカにも言われた事がある。カワモラ語喋っているのにカワモラ文字は書けないのかと。

確かに日本語を話せるのに日本語を書けないのはおかしいと思う。



だが前にも思ったが、この世界に来たときから僕はカワモラ語を喋っている気はしない。寧ろバリバリの日本語だ。



「...まあそうなんですよね。幼い頃は勉強が嫌いだったので」


「カー!なんだバカだったのかよ!」


「ちょっと!クソ野郎!晃己さんにバカとか言うな!これだから野蛮な人間はキライなんです!!」



ちょっと口が悪いケモ耳少女はキュウカ。

つい先週に僕と一緒に暮らすことになった。



「あ?何だガキ?また手刀食らわすぞ?」



それを聞いたキュウカはビビってしまい僕の背中に隠れる。



「クソが野垂れ死んじゃえ!!」



僕の後ろから相変わらず強気に話すキュウカにバーミンは「やれやれ」と呆れていた。


 

「とにかくどうすんのよ?これからずっと文字読めずに生きるのか?」


確かにこのまま文字もロクに読めずにいるのはナルタリカに申し訳ない。

勉強は嫌いなのは真実だが、この先普通に文字を読めなくなるのは非常に困る。



「あっ!ちなみに俺はお前に教える気ねぇから。頑張れよ。」


「ちょっと待てクソ野郎!...あっ..ご免なさいキュウカもまともに教育は受けたことがないのである程度の文字は分かりますが晃己さんに教えられる知識はありません。」



そうか。キュウカも辛い人生を送ってきたのだからしょうがない。

なら。



クルッと首を回しナルタリカの方を向く。



「はぁ?なによ!私に教えろって言うの!?ふざけるな!!...でも..まあどうしてもって..言うなら...。」

 


「そうか...何とかならないかな?...」



僕はナルタリカがゴニョゴニョと小声で何か言っているようだったがキッパリと断られたので素直に諦める。


するとそんな僕を見てキュウカが(ひらめ)く。



「それなら言い考えがあります!」


「...あっ!ちょっと...アンタ達...」


「おっ!なになに?教えてよキュウカ。」




「アンタ達!無視すんな!!」




ーーーーーーーーーーーーーー



学校に転入してから1ヶ月は経っただろう。

小さな体に景色の巨大化。


この不思議な体験にもかなり慣れてきた。

懐かしさに涙を誘われたが、やはり恥ずかしきので止めたい。

だが今の僕のカワモラ文字に対する知識はこの子供達以下だ。

早く文字を覚えてこんな所から出たい。



ワイワイガヤガヤと騒ぎ立てる子供達。


若干子供達の空気についていけない僕。

いつになったら終わるだろうか。



今日もまた聞きなれるベルの音が学校中に響いていた。





カラオケでかなり高いキーの歌を無理して同じキーで歌ったところ声が一瞬で枯れた。

まだ歌い始めて5曲位だったのに...。

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