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風邪

「ぶぅえええクション!!」


鶏よりも朝早く叫ぶ男の声。

賀露島のくしゃみがホテル内に響き渡る。



「ちょっと...アンタ大丈夫な訳?」


久々に心配そうに顔を覗かせるナルタリカ。

いつもなら「うるさい!」と大声で怒鳴られてもおかしく無いのだが、そう言わないのは本気で心配なんだろう。



「..ハハハ...いつもそんな感じで優しくしてくれたら、こんなに可愛いのにな...」


「なっ!?何言ってんのよ!こんな時にふざけないで頂戴!!」


僕をこんなにも心配してくれる人がいたなんて僕は幸せ者だ。



しかし風邪を引くなんていつ以来だろうか。


本当に幼い頃は外でしか遊ぶ事がなく、雨が降ってようが雪が降ってようが、色々とやんちゃをやって遊んできた。

なのでよく風邪は引いてたと思う。


しかし時代は流れるにつれ、家庭内ゲームや携帯等の出現により外で遊ぶ事は一切無くなっていった。


当然1日中家の中で快適な温度で寝ては食べを繰り返していた僕が風邪を引くなんて事は無くなった。



「しかし久しぶりとは言え、免疫力がこれ程無いとは..ゴホゴホ。」


「...あんまり喋っちゃ駄目よ?」



ナルタリカがいつもよりも優しく接してくれる姿に僕は思わずキュンとなる。


これがギャプ萌えというやつなのか!



そんな事を考えていると扉からトントンとノックの音がきこえた。


まだ外は太陽が登っていない薄暗い時間なので、こんな時間に人が出歩くなんてある筈がない。



ナルタリカが扉を開ける訳にもいかないので僕が扉を開けるしかない。


重い体を何とか保ちながらフラフラと歩く。

おぼつかない歩きを見てナルタリカが何度も悲しそうな顔で「無理に開けなくても良いのよ?」と言ってくれてる。



違うんだナルタリカ。

僕は普通ならこの場面健康状態だろうと居留守を使うだろう。

しかし僕はもっと見たいんだ。

ナルタリカが心配してくれるその儚く尊いその顔を!


その為なら僕は!



「倒れたっていいんだァァァ!」


僕は倒れながらドアノブに手をかけ開ける。

そして一言。



「あの~。セールスならお断りですよ?...」

しかし扉を開けた先には誰も居なかった。



「..え?何?イタズラ??」

いまいち状況の読み込めない賀露島。


こんな時間にこんな状態の僕を動かすとは、かなりの嫌がらせの天才とみた。



ハハハと笑いながら呆れて扉を閉めようとすると小さな声が聞こえた。



「あの~。ご主人?」


「へぇ?」



声の出所は賀露島の目線のもっと下だった。

そこには昨日、大雨の中で賀露島が追いかけていた男達のターゲットであった小さな獣の男の子だった。





暫くして外は日が登り、いつもの鶏がおはようと言わんばかりにコケコッコーと鳴く。



そんな新しい朝に僕は狐の耳と尻尾を付けた男の子にご飯を食べさせて貰っていた。



「ハイご主人。アーンして下さい。」


「..あっア~ン...」


獣の子がすくった食べ物を口に運んで貰い食事をする賀露島。

正直このアーンという文化は日本にも当然のように存在したが、やって貰っていたのは小学生まで。

後は恋人通しで行うイチャイチャイベントなので当然とても恥ずかしい事だ。



「どうでしたか味の方は?」


「え?あっ、うん。とても美味しいよ...」


「そうでしたか!それは良かったです!!」



元気に笑う獣の子を見て賀露島はつい溜め息を漏らす。



「それで?君はここに何しに来たの?」


そう。先ずはこれを聞かなければならない。



「それはですね昨日助けて頂いたご恩を返したいんです。」


「ハハハ。別にいいよあれぐらい。」


そうだ感謝される筋合いは無かった。

あの時は、この獣の子を助けたいんじゃ無くて、ただ自分の鬱憤を晴らしたかっただけだったので特に恩を感じてもらう必要は無いからだ。



「いーえ。駄目です。成り行きはどうであれ、私はご主人にしてもらったご恩を返すまでは帰れません。」



これは参ったな。

この子は結構強情な子らしい。



「ハハハ。そうムスッとしないでよ!可愛い顔が台無しだよ?」



それを聞いた獣の子は僕の顔を叩いた。


突然の出来事に思わず僕は「え?」と声を漏らす。



「そういう嘘はいいですので。」


そう言うと怒った顔で違う部屋へ移動した。



するとナルタリカが僕の前に姿を現した。

透明化をして身を隠していたナルタリカはキョトンとする僕に向かってこう言った。



「アンタあの子に何したの?」


「え?可愛いって言っただけだけど?」


「ふーん。色んな人にそう言ってんのね?」



少しムスッとした顔を見せるナルタリカ。

何故ナルタリカも怒ってるのか分からなかった。



叩かれた頬が少しだけだが、まだ痛い。

僕は今日一番の大きなくしゃみを1つだけした。


その時、一瞬寒気を感じてブルブルと震えたので、風邪の所為だと思い温かい布団に潜り込んだ。


風邪を引き伸ばすのは良くない事だ。体を温めねば。

しかし何故か落ち着けなかった。


空耳だと思うが少し小さな声でクシシシと笑う声が聞こえた気がした。




ゴールデンウィーク最後の日。

最後の日位、ゲームセンターに行こうと心に決めたのだが雨がポツポツと降ってくる。

ジーザス(´・ω・`)

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