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おまけ、そのいち それゆけ痴漢

 今回のお話はおまけです。タイトルからもわかるとおり、痴漢だの変態だのな要素が含まれていますのでそういうのが嫌いな人は読まないでください。読まなくても本編には支障ありませんし、もうすぐ更新します故に。

 とある遊園地。


 あるときはファミリーに、あるときは恋人達にこよなく愛されている、穏やかなはずの楽園は今――騒然となっていた。


 曰く、伝説の痴漢は何処に、と。


 家族連れのお父さんも、彼女連れだったはずの色男も、そして遊園地の職員までもが――自分は男だ、ならば行かねばならぬ! そう心に決め、その伝説を探していた。


 そして、その伝説の痴漢――という設定を勝手に植えつけられたミサは、お供の遠衣と一緒に隠れていた。隠れ場所はメリーゴーランドの受け付け場の影。ちょうど植木と建物が壁になり見えにくい隙間ができているのだ。


「うぅ……あたしの名前が聞こえたと思ったらいきなり痴漢呼ばわり!? 咄嗟にここに隠れたものの……どうしようかしら」


「はふーん……ミサ嬢と密着して、かほりが――ぐふっ!!」


「痴漢っていったら誰がどう見てもこいつでしょうに……」


 遠衣のみぞおちに体重の乗った肘打ちを入れながらも、ミサは悩んでいた。どうする、なぜこんなことになったのかがさっぱりわからない以上、下手に表へ出るのは危険だ。自分の顔が割れているかもしれない……っていうか、なんで痴漢? 至極もっともな疑問を持ちながらも、とにかくここを突破することを考えなければならない。


「くっそー、このメリーゴーランドの馬が本物だったら、今すぐ」


「馬刺しにして食ってやるのに」


「そうそう、お腹空いた――あんたを刺して食べてもいいのよ?」


「食べられるなら別の意味がいいなぁ」


 この期に及んでへらへらしている遠衣にミサは少しムカついたが、考えてみればこの危機と彼は全く関係ないのだ。一緒にいてくれるだけでも感謝すべきなのだろう。多分。


「いやー、しかしミサ嬢が痴漢だったとは初めて知ったよ」


 しかしこの一言で彼に対する感謝という念が一切無くなったのは言うまでもない。


「ねね、僕にも教えてよー、その痴漢テクニック」


「……ええ、教えてあげるわ。まず舌を出しなさい」


「うひょー」


 アホみたいに喜んで舌を出す遠衣。そして無意味にれろれろ動かす。まるで変態だ。むしろド変態だ。


「それからあたしのアッパーカットをその顎にくらいなさい」


「べ……あの、それ、舌が千切れるんじゃ」


 顔を青ざめさせ、速攻で舌を引っ込めた遠衣の言葉への返答は、


「ええ、血を観賞するテクニックと書いて血観テクニックでしょ?」


 意外にもダジャレだった。


「あたし、そういうテクニック、自信あるわよ?」


 そして怖いダジャレだった。


 口にするのは冗談でも、彼女の目は全く笑っていない。痴漢として追いかけられるというかつてない恥辱に塗れて過激になっているのだ。そんな身の危険を敏感に感じ取った遠衣は、これ以上ふざけるべきじゃないと判断し、きちんと謝ることに決めた。


「ごめんくさい」


 謝り方を誤った。結局彼は激しいアッパーカットをもらうことになるのだった……なんとか舌は千切れずに済んだようだが。


「どうしようかしら、可牧達は気になるけど、ひとまずあたしたちは逃げないと……でもどうする。あたしはろくに動けないし、使える道具なんて」


 ふと、ミサは気づく。


 なんだ、あるじゃないか、と。


 アッパーの衝撃から復活した遠衣は、目の前の見知った女性の邪悪な笑みを見て――ああ、やっぱふざけすぎたかなー、なんて。ようやくちょっと反省したのだった。


 もう、遅いが。




 ――伝説の痴漢が、ついに姿を現した。


 その噂はたちどころに広まり、誰もがその場所を目指して走った。男も女も関係なく――いや、女性の方々はアホな男につき合わされているだけだが、それはともかく。


 遊園地の中心、最も大きな広場に、その痴漢はいた。


「我こそは伝説の痴漢、ミサなり!!」


 そう高らかに宣言していたのはミサ――などではもちろんなく。


 遠衣だった。


 しかも格好が変だった。


 まず、ズボンを頭にかぶっている。もちろんきちんとかぶると何も見えないので、股間のチャックをあけ、そこから男らしい瞳が覗いている。変態だ。


 上半身は裸だった。これは標準的な男の身体だ。ここで曝すのは変態だが。


 そして下。はいているはずのズボンが頭にあるということはもちろんパンツ一丁で、しかし申し訳程度に上着を膝のあたりまで着ているのは果たして意味があるのだろうか。とりあえず変態だ。


 さらにパンツには『日本一』と書かれている。極めて普通な文章だが遠衣が履いているからもう変態な文字にしか見えない。


 そう――誰がどう見てもわかりやすい変態がそこにいた。


「ちなみに“ミサ”とは『見てくれ僕を!』と『さぁカモン!』の頭文字が合体したあだ名だ! さぁどうだ! まいったか!」


 何がまいるのかさっぱりわからないが、ここまですっとぼけた格好をされたあげくに「まいったか」と言われれば、そこにいた人間の大半が「まいった」と言わざるを得なかった。人間って不思議。


「さぁ貴様ら! この僕を探していたのだろう? 質問があれば受け付けるぞ、この伝説の痴漢がな!!」


「あ、あの!」


 命知らずなんだかイベント好きなんだかは知らないが、一人の男が挙手をした。


「その格好はなんですか!?」


 ストレートかつ誰もが思っていた疑問だ。


 それに遠衣は完結に答えた。


「パンチラだ!!」


 チラどころかモロなのだが、なんとか膝にかかっている上着で微妙にそれを隠し、パンチラにしているのだと――その場にいる人たちは理解した。


 なんで理解できるのかは世界の摩訶不思議である。


「えっと、ミサさんはどういう痴漢なんですか!?」


 とてつもない質問がでた。


「要約すると、とてつもない変態だ!!」


 とてつもない答えだった。


 さて――ここからは質問タイムだ。我先よと彼に疑問を投げかけていく観客達。


「おまえはこれから何をしようとしているんだ!?」


「知れたことを――痴漢であり、変態である僕がするべきことは一つ! 変体だ!」


「何かに変身するのか!?」


「そうさ! 僕の舌は観覧車となってグールグル! 右手の指はメリーゴーランド、左の指はコーヒーカップへと変化して、さらにグルングルン回ってあなたのイヤンな場所を直撃さ! そして僕の股間はジェットコースターでどっかーん!」


「こ、こいつぁなんて嫌な遊園地だ!!」


「親御さんは泣いてるぞ!」


「実は僕も泣きそうです!! ちくしょー!」


「なんだと、それでも変態か!?」


「ああ、変態だ! 僕は変態だ……何もできないちっぽけな存在、でもちゃんと生きてるんだ、変態なんだ。この素晴らしい世界に変態として生まれ、僕は感謝しているんだ。僕を変態に生んでくれて大変ありがとう、お母さん!!」


「あんた本物の変態だよ!!」


「ありがとう!! 僕、頑張って変態として生きるよ!!」


 感動的なセリフだった。変態という単語さえなければ。


 そんな、異様に盛り上がる人々から離れた地点。


 囮を置いてそそくさと遊園地を後にしながら電話をかける本物のミサ。


「――あ、もしもし警察ですか? はい、なんだか変態集団が変態宗教の変態集会してるので何とかしてください。は? 素晴らしい? あなたも変態ですか。まぁそれはいいです、とりあえず職務を全うしてしょっ引いてください――あなたも参加して騒ぐとか無しですよ? では」


 きっちりと後始末もするあたしって、なんて完璧なんだろう……ミサはそう自己満足すると、どこぞの変態のことは忘れて清々しく帰っていくのだった。


 そして間もなく。


 警察がやってきて大事になったのだが……とある警官が遠衣と顔見知りだったこともあり、その場にいた変態たちはすぐに解放された。


 そして彼は――警官とも意思疎通できる変態として、かの変態界に衝撃を残し、ゆくゆくは本当に伝説の変態と呼ばれることになるのだった……


 本当、変な話である。




 本編書いてるうちになんとなく思いついて書いてみた。

 反省はしていない。

 けど自分にはあまり変態変態連呼するような話は合わないと思った……

 合わない、ですよね? 多分^^;

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