表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/39

-序-


 ――覚悟があるのか、と。



 投げられた短い問いに、伏せられていた瞼が上げられる。そこに隠されていた碧の双眸が、雪に眠る森を映し出した。

 見渡す限りの銀世界。樹齢千年を優に超す木々が聳え立ち、人間を寄せ付けない巨大な森ですら、無垢な六花は白に染め上げる。

 覚悟――、と。

 凍えた世界に一人佇むその唇が、銀色に溶けていった問いをなぞる。

 口角が、笑みの形に吊り上った。

「――今更」

 ただ一言。

 踵を返すその銀髪が風圧に揺れる。再び鎮魂歌を奏で出した天が舞い落とす純白でさえ、その身を染める絳を覆い隠すことは難しい。清冽な空気に滲むそれは、明らかに血の匂いだ。

 深い傷を負うその足取りはしかし、明確な意思を持ち、僅かの乱れもない。雪上に点々と灯された赤き軌跡も、空から舞い落ちてくる純白な花びらがいずれ覆い隠してしまうことだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ