January
「また、鎌倉にこよう。」
そういって、別れた。
「今度の日曜日、鎌倉、どう?」
京子にLINEを送る。
「どこ?鎌倉のどこ?」
ミステリーツアーじゃダメみたい。
「七里ヶ浜」
「七里?珊瑚礁?ビルズ?アマルフィ?」
「食はまかせる。」
「ゆずの夏色にでてきた坂に行きたいの」
「自転車でいくの?」
「えっ!」
「やっぱり自転車でしょ」
待ち合わせは江ノ島駅前。
京子は自宅からクロスバイクでここまでやってきた。
最近手に入れた真っ赤なクロスバイクに乗りたくてしょうがないらしい。
私は、駅前で自転車を借りる。
このあたりの地理に詳しい京子のあとをついていく。
しかし、今日は陽気がいいとはいえ、1月の風は自転車には厳しい。
小動で海にでる。
小動って、たしか太宰が……
腰越。
鎌倉高校前。
ずっと前に一度だけ歩いた道を自転車で進む。
もうすぐ、七里ヶ浜高校のはず。
その先の道が夏色の坂。
「ここを曲がるよ。」
「えっ?」
行合橋と書かれた交差点。
七里ヶ浜高校はもう少し先のはずだ。
「坂をのぼるより下ったほうがいいでしょ。」
どうやら、夏色の坂をのぼって、同じ坂を下ってくるのではなく、他の道からのぼり、坂を下るということらしい。
「まかせるよ。」
最後は、自転車を押してのぼる。
珊瑚礁には、既に多くの人が並んでいた。
「もう、結構、並んでるね。」
「並ぶの?」
「やめとく」
「桜のプロムナード」の表示をみて、”桜の季節はきれいなんだろうな。”と思った。
青い澄んだ空の下、遠くに海が見える。
「いくよ~」
「おおっ!」
思わず、口ずさみたくなる。
この長い長い下り坂を・・・
ブレーキーいっぱい握りしめて、坂をゆっくりゆっくり下っていった。