時が過ぎて
「今度の日曜日、あの海に行かない?海人連れて。」
「日曜日か。朝、ちょっと用が入ってる。直接向かうから海人を連れて先にいっててくれないか。」
「あのカフェで待ち合わせしない?海人が生まれてから、行ってないでしょ。」
「ああ、じゃあ、そこで。昼ぐらいにいけると思う。」
渚橋近くのお気に入りだったカフェ。
10年前の秋に偶然見つけて、何度か通ったカフェ。
横にいる彼(今は旦那さん)は10年前の5月に何度も立ち寄ったらしい。
付き合い始めてからは、2人で立ち寄ったり、待ち合わせしたりしたカフェ。
「いらっしゃいませ。」
「ご無沙汰しております。」
「お子さん?」
「ええ。」
「大きくなったねえ。ご主人は?」
「待ち合わせです。」
「どこに行くんですか?」
「この子を連れて磯遊び。ほら、海を歩けるってやつです。」
「何年前だっけ?」
「10年前です。」
「そうか、もう10年。時が立つのって早いね。」
「いらっしゃいませ。」
「こんにちは。ご無沙汰しております。本当はゆっくりしていきたいんだけど、潮が満ちてくると磯遊びできないので。また今度きます。」
「お待ちしてますね。」
「ごちそうさまでした。」
「いってらっしゃい。今度は3人でゆっくりときてくださいね。」
「はい。」
「悪い。ちょっと遅くなった。」
「急ぎましょ。」
「海人、海を歩けるんだぞ。」
「わーい!」
「パパ、取れたよ。」
「海人、取れたか。美鈴にもみせてやりな。」
「うん。みせてくる。」
10年前。
そう、私たちは、大崎公園で三度、出会った。
「今度、海を歩いてみたいな。」
「5月だね。」
「5月かあ。」
そして、9年前。
この海で僕たちは、四度、出会った。
「ようやく会えた。」
「うん。」
「ずっと探していた。」
「うん。」
「この1年あまりの間、ずっと探していた。」
「うん。」
4度出会ってからは、2人で一緒にいろんな場所にでかけた。
海人が生まれてからは、3人で一緒にいろんな場所にでかけた。
そして、3人でこの海にやってきた。
「しかし、よく、4度も会えたもんだ。偶然ってすごいな。」
「それって、偶然じゃないよ。」
「えっ。」
「必然。きっと、必然だよ。」
9年前のあの日と同じようにタイドプール(潮だまり)は、太陽の光でキラキラとしていた。
「美鈴。」
「なに?」
「大崎公園に寄っていくか。」
「うん。富士山みえるかなあ。」
「みえるといいね。」
「この海とあの公園の話、海人にしたいな。」
「まだ、海人にはわかんないよ。恋をする年になったら、話をしようか。」
「海人に恋はわからなくても、私たちにとって大事な場所っていうのは伝えられるんじゃあないかな。」
公園の坂をのぼり終える。
「海人、富士山みえるぞ。」
「どこどこ?」
「あそこ。」
「パパ、見えないよ。」
「心が綺麗な人だけしか見えないんだよ。なんだ、海人、見えないのか。」
「ママ、見える?海人は見えないよ。」
「パパも見えてないのよ。でもここね。すごく綺麗に富士山が見える時があるの。」
「そうなの?」
「ごめんな、海人。この場所はパパとママにとってはすっごく大事な場所なんだ。」
海人は首をかしげる。
「ここがないと海人は生まれていないの。そのうち、教えてあげる。ベンチに座りましょ。」
3人でベンチに腰掛けた。
私は、バックパックからおにぎりを取り出した。




