2nd May
「美鈴、明後日、空いていないか?」
「どうしたの?」
「お前に教わった海に行こうと思って。そしたら、うちのが風邪引いちゃって。陸人、すごい楽しみにしてるんだよ。一緒にいかないか?」
「一緒にって。義姉さんの代わりでしょ。いいわ。天気もよさそうだし。」
正直、今年は、あの海に行こうかどうか迷っていた。
陸人は、車の後部座席ではしゃいでいる。
「美鈴。」
「なに?」
「いい人、いないのか?」
「何、急に。」
「あいかわらず、いないか。」
「そ、そんなこと・・・」
あえるといいな。
海は既に多くの家族づれで賑わっていた。
「陸人、遠くにいくなよ。」
「は~い。」
「アイツ、ちゃんと人の話、聞いてるのかね。」
「パパ、とれたよ。」
「おお、とれたか。美鈴にもみてもらえ。」
「みすず~。」
陸人は私のことを呼び捨てにする。
「どうしたの?」
「捕まえた。みてみて。」
陸人が手を引っ張る。
「ほらほら、そんなに急がない。」
太陽が眩しい。
右手で太陽の光を遮る。
「美鈴。」
兄貴が声をかける。
兄貴の方向に振り向く。
えっ!
「こ、こんにちは。」
「こんにちは。」
「結婚してたんだ?」
「えっ。この子。兄貴の子。」
「美鈴、知り合いか。」
「うん。」
「そうか。陸人、こっちにこい。」
「義姉さん、風邪で。陸人、すっごく楽しみにしてたから。義姉さんの代わりに。だって、このタイドプール(潮だまり)を薦めたの、私だし。」
少し、はにかんで答える。
「そうなんだ。」
「ようやく会えた。」
「うん。」
「ずっと探していた。」
「うん。」
「2年間、ずっと探していた。」
「うん。」
うんしか、言えない。
「去年の5月、何度もここに来たんだ。」
「ごめんなさい。去年の5月は、ずっと入院していたの。来たかったんだけど。」
携帯がなった。
「うん。うん。わかった。」
「兄貴からだった。陸人、調子悪そうだから、先に帰るって。私の荷物、階段のところにまとめておいておくからだって。」
「陸人君、大丈夫なの?」
「たぶん、陸人は元気だと思う。陸人が調子悪いっていうのは、兄貴のうそ。うそっていうか、兄貴のやさしさ。」
私たちは、ビーチサンダルのまま、大崎公園に向かって歩き始めた。
「富士山みえるかなあ。」
「どうかな。」
潮だまり(タイドプール)は、太陽の光でキラキラとしていた。




