Spring
春の風が吹く大崎公園。
江の島の向こうに富士山。
最後にここで彼と会ってから、1年余り。
青い空に白いオオシマザクラが映える。
何枚かの写真を撮り、逗子へと向かう。
あっ!
潮が引いてる。
5月にならないと、歩けないんだと思ってた。
不如帰の碑まで歩けるんだ。
渚橋の近くのカフェ。
ここにくるの、何回目かな。
店主との会話が楽しい。
「大崎公園のサクラ、綺麗だったよ。」
と他愛もない会話。
「そうそう、海を歩けたの。びっくり。前から海を歩いてみたいなと思っていて。」
そんな会話が始まった。
少し”ぼかし”をいれてだけど、去年のことを話した。
店主が言う。
「去年の5月のことだけど、何回も来てくれたお客さんがいて。それも毎回来る時間が違っていて。」
「それで。」
「一度、話かけたことがあったの。だってうち、他にお客さんいないときもあるじゃあない。」
『いつもきていただいてありがとうございます。どうして、ここに来る時間違うんですか?』
『海が満ちてきたから。』
『海が好きなんですね。』
『いや、ちょっと人を待っていて。』
『約束ですか?』
『いや、約束じゃあなくて。なんだろ、期待かな。日時は決めてなくて。5月としか言っていなんだ。』
『5月っていうだけの待ち合わせ。それ、ロマンチックですね。』
『会えたらね。でも会えていない。』
彼のことだと思った。
「そのお客さんの連絡先とかわかります?」
「そのお客さん、5月が過ぎると、来なくなっちゃたの。」




