プロローグ的な
気分で書いたり書かなかったり
俺の名前は笹本勇真。月ヶ丘高校の1年C組に席を置かせてもらっているしがないふっつーの生徒だ。
他の生徒と違うところって言うと親戚が同じクラスに居る事ぐらい。あと一つあるけどそれはまた後で追い追い説明するとしよう。あ、身長はだいたい180くらいある。そんで現在帰宅部。以上!
「考えてて悲しくなってきた」
「何が?」
「なんでもねー」
そんで俺の隣に居るのは島原智哉。爽やかな中の上フェイスの持ち主、バスケ部所属。先月から彼女持ちの友達。リア充め。
島原くんが首を傾げていたけど、知られたくないから言わない。
と、ポケットからケータイを出そうとした。
しかし、
俺を嘲笑うが如くポケットの中は空っぽ。つまり、
「ケータイ忘れた……」
「どこに?教室?取ってきてあげよっか?」
「いや、いいよ。島原くんは部活あるっしょ?自分でとってくるから大丈夫」
「分かった。じゃあ、また明日な、ササ!」
ニコッと笑って去って行く島原くんに俺は何とも表現しがたい表情を浮かべて手を振った。うん、その笑顔は彼女に向けたげてよ。俺が辛い。河野さんに睨まれる俺が辛い。
「つっても、直そうとしないんだよなぁ」
クルリと方向転換して教室へと急ぐ。机の中にケータイが入ってるのが見つかると先生に怒られちゃうしなぁ。
しばらく早足で歩くと教室の前に着いた。夕日の鮮やかな赤が窓から差し込み、いつもと違う雰囲気が教室の中を満たしていた。
俺は特に躊躇することなくドアを開いた。
「ひゃっ!?すいません、先生。まだ掲示は終っ……あれ?」
俺に向かって顔も確認すらせずにペコペコと頭を下げていた女の子は先生じゃないことに気づいたらしく不思議そうに首を傾げる。
えーと、確か委員長の西野綾音さんだったっけか?ボブヘアーでアーモンドみたいな形の瞳。身長は平均くらい。あとは、よく知らない。あんまり会話しないし。
「先生じゃないから、気にせず作業続けていいよ」
「あ、うん。えーと、ゆ……笹本くんはどうしたの?忘れ物?」
「ケータイを忘れてさ。バレたらヤバいじゃん?だから、取りに戻ったんだ。西野さんは?」
「あたし?あたしは委員長だから先生に、これ頼まれたからやってるとこ。まだ終りそうにないんだけどね…」
疲労感が何となく伝わるくらい大変なようだ。まあ、5、6限目は体育だったし。やむを得ないんだろう。さて、どうしたもんか?手伝うか?うーん……変に思われないかな?
「あのさ。よかったら手伝ってもいい?」
「いいよいいよ。あたしがやっとくから!それに笹本くんは委員じゃないでしょ?」
「つってもさー。西野さん疲れてるっぽいし、2人掛かりなら早く終わるだろ?じゃあ、二人でやった方がいいっしょ」
「う…そぅだけどさ。迷惑じゃない…?」
「別に。予定つったって買い物だけだし」
「ぅ、う~ん…」
悩んでるっぽいけど、関係ねぇのでこそっと作業をやらしてもらう。片手に画鋲をいくつか持って、紙を固定してから、リズム良く画鋲を刺していく。
西野さんが届き辛そうな高さのものを全て終らせ様と最後の一枚を掲示板に貼ろうとした時、西野さんが復活した。
「あと、ここだけやっとくから残りは頑張れよ」
「え?あ、あれ?」
「あっ、貸し1つって事でヨロ」
「え!?無償じゃないの!?」
「そんな善人じゃないのよね。俺は」
ニッと笑ってみせると西野さんは、うぅ…今月ピンチなのにと呟いてうなだれた。
はっはっはっ、世の中そんな甘かねぇのさ。……まあ、俺自身も財布がピンチだから言っただけど。
「ジュ、ジュース1本!」
「オッケ。交渉成立な」
「うぅ…お金がぁ」
「まっ、代わりと言っちゃなんだけど全部俺がやっとくよ。西野さん部活あるっしょ?」
「う、うん。ごめんね?」
「いいって事よ。人間頼り頼られ、だぜぃ?」
おどけた調子で言うと西野さんは、やっと少し笑ってくれた。
まだ、申し訳なさそうな表情でいる西野さんに早く行けとジェスチャーすると、また、ごめんね?と謝ってから彼女は教室を出ていった。
まあ、ただ見送る訳じゃなく、プスプスと画鋲を刺しながらだけど。
所々、画鋲が刺さりにくい場所があった事以外、特筆すべき点もなく普通に終わって普通に先生に報告して終了。
なんだかあっさり過ぎて物足りない感も否めないけれど、何事もなく終了した事は有り難い限りだ。
さて、この際だから先延ばしにした事を伝えようと思う。特殊と言うか、かなりオカルトチックな話になってしまうが、幽霊を信じるだろうか?
今回は信じていると前提して話す。俺は、世間一般的にみて憑かれているのだ。女性の霊に。だが、別に危害を加えられた覚えもないし、どちらかと言えば護って貰っている言っていい。だが、守護霊というわけでもない。ただの幽霊が憑いて、何故か助けてくれる。
あと、意思疎通もなんとか出来る。周りに人がいない事が前提条件だけれども。そんなわけで俺には彼女が憑いている。
彼女には名前がない。だから、俺が彼女の事を呼ぶ時は“君”だとか曖昧な呼び方になってしまう。そこまで特殊な能力は持ち合わせていないのだ。
ただ俺が笑いかければ、彼女は春の陽気の様な温かい笑みを返してくれる。
まあ、俺が喋らない限り彼女の存在はばれないから、平穏な生活を享受させてもらっているわけだ。
「さてと、早く帰らないと父さんがいじけるなぁ」
少しめんどくさそうに呟くと、俺の数歩先をふよふよ進む彼女が苦笑を零した。父さんは子離れとゲーム離れの出来ないところだけ除けば、かなり優秀な人だ。建築系の仕事に就いている。老けてるけど。
母さんは、俺が中学2年の時に再婚した新・母で歳がなんと今年で27。姉だわ、年齢が姉だわ。あ、後、いい年して夫婦仲は異常な程ラブラブだ。甘ったる過ぎて胸やけするかと思う程だった。
と、我が笹本家のラブラブ夫婦の話をしている間に家に着いた。
さあさあ皆様、ショータイムだ!
「逝くぞ?」
神妙に頷く彼女。俺はドアを開いた。
「あーくん。晩御飯できたわよ?」
「みーちゃんの御飯は何時も美味しそうだなぁ」
「ヤッダーあーくんたら、褒めてもチューしかあげないわよ?」
「はっはっはっ、可愛いなぁもう」
「それにしても勇真くん遅いわね?」
「早くゲームやりたいんだけどなぁ!」
「勇真くんなんかより私とやりましょうよ!」
そして、この扱いである。もう慣れたからいいけど…
つーわけで、父さん改めクソ親父が居る時はこんな感じである。休みの日は豹変するけれど、それは別の話と言うわけで。
「ただいまー」
「うおぅぉおおおっ!勇真ぁあああ!遊ぶぞぉおおお!!」
ただ、この父さんを無下に出来ないのだ。前母は俺が産んだ時に死んでしまったらしい。元々体が弱く病気がちだったそうだ。
そのため、父さんは俺を男手一つで育ててくれた。だが、仕事のせいで中々俺と遊ぶ機会がなかった。だから、その時の分まで!って感じなのだ。本当に息子中心に考える男なんだ、父さんは。
「あぁ、何して遊ぶ?」
「そうだな!格ゲーやろう!格ゲー!」
「おかえり。勇真くん、遅かったけど何かあった?」
「先生の手伝いをしてた。連絡すべきだったな。ゴメン、美穂さん」
ニコニコ笑ってゲームの用意を始める父さんと入れ代わりで来た母さんにすまなそうに言うと、ニッと笑って「いいからそういうのは」と優しく言った。
俺は母さん――美穂さんを、“母さん”と呼んだ事はない。まだ、慣れていないのも原因ではあるが、美穂さん自身が、まだそう呼ぶのは待ってくれと言ったのが一番の理由だ。どうやら、美穂さんは自分で自分をまだ俺の母親だと認められずに居る様で、そのへんの踏ん切りがつくまでまだダメなようだ。
「まあ、ゲームの前に飯だよね?」
「えぇ。あーくん止めなくちゃ」
「それは俺がやっておくから、美穂さんは晩御飯の用意をして」
「そうね。頼むわ」
俺と美穂さんの会話を聞いて、彼女は優しげに笑う。彼女には美穂さんの思っている事が筒抜けなようだ。
美穂さんにバレない様に、こっそりと彼女に笑いかけ父さんを止める為にリビングへと向かうのだった。