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6話 番長と愉快な?仲間達 前編

3分の1程に削りましたが前後編になっちゃいました。後編は半分程書きましたが、リアルの関係で時間が取れないので火曜日になります。

僕の危機を救った後、“番長”の仲間達は犬と大狼を引き離し、一匹の犬に対してプレイヤー5人が盾で囲み、残りの3パーティーが大狼の対処をする。


「大丈夫か?立てるか?」


“番長”がこちらに手を差しのべ、優しく声をかけてきた。逃げる前は下ろしていた前髪を今はオールバックにしている。多分戦闘で乱れていたんだろう。

僕は声をかけられてから自分の体勢を思い出す。


「……うわっ!」


すぐに上体を起こし、“番長”の手を───いや待て、本当に手を取って良いのか?泥だらけの手なんて握りたくないだろ。いやいや、あちらから差しのべてるんだから……いやいやいや、世の中にはやらないと白い目で見られるお約束事が……でも、純粋な好意だったら……

と、出したり引っ込めたりしている僕の手を“番長”がグイっと引っ張りあげる。


「あっ!あの……ど、泥が!今、手、汚い、です……」

「あ?泥?……あぁ、こんなの気にしなくて良いって。一人で戦い抜いた手が汚いわけないだろ」


うーん、この髪型、言動、細マッチョの体型といい、やっぱり“番長”としか言いようがないな。『まるで───』のあとに『“番長”にしか見えなかった』と続いてしまう程の番長っぷりだ。人当たりが良くて、仲間から慕われるタイプの。

……にしても何かね?どうして、こうも僕の周りには乙女ゲーの如く“臭い”セリフをさらっと言う男が多いんだろうね?攻略されてるんだろうか?


「すまないな。本当ならもっと早く来れる筈だったんだが、ちょっと揉めてな。一人ずつ説得(・・)するのに手間取っちまった。本当にすまなかった」

「い、いえ、間に合ったから大丈夫です!」


深く頭を下げる“番長”。やはり番長だ。


「そ、それより戦わなくていいんですか?」

「大丈夫だ。あれくらいなら十分倒せる」


詳しく聞いてみると、5パーティー25人のグループで挑んだところ、大狼と30匹くらいの犬がお出迎えしたらしい。一体一体は弱いが、1人に対し1匹で対応し、残りで一人ずつ確実に落とす、陣形を崩すなどの作戦を取ったという。数が少ない今なら、まず負けないらしい。僕1人のときはAIが入ってるのか疑問に思うレベルの作業ゲーだったので、恐らく人数によって難易度がかわるのだろう。また、犬を全部倒すと、大狼が新しく森から呼ぶらしい。そのため、全滅させず、盾で囲んでいるという。


「βのときには犬の数も6匹程で、新しく呼ぶことも無かったんだがな……」

「へぇぇ」


運営が完全に殺しにかかっている事よりも、もう少しで援軍を呼ばれるところだった事よりも、この人がβテスターだった事実の方に驚きだわ。


「……それにしても、凄いな。15匹は残ってたろ。それを1人で2匹まで減らすとは……お前戦闘スキルなに取ってるんだ?」

「えっと、【速度上昇】だけ……です」


マジかすげえな!と驚く“番長”。これでも一応、他のゲームではトッププレイヤーの1人でしたから。


「……初対面の人にスキル構成聞くのは失礼。反省して」


突然やって来た女性が注意する。3人組の1人だ。


「うっ……わ、わりぃ」

「……ちゃんと反省してる?」

「あ、当たり前だろ!!お前は俺のかぁちゃんかよ!」

「……年下だけど?」


うがあぁぁぁ!!と頭を掻き毟る(かきむしる)“番長”。その原因の女性……いや、女の子がくるりとこちらを向く。

真っ黒な、光が反射しないほど真っ黒な、肩まである髪。感情が読み取れない黒い瞳が前髪の奥から覗いている。対称的に血の気の薄い、真っ白な肌と薄い唇、高い鼻。整った顔と言えるが、陰鬱とも呼べるほど暗い印象が全てを台無しにする。僕と同じくらいの、恐らく160前後の身長に、間違いなく貧相な胸。小ぶりなお尻。細く長い手足。スタイルも良いが、やっぱり雰囲気が悪い。夜に会いたくない感じ。


「……ねぇ、さっきから失礼なこと考えてない?ヒロインに対して使わない言葉使ってない?」

「い、いえ!」

「……そう?」

「く、クールビューティーと……」


視姦していた僕を妙に具体的な突っ込みをする少女。嘘は言ってない……つもり。ちゃんと褒めてるもん。


「……じー」

「うぅ……」


い、言ってないもん!!


「そう見てやんな。お前と違って大人しい子なんだよ」

「…………大人しい?あんな戦い方するこの子が?」

「ああ。事実、俺の顔を一度たりとも見てねぇ」


え?結構見てると思うんだけど……。困惑して“番長”の方を向く。


「……確かに。貴方が不良っぽいから?」

「多分な。あと、不良じゃなく“番長”な」

「……大して変わらない」

「いや、ちげーよ!?」

「……細かい男は嫌い」


再度、頭を抱える“番長”。僕は周りから、あまり他人の顔を見てないように見えるのか。


「はぁ……。俺ちょっくら行ってくるわ。他の連中引っ張ってきたの俺だし、ストレス発散になるし。」

「すみません、ぼ、僕のせいで……」

「逆だ、逆。俺らがお前に助けられたんだよ。んじゃ、行ってくるわ」

「……行ってらっしゃい」


そう言うと、大狼の輪の中に加わりに行った。走り去る姿も“番長”だ。

……ところで、二人っきりっすか?一人じゃダメっすか?なんか見られてるんですけど?すこしづつ近づいているんですけど?触られてるんですけど!?


徐々に大胆になるクールビューティーの魔手が胸と太ももに差し掛かった時だった。


──アオオオォォォオン


狼の咆哮が辺りに響く。すわ増援か!?と武器を構える。


──巨狼“ウォセ・カムイ”の討伐により、村が解放されました。イベントを終了します。繰り返します…………


というアナウンスが流れ、肩の力を抜く。どうやら大狼、いや、巨狼を倒したようだ。いいのかな?ここで喋ってただけなんだけど……。


「……終わったみたい」

「みたい、じゃないよ。なにサボってんだよ」


“番長”と供に現れたのは3人組最後の1人、委員長キャラのメガネ君。いかにも、くいっキラーンってしそうな……って、キラーンは無かったけど、今、くいってした。くいって。


「そうだぞ。その点俺ってすげーよな。最後は戦ったもん」

「前半サボってんじゃねーか」

「サボったんじゃねぇ。信用してっから、あえて手を出さなかっただけだ」

「……物は言いよう」

「事実だ」

「お前もなー」

「……私は、見守ってた」

「はいはい……ところで、そこの彼女」


この3人、とても仲が良さそうだ。リア友だろうか?それとも3人ともテスター?


「えっと……君…………貴女」


いや、他人の関係を無闇に詮索するのは良くない。反省。


「聞けよ!お前だよお前!」


ん?メガネ君が必死に叫んでいる。後ろに何かあるんだろうか。振り向く。森だけだ。つまり、メガネ君には僕には見えない何かを、この仮想空間で見えているってことで……やだこわい。


「わざとだ!絶対わざとだ、これ!」

「ぷはっ」

「……くすっ」


地団駄を踏むメガネ君。吹き出す“番長”。微笑するクールビューティー可愛い。え、なに?どゆこと?


「はぁ……もういい。彼女にお礼をしたいんだが……」

「あー、確かに助けて貰った恩も、巨狼を倒す手伝いをしてもらった恩もあるからな」

「……賛成。」


3人が僕を見る。どうやら僕に決めろ、ということらしい。今してほしい事はないけど、その前に言っておかなきゃ。


「あああの、ぼっ、ふぉくは、お、おおおおとこでひゅ」


「なに言ったか分かんねーよ」

「多分、自分の性別は男だと……」

「……初期装備見る。女性専用のホットパンツにニーソ。絶対領域とニーソの食い込みが美しい。また、ホットパンツという絶対パンチラしなさそうで、しかしふとした瞬間見えてしまいそうなエロさを醸し出す、お尻の形が強調される特殊装備の魅力をお尻から太ももまでの曲線が余すとこなく発揮している」

「俺はミニスカしか絶対領域と認めないが……その心は?」

「……臀部だけでここまで魅力的な子が男の子な訳がない」


アバターは女の子だけど現実(リアル)は男の子なんです!と言いたいが、実際に口に出るのは「あば、あばば、あばばばば」だけ。なぜだ。


「壊れてんぞ。どうすんだ」

「治るまで放っておくしかないんじゃない?」

「……おたおたしてる。可愛い」


何故思ったことが口にできない!人口か!人口密度か!?

そんな僕をよそに、3人は仲間達とアイテムについて話し合う。1つだけ落とすレアアイテムがあり、それをどうするかを確認しているようだ。僕もアイテム欄を確認する。


薬草        21

野良犬の皮(小)  17

野良犬の皮(中)   5

野良犬の毛皮(小) 12

野良犬の毛皮(中)  6

   ・

   ・

   ・


そのあとも巨狼のアイテムが同じように続いた。残念ながらレアアイテムはドロップしなかったようだ。ドロップしたプレイヤーがクールビューティーにプレゼントしている。

巨狼の剣足というそのアイテムは、一見ただのブーツだが鞘が付いており、そこに(つか)と刃が一体となった無骨なナイフが入っている。ステータスアップ効果はないものの、ナイフを手放すと鞘にナイフが新しく補充されるらしい。巨狼の能力を顕現したものだ。

チートじゃね?と思うかもしれないが、ナイフを手に取るには足を止め、屈むようにしなければならないため、隙が出来やすい。武器の耐久値と落とした時の心配をする必要がなくなるだけだ。それでも十分強いが。

最初は固辞していたが、プレイヤーに押しきられ、結局受け取ってしまったクールビューティー。申し訳なさそうにお礼を言う。ええ子や。


アイテム分配を終えたプレイヤー達が村に入る。高さ1m程の木の柵が村を囲み、入り口は柵がない。所々、大きな石が置いてあり、それが結界を維持しているのだろう。入り口に入ると、金属の扉を見つける。どこ○もドア的なこの扉は、ワープ装置だ。試しに触れると行き先を指定するよう要求される。やはりワープ装置だ。

この村は規模としては小さい。土の地面に木の家。10ほどの家と小さな教会と宿が一軒ずつ。武器、防具、道具屋を兼ねた店が一軒。見事にファンタジーの村、で最初に思い浮かぶような模範的な村だ。



「落ち着いたようだな」


村を眺めていると、“番長”とクールビューティーがやって来た。


「とりあえず、宿に行かないか?」


ナンパだった。


「……ナンパ?」

「ちげーよ!?」

「……随分と直球」

「だから、ちげーって!!」


クールビューティーとシンクロした。


「あ、誤解すんなよ?そんな気持ちはこれっぽっちもないからな?」

「……失礼」

「どうしろと!?」

「あ、あのぅ、どういったご用件ですか?」

「あぁ、すまん。お礼もしたいし、祝宴ついでに食事でもしながら話さないか?」

「……ナンパじゃん」

「お前、ちょっと黙れ」


成る程。そういう事なら行こうじゃないか。

僕は二人と一緒に小さな宿に入った。



巨狼の剣足は所謂ブーツナイフですが、ブーツと鞘が一体化しています。所々巨狼の銀の毛皮を使った黒いブーツを想像してます。

後編の後、今まで削った部分で単体でも読めそうなもの(クールさんの魔手の件とか。いけそうなら戦闘も)と他の視点からのを幾つか閑話にまとめるつもりです。

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