時計
君から貰った時計、覚えてるかい?
ほら、僕の誕生日にくれた時計さ。
君が僕にくれた最初で最後のプレゼント。
君の思いがつまっているプレゼント。
僕は、愛用していたよ。凄く大事にしてた。
結局僕たちは別れてしまったけど、
二人の気持ちは変わってしまったけれど、
君がこの時計を買った時は、僕のことを思ってくれていた。
僕はそう考えてる。
でも、その時計が壊れてしまった。
突然画面が消えてしまった。
時計屋に持っていって、一度は直ったものの、
また壊れて動かなくなった。
僕は少し悲しくなって、もう一度修理を頼んだ。
でも、それは修理じゃなかった。
メーカーに送って、中のムーブメントを全部交換したんだ。
もう、この時計は、君のくれた時計じゃない。
外見は同じだけど、僕がつけた傷も残っているけれど、
中身は全く別のもの。君がくれたのとは別のもの。
僕は少し後悔しているんだ。
時計を修理に出すべきじゃなかった。
君がくれたままの形で、君が僕にくれた時計のままで、
静かに引出しの中にでも眠らせておくべきだった。
君と別れてもう何年だろう?
そろそろこの時計とも、別れるべきだったのかもしれないね。
でも、時計は直った。
僕はこの時計、使うよ。
でも、君のことは、あまり思い出さないだろうね。
それって、どういう事なんだろうね。
大人になるって、こういう事なのかな。
もし、そうだとしたら、少し哀しいね。