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一人百物語

滑空

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/18


夏の夜、二階ベランダから自宅裏の川をぼんやり眺めていた。

川は車道三車線ほどの幅で、対岸にはマンションが建っている。

その暗い川面を背景にした視界のすぐ目の前を


何か白いものがよぎって行った。


それは、白いYシャツを羽織った若い男だった。

男はYシャツ一枚きりの姿で前ボタンはかけておらず、シャツが大きくはだけて裾からはにょっきりと素足がむき出しになっていた。


その姿で、男はムササビの様に宙を滑空していった。大きく広がったシャツの裾が風にパタパタとはためく音がかすかに聞こえた。

そのまま、男は暗い川へとダイブしてゆき…

当然川面には水飛沫があがると思われた。

しかし。

川面には飛沫もあがらず、静かなままだった。


男の姿は消えていた。



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