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嫉妬の勝利

作者: 一色 サラ
掲載日:2026/05/24

 斎藤さいとう明日香あすかは給湯室に入ろうした時、そこから誰かの会話が聞こえてきた。

「ねえ、小宮こみやさんって皆川みなかわさんに、告白するつもりなの?」

「そのつもりだけど。」

「でも、あの人、斎藤さんと付き合ってるって噂でしょう。」

「知ってるけど、あの女より私の方いいでしょう。」

「まあ、斎藤さんって地味だもんね」

「そうなのよ、存在感ないっていうか。」

「なんか、分かるわ」

 給湯室から人影が出てきた。立花たちばな柚希ゆずきだった。隠れる暇もなく鉢合わせてしまった。

「斎藤さん、今の会話、聞こえてたの?」

「はい」

気まずい空気が、漂っている。給湯室から小宮カスミも出てきた。

「ねえ、皆川さんと別れてくれない?」

「嫌です」

「あっ、そう。まあいいわ。」

小宮は、私を睨んで、先に出てきていた立花と、一緒にオフィスへと戻って行った。

告白をしたところで、賢治が私と別れるはずはないと確信はあった。

 自分のデスクに戻り、少し離れたデスクに座る小宮に視線を向ける。小宮はコールセンター業務中で、仕事用の声である高い声が聞こえてくる。

「斎藤さん」

後ろから声が聞こえてきて、振り返ると立花がメモ用紙に『別れてほしい』と紙を私のデスクに貼りつけて、「お願いね」と、その場を離れて行った。ただ、それを破って、足元にあるゴミ箱に入れた。

パソコン画面から、受信対応のコールが鳴る。

「はい、こちら、ジュラインセンターです。」

テレビショッピングで商品の購入手続きの対応を始める。その間、どこかで、小宮の視線を感じていた。


『別れよう。もう連絡してこないでくれ』

 賢治からメッセージが、スマホのロック画面に表示されていた。電車の中で、叫びたくなっていた。何なのだろう。給湯室での小宮と立花の話を立ち聞きして、2日が経とうとしている。その間、賢治に連絡をしたが、仕事が忙しいから会えないという連絡があった。

 小宮は告白をしたのだろうか。画面を睨みつけながら、小宮への怒りが込みあげた来る。あの女に、文句を言いたい。

 電車は駅に停まり、カップルらしき男女が乗車して来た。

「何でお前まで、乗って来るんだよ」

「だって、大ちゃんが好きなんだもん」

 女が男の腕を掴んで、胸に頭を押し付けている。この電車内に2人しかいないと思っているのだろうか。

「キモイって、くっついてくるなよ」

 男も怒ってはいないので、ただの馬鹿カップルの会話でしかない。その状況でいることで、どこか賢治への怒りがこみ上げてくる。何度かメッセージを送ったが、既読になることもないし、電話をかけてもすぐに切れる。すでに非通知設定をされているようだった。最寄り駅はまだなのに今は電車に乗っていることが、どうしてもできなくて、一旦、次の駅で降りて、次の電車を待とう。ベンチに腰掛けて、スマホを眺める。

「斎藤さん」と声が聞こえてきて、見上げると、小宮だった。なんで、ここにいるのだろう。

「私が、皆川さんに告白したと思ってるでしょう」

「はい、告白したと思ってますよ」

いかにも不愉快なのこと伝えるように、怪訝な声を出すように言った。

「フラれたわよ。私は」

「そうなんですか」

こんなことをわざわざ言いに来たのだろうか。

「そういえば、なんで、小宮さんがここにいるんですか?」

「斎藤さんが駅を降りたからよ」

後をつけらえていたようで、気分が悪い。

「皆川さんって、告白して付き合うことになったのは立花さんよ」

脳が全く機能しなくなった。

「それが言いたかっただけよ。お互い、立花柚希にだまされたわね」

それだけを告げて、小宮は電車にホームから出て改札口の方へと消えて行った。


 次の日、会社に行くと皆川は異動して、立花はいつもと変わらない態度で振舞っていた。小宮は昨日付けで退職していた。

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