縫われるべき口
今回は今までの短編と異なり、陰鬱な表現があります。
(暴力などの表現はなし。)
ご留意ください。
私が大切な家族を失い心の底から悲しみに沈んでいたあの日でさえ、お前は空気も読まずに一方的に喋り続けていた。
その騒がしさは胸をえぐるように不快で、なぜ黙るという選択肢を持たないのかと呆れ果てたものだ。
お前は自分の会社に誇りを持っているようだが、独立の一つもできない時点で無能だと私は考えている。誇りなどと胸を張る前に、己の実力を省みるべきだ。
さらに以前、お前の娘の写真を本人の許可もなく唐突に見せられたことがあるが、その非常識さには呆れるばかりだった。そもそも他人に勝手に家族の写真を見せる行為は、プライバシーを欠いた愚行に等しい。
そして正直に言えば、その子はお前によく似ており、容姿に恵まれていないと感じた。可哀想だとも思った。
お前と会うたび、醜い容姿を目にすることになり、不愉快極まりない。特に、黄ばんだ歯から吐き出される言葉には臭気すら感じ、耳だけでなく心まで汚されるようだ。なぜそこまで無自覚でいられるのか理解に苦しむ。
願わくば、二度とその口が開かぬよう、縫われてしまえばいいとさえ思ってしまうほどだ。
沈黙は美徳であると知ることすらできないのなら、せめて他人の痛みに寄り添う心くらい持ってほしい。だがそれが叶わぬのなら、せめて私の前から消えてくれと切に願う。




