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デキる上司と秘密の子育て ~気づいたらめためた甘々家族になってました~  作者: コイル@オタク同僚発売中


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仁菜の誕生日に結んだものは


「誕生日パーティーきたぁぁぁぁぁ!!」

「……朝からすごい」

「仁菜ちゃんがお姫さまになる日がきたぁぁぁぁぁぁ!!」

「とんでもなくうるさい……」

「ママ早く、もう早くしないと今日が終わっちゃうの!!」


 仁菜は私の上に乗っかって大騒ぎしている。

 私がスマホを掴んで時間を見る。朝6時……今日が終わるどころか、まだ始まったばかり。

 なによりこども園に行く日より早い、無理すぎる。

 私はそのままスマホを置いてもう一度寝たいけど……今日は一年に一日だけの特別な日なので起きる。

 むくりと身体を起こすと仁菜はもう部屋の入り口に立っていて、


「さ、スタジオアリス行こうか」

「予約は昼過ぎ」


 私は仁菜を抱きしめて、


「仁菜、誕生日おめでとう」

「えへへへへへへ。ママありがとう」


 仁菜は私にぎゅううと抱きついた。

 今日は10月12日。仁菜の誕生日だ。そしてリュウくんの誕生日は次の日の10月13日。

 毎年お互いの都合が良い日に合同で誕生日パーティーをしていて、今年は仁菜の誕生日の今日が土曜日なので、今日することにした。

 仁菜はニコニコと一階に下りて行く。

 するともう起きていたおばあちゃんが紙袋を持って近づいてくる。


「仁菜ちゃん、誕生日おめでとう」

「おばあちゃんありがとう! 開けてもいい?」

「いいわよ」


 言われて袋を開くと、花冠が出てきた。

 紫の花がたくさんあしらわれたもので、仁菜はすぐにそれを頭に乗せて、


「ラプンツェル~~~~!」


 と目を輝かせた。

 仁菜ははじめて見た時から、ラプンツェルが大好きだ。

 髪の毛もせっせと伸ばしていて、髪の毛を編んで肩に置くのを夢にしている。

 好きな色は紫で、来年から使うランドセルも紫色で、パイピングは黄色……まさにラプンツェルだ。

 私はおばあちゃんの横に行き、


「あんなの通販で見たこと無い。どうしたの?」

「デイサービスでみんなで作ったんよ。造花の作り方をやったからね、これは作れるやろって」

「え~~すごい、あれ手作りなの?!」

「ええやろ。ラプンツェル皆で見ながら作ったのよ、楽しかったわ」

「ありがとう、おばあちゃんー!」


 私が横に座ると、おばあちゃんは「仁菜ちゃんこっちきてーー!」と撮影を始めた。

 仁菜はパジャマ姿で頭に花冠を付けてクルクルと回っている。着替えたほうが……と思うけど、もう可愛いから良い!

 お母さんから子ども用のお化粧品セット、お父さんからネックレスを貰って、仁菜は朝からテンションが高い。

 ちなみにラプンツェルの衣装は年中、年長で二枚貰っていて、さっそくそれに着替えて部屋中を走り回っている。

 LINEが入って見ると、透さんからだった。


『仁菜ちゃん、誕生日おめでとう』


 そして添付されていた写真にはリュウくんがパジャマ姿でレゴをしている姿が映っていた。

 リュウくんは最近説明書通りに作るレゴにハマっているようで、今年はかなりパーツが小さくて説明書も長いものを買ってもらったようだ。

 この作る手順が書いてあるレゴ……一度作って壊れてしまうと、そのパーツをたくさんあるレゴ入れに入れる……つまり行方不明。

 作って分解して袋にまとめておかないと、取り扱い説明書通りに作ることは出来なくなるんだけど、当然そんなことリュウくんはしない。

 だから最初が一番楽しくて、その後はよく分からないパーツが大量に増える……謎の事態になる。

 透さんはそれを見て「これでテンション上がるのは分かる」と言っていた。

 私が、


『どうですか? 楽しいですか?』

 と聞くと、

『あまりに楽しい。スターウォーズのバカ高いヤツが欲しくなってきた。正直作りたい』


 と返ってきて爆笑してしまった。

 その後添付されていたのは一万越えのレゴで。

 大人のほうがハマるとは聞いてたけど、透さんも!

 そして、


『10時すぎたらそっちにいくよ』

『待ってます』


 と私は返信した。

 家に帰ってきてから誕生日パーティーはうちでするんだけど、年中さんになった時から、リュウくんと仁菜は一緒に行動しなくなった。

 リュウくんが今日行きたいのは、東京ドームにあるとにかくプラレールがある所だ。

 子どもが一日遊べる施設で、遊具、オモチャ、おままごと……色々なコーナーがあるけど、とにかくプラレールがすごい。

 プラレールを一面に広げて遊べる場所があり、リュウくんはそこから離れない。

 一日中そこでプラレールで遊びたいみたいなんだけど、仁菜はそれより「お姫さまの写真!」なのだ。

 だから今日は彩音さんが一日プラレールを作るリュウくんと出かけて、私と透さんは仁菜の写真撮影に向かう。

 リュウくんはレゴも作りたいけど、やっぱりプラレールらしく、もう準備をして家を出るらしい。

 朝に弱いのに今日だけ強い。


 


「おはようございます」

「透くん、おはよう! 仁菜可愛い? 仁菜可愛い?」


 朝10時、家事を終わらせた透さんがうちに顔を出した。

 仁菜は朝ご飯を食べたあと完璧にラプンツェルに変身。

 貰ったお化粧品セットでメイクしておばあちゃんに貰った花冠を付けて指輪もセット。完璧な状態で透さんを迎えた。

 透さんは仁菜の前にひざまずいて、


「おはよう、ラプンツェル」

「おはよう、ユージン。お城に入ってもいいわよ?」


 透さんがなりきるので、仁菜もなりきって笑顔を見せた。

 透さんはそのまま持って来た袋を渡して、


「これが俺からのプレゼント」

「え~~~! 透くんもくれるの?! 仁菜嬉しいなあ」


 仁菜は袋を開けて叫んだ。


「?!?! ラプンツェルの靴!! これだってママが売り切れて全くもう無いって言ったの!!」

「俺の仕事仲間で少し離れた場所にいる人たちがいて、その人たちに探して貰ったんだ。仁菜ちゃんが探してるって聞いて」

「透くん大好き大好き大好きーー!」


 仁菜は透さんにしがみ付いて叫んだ。

 透さんは営業歴が長くて、遠方の店舗の店長に知り合いが多い。

 北は北海道から南は九州まで、色んな店舗の店長さんと仲が良い。

 この靴は話の中で一度も靴を履かないラプンツェルをイメージした裸足のように見えるサンダルで、有名子ども用品店とのコラボ商品だ。

 指先まで見えて可愛いのに足首には紫色のリボンが付いているもので、発売して数時間で完売してしまったレア商品だ。

 透さんは仁菜がそれを探していると聞いて「どこかに無いかな?」と全国の店長さんにお願いしたのだ。

 その結果、奇跡的に中古品用品で新品が見つかったのだ。

 もう絶対に買えないと思ってたのに!

 仁菜は透さんにそれを履かせてもらって、目をキラキラさせて、


「透くんありがとう……もう仁菜、ラプンツェル」


 その浸りきった言い方に私は正直笑ってしまうけど、仁菜は本気なので堪えた。。

 ついに手に入れたラプンツェルの靴を履いて家の中を走り回った。

 長い付け髪を付けているので、部屋の中の埃をすべて集めてる状態……天然モップ……だけど、もう今日は良い!

 30分ほどそれで走り回り、それでも写真撮影に行くためにこの服では家を出られない……というのは分かってるみたいで、ちゃんと普段着……それでもこの前おばあちゃんに買って貰った上品なワンピースを着てきた。


「透くん、どう? 可愛い?」

「お姉さんみたいだね」


 仁菜は靴を買ってもらったのがとにかく嬉しいみたいで、透さんの横で何度もポーズを取る。

 仁菜が透さんに甘えている。私はそれが嬉しくて仕方が無い。

 そして透さんから貰った靴を履いて外でも履こうか、それとも家用にするか……と延々と悩み、結局家用に決めた。

 仁菜はコスプレが大好きで、小物や靴、鞄がまとめてある……仁菜曰く「ドレスルーム」がある。

 まあ床の間に勝手に作ったんだけど。

 そこにラプンツェルの靴を飾って、


「はあ……すてき……。透くん、仁菜ね、これ本当に欲しかったの。鳥取に感謝だよ!!」


 ついには鳥取に感謝をはじめて私は笑ってしまう。

 そして準備をして予約しているスタジオアリスに向かった。

 もうここ三年、私からの誕生日プレゼントはスタジオアリスでの撮影権利になっている。

 撮影は固定で、お着替えが無限という仁菜には天国のような所だ。でも写真料金が毎年すごいことになってしまう。

 でも仁菜が可愛くて……!



「こんにちはー! 仁菜ちゃん、今年もよろしくね」

「うわああああ、新作がたくさんある、新作すごい、どうしよう、仁菜ちゃんどうしよう!!」


 毎年同じスタッフさんが撮影してくれるので、ちゃんと覚えていて挨拶してくれてるのに……仁菜はドレスのコーナーに夢中。

 色んなスタジオアリスに行ったけど、このショッピングモールにあるスタジオアリスの衣装数が桁違いに多い。

 スタジオアリスの壁面にずらりと並ぶドレスに仁菜は大興奮だ。

 こうなると私たちはすることがない。仁菜が「はああああ!」と言いながら叫んでドレスを選んでいるのを見守るだけだ。

 私は透さんの横に行って、


「靴、本当にありがとうございました」

「見つかって良かった。店長に仁菜ちゃんと同じ年齢のお子さんがいるんだよ」

「そうだったんですか」

「だから中古屋によく行くみたいで、探してくれたみたいだ。サイズもちょうどで良かった」


 そう微笑む透さんが大好きで、私は手を握った。

 透さんは甘く握り返して、私に最新型のスマホを見せた。


「! 買ったんですか?」

「私用のスマホなんて何でもいいと思ってたけど、おばあちゃんのズームを見て我慢できなくなった。久しぶりに高い買い物した」


 そう言って透さんはさっき我が家で撮影した仁菜を見せてくれた。

 すごく可愛い仁菜が嬉しそうに踊っている。確かに凄まじく高画質。

 透さんはスマホを持って、


「これからは俺が仁菜ちゃんと菜穂を一緒に撮影したいなと思って。だって菜穂に見せてもらった写真は、全部可愛い仁菜ちゃんだけだ。菜穂が一緒にいない。よく考えたら当たり前なんだよな、だって仁菜ちゃんといて撮影してるのは菜穂だ。それは自撮りしないと入らない。だからこれからは俺がふたりを撮影する。ふたりとも可愛いから、もったいないだろ」

「……透さん……」


 私は嬉しくて透さんの腕にしがみ付く。

 透さんは軽く抱き寄せて、


「菜穂と迎えるはじめての仁菜ちゃんの誕生日だ。1年目。これからもよろしく」

「……よろしくお願いします」

「ママーーー! これどうーーー?!」


 仁菜が持って来たドレスはなんと5枚もあって、多すぎてびっくりした。

 スタジオアリスは何度でも着替えられるけど、当然着替えた分だけ写真が増えて、こっちも撮影してもらってるから……と買う心理になってしまう。

 私は仁菜の肩を持って、


「3枚に絞って」

「それは難しい問題ですね~~」


 仁菜は全力で悩んでドレスを三枚選んで撮影をした。

 もうここからがまた長いけど、スタジオアリスは写真スタジオなので写真はNGだけど動画は撮影できる。

 透さんはずっと仁菜の撮影を動画に納めて嬉しそうにしていた。

 そして撮影が終わり、最後に写真を選ぶ時間になった。

 いつも仁菜は自分が写っている写真だけを選ぶのに、今回は私と透さんも入って撮影した写真を選び、


「これがほしいの!」


 と言った。私は嬉しくて仁菜を抱っこした。

 はじめて三人で撮った写真……嬉しくて大きなサイズで買おうかと思ったけど、私の顔とか体型がな~と控えめサイズにした。

 結局かなりの金額になってしまった。でも今年は仕方ない! 仕方ないの!

 さて、家に帰ってリュウくんも一緒に誕生日パーティーをしよう。

 


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― 新着の感想 ―
 家族写真…  いい記念ですね。
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