I've got the power !
僕はある能力を手にいれた。
ギャグを言うとそれが現実に起きるという能力だ。
学校の帰り、いつも通り友達とふざけあっていた。
「布団が吹っ飛んだ!」
ドゴォォォン!
爆音と共に布団が上から降ってきた。
叫び声も聞こえる。
これが僕の悪夢の始まりだった。
「イカを食べていイカ?」
すると、イカの刺身が自らを食べ始めた。
奇妙で気色悪い光景に、母は口に運んでいた白米を落とし、妹は悲鳴をあげた。
それまで静かだった父が口を開いた。
「ついに来たのか」
その日、父から僕に「三日間ギャグ禁止令」が出された。
どうやら父も僕と同じ年のころ、この能力を手に入れたそうだ。
困り果てて三日間、黙り続けていたらしい。
三日後、能力から解放された父はその反動で親父ギャグを言いまくるようになったらしい。
親父ギャグを浴びるように聞かされていた僕が、自然とギャグを言うようになったのは父さんのせいじゃないか。
そうは言われたもののギャグを言わずに過ごすなんて息が詰まる。
そこで僕は無害そうなギャグは適度に言うことにした。
自分の能力がどういうものなのかを知りたかったからだ。もちろん、ガス抜きの意味もある。
「栗をクリ?」
と言うと栗が目の前に現れた。
でもそれは、ただのイガ付き生栗なので 「甘栗をクリ?」に言い直した。
「アルミ缶の上にあるみかん」
これはジュースを買ったら言うようにした。
缶の材質がアルミの時はみかんが現れる。
みかんは友達にあげた。
三日目、日曜の朝。
今日は家でのんびりしようと思ってたら友達が来た。
とりあえず、みかんと甘栗を出してやった。
いつも通りゲーム対戦をしてたら夢中になってしまって、ゲーム中のキャラのセリフをうっかり読み上げてしまった。
「コンドルがめり込んどる!」
パリーン!
窓ガラスが割れてコンドルがめり込んだ。
「やべぇ! マジでコンドルがめり込んどる!」
パリーン!
二匹目。
「ちょ、待ってー! コンドルが! コンドルが! めり込んどる!」
ズボッ! ズボッ!
三匹、四匹。
でかいコンドルがベッドに四匹もめり込んでいた。
僕はハッとした。
今だ、今あれを言うんだ!
「布団が…吹っ飛んだー!」
ドゴォォォン!
破れた掛け布団からなのか、コンドルのものなのか、大量の羽が部屋中に舞い散った。
解放されたコンドルたちは、割れたガラス窓から悠然と飛び立っていった。
僕はその場にへたりこんだ。
パニックで叫ぶ友達。
朝の光を受けた羽がキラキラと僕に降り注ぐ。
そして、羽毛と綿にまみれた妹が激怒して入ってきた。
あれから僕の能力は失われたが、なぜか手のひらから甘栗とみかんを出す能力が備わってしまったようだ。
あの日々が夢じゃなかったことを確認したくて、たまに甘栗とみかんを出している。
昔から父の机の上にレモンの入れ物がたくさんあるのが謎だったけど、ようやくわかった気がした。
終