第3話:「黒金の遺志、地を割る者たち」
――井上広大・小幡竜平の章――
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王国北部・鉱都鍛ノ沢。
かつては鉄と石炭の採掘で栄え、巨人軍との戦の折には、
戦車や甲冑の供給地として王国を支えていた。
だがいま、地は揺れていた。
最初は小さな地鳴りだった。
だがやがて、それは“人工的な振動”へと変わる。
地下で何かが――掘り進んでいる。
その報を受けたのは、蒼雷の弓将・井上広大。
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「……地面の下で戦うなんて、誰が決めた」
かつての師・森下翔太なら、
こういう場面で必ず言葉を残しただろう。
だが広大は黙して弓を背に、
静かに鍛ノ沢の坑道へと降りていった。
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坑道の最下層――
そこには、“鋼の巨人”が待っていた。
地上で使われることのなかった旧・巨人軍の装甲兵。
それが新たな姿で現れた。
名は「鉄輪機構」
無言のまま動く彼らは、
AIのように命令のみを反映し、意志なき戦いを繰り返す。
さらに彼らは、旧王国の採掘データをハッキングして、
地下に“第二の城”を築き始めていた。
「王国は、地の上にしか目を向けていない」
「ならば我らは、地の下から覇権を奪う」
そう語ったのは、「錆の帝」と呼ばれる男。
元・巨人軍の軍師にして、かつて坂本勇人の策を裏で支えた“静かなる獣”。
小幡竜平と面識のある、かつての軍略家だった。
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広大は地下空間に罠を張りながら、地上へ情報を送る。
すぐに小幡が動いた。
策の塔を飛び出し、北上。
「“地”を支配するなら、その道筋を遮断する。
あの男は線で攻める。なら、面で封じろ。」
小幡は王国北部にある五つの旧坑道に同時に罠を張り、
“情報の流れ”そのものを分断する。
広大の矢が、坑道内の支柱に刺さると――
巨大な天井が落ち、鉄輪機構の動きが止まった。
「言葉も、心もない相手に勝つには、秩序そのものを壊すしかない」
そう呟いた広大に、小幡は無線で言葉をかけた。
「矢の軌道は変わらない。でも、撃つ角度は変えられる。
あんたの矢は、今もう“師の真似”じゃない」
「……ああ。今の矢は、俺自身の意志で放ったものだ」
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その日、王国北部の大地は沈静化し、
鉄輪機構は地中に再び潜伏した。
だが「錆の帝」は言い残していた。
「次に動くのは、“影”だ。
我らはただの駒。本当の指揮官は、まだ表に出ていない。」
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王都では、五虎が揃い始めていた。
前川右京は南で赤炎同盟の動きを断ち、
渡邉と中川は潮焔連邦の動きを押さえ、
広大と小幡は地中からの攻撃を退けた。
だが、それはまだ**“三つの矛”**にすぎなかった。
本当の脅威――
それはすべてを裏から操る、かつての影、
王国すら知らなかった“真なる敵”の存在だった。




