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『虎ノ國戦記〜五虎大将軍伝〜』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『虎ノ國戦記 未来編〜烈風の継承者たち〜』
20/25

第1話:「静けさの裏に、炎は蘇る」


終幕後の未来編開幕



――前川右京・小幡竜平の章――



虎暦三十三年――

王国には、久しぶりに“平穏”という名の風が吹いていた。


国の隅々まで農地は整い、街道には旅人が笑い、

王都の広場では子どもたちが「五虎ごっこ」と称して走り回る。


王国の新たな五虎は、それぞれの役目を果たしていた。


風牙の若虎・前川右京は、王国南部・播磨の地で巡察を行い、

翠光の智将・小幡竜平は、王都の中枢「策の塔」で次代の軍略を育てていた。


だがその平和に、ほころびは静かに近づいていた。



ある日、王国南方の辺境村「火見ノ里」が突然の火災に包まれる。


天候は晴れ、風も穏やか。

雷もなければ、火元も見つからない。

だが村は焼け、住民の一部が忽然と消えていた。


前川右京が現地に急行したとき、

そこにあったのは黒く焦げた土と、赤い灰の山。


「これは……火事じゃない。火を“使った”攻撃だ」


右京は、瓦礫の下から古い鉄箱を見つける。

中には、火薬と紙が混ざった手記が残されていた。


「赤炎同盟は再び集う。

竜帝の遺志は、地に沈んではいない。

燃えよ、再び。

我らの復国は、炎とともにある」


それは、かつて滅びたはずの竜帝国の残党が、

“赤炎同盟”という名で再び活動している証だった。



一方、王都。

小幡竜平は、北方交易路の報告書に目を通していた。


紙の端に付いた微細な焼痕、そして数字の不一致。


「……数が合わない。積載された荷物が途中で抜かれている。しかも、精密に」


ただの盗難ではなかった。

敵は明確に、“燃料”となる火薬や油を奪っていた。


「……偶然じゃない。これは、仕組まれている」


小幡は急ぎ、右京へ伝書を送った。



夜――


播磨の駐屯所。

前川右京は、焼け跡に膝をついたまま、伝書を受け取る。


小幡の書状には、こう記されていた。


「右京、敵は“竜”を名乗りはしているが、

既にあの頃の竜帝国ではない。

奴らは“炎の使い方”を進化させている。

焼き払うためではなく、脅しと統治の武器としてだ」


右京は空を見上げた。

夜空には月も星もなく、代わりに赤い霞が漂っていた。


「……見えたよ、小幡。

 火を恐れる時代は終わった。

 今度は、“火に支配される時代”が来ようとしてる」


彼は立ち上がり、腰の風刃に手をかける。


「なら、俺がその炎を切り裂く。

 風が沈黙する前に」



同時刻、遥か南の“火砦”と呼ばれる廃都の奥。

焚火を囲んだ男たちが、仮面をつけて静かに首を縦に振っていた。


中央に座る、赤い外套をまとった男が笑う。


「風が動き始めたか。

 よかろう、ならこちらも……次の火を放つまでだ」


男の名は未だ不明。

だが、彼の存在は確実に――


王国最大の“試練”を、招こうとしていた。


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