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『虎ノ國戦記〜五虎大将軍伝〜』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『虎ノ國戦記 外伝〜継ぐ者たち〜』
18/25

第五章(完結):「沈黙、守るという覚悟」



――中川勇斗の章――



静かだった。

いや、何も喋らなかったと言うべきかもしれない。


中川勇斗――

王国最年少の守備将として王都を任されながら、

彼は常に「沈黙」で物事に向き合っていた。


兵士に激励の言葉をかけることもなく、

作戦会議でも、ほとんど意見を発さなかった。


だが、誰もそれを咎めなかった。

なぜなら――彼は“守っていた”からだ。


言葉の代わりに、行動と存在で、周囲の不安を受け止めていた。



虎暦三十二年。

王国の本丸「聖甲子園城」に、不穏な報が届く。


「大地を這うような連中が、地下から接近している」


かつての巨人軍の残党。

地上戦では勝てず、いまや坑道を掘り、地下から王都を揺さぶるという策に出ていた。


この戦術は、防衛線では防げない。

罠を仕掛け、迎撃せねばならぬ。


会議は紛糾した。誰もが口を出す中、

唯一、ただ一人だけが、何も言わずに立ち上がった。


――中川だった。



数日後、彼は最小部隊を連れて地下へ降りた。

全員が無言で、無灯の坑道を進む。


湿気と腐臭が充満し、敵か岩かも判別できぬような空間。


その中で、彼はすべての音を消した。


そしてついに、地下三層目――

敵の主力と鉢合わせたその瞬間、

彼は叫ばず、命じず、ただ拳を握った。


それが合図となった。


部隊が一斉に伏兵を展開。

仕掛けた落盤とガス封鎖によって、敵は逆に孤立し、壊滅。


地下から王都へ通じる通路は、完全に守られた。



地上に戻ったとき、将校のひとりが問うた。


「なぜ何も喋らなかった?」


中川は、短く答えた。


「言葉は、必要なときだけでいい。

 守る者は、**“揺るがない”ことが一番大事だろ」


その姿に、参謀が呟いた。


「……まるで、大山将軍のようだな」


中川は何も答えず、ただ空を見上げた。



その後、彼の名前は王国全土に静かに浸透していった。


「鋼壁の若城」――中川勇斗。


民からは、「声なき守り手」とも呼ばれ、

その佇まいだけで、周囲に安堵を与える将となった。



そして今、五人の後継者たちが、再び一つの場所に集う。


前川右京、小幡竜平、井上広大、渡邉諒、中川勇斗。

誰もがまだ若く、誰もが未完成。

けれど――


風は走り、智が巡り、矢が貫き、拳が吼え、城が構えられた。


その瞬間、王国に再び声が響く。


「俺たちが、次の虎だ」



終幕:そして、継がれし五虎へ


かつて五虎が守った王国は、

新たなる五虎によって、また新しい風を迎えた。


これは伝説ではない。

これは、未来の歴史だ。


いま、虎ノ國に

新たな戦記が刻まれ始める。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


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その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


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