続編プロローグ ――「牙の記憶、風のゆくえ」――
終幕後の後継者達が… 立ち上がる
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五虎大将軍が静かに去ってから、数年。
阪神王国は確かに平和を謳歌していた。
だが、王国を包む空は、ふたたび揺らぎ始めていた。
外からの脅威ではない。
内からの問いかけ――“我らに、何が継げるのか”
虎が残した“背中”は、あまりにも大きい。
風を駆ける者は、風虎の速さに及ばず、
雷を纏う者は、雷虎の力に届かず、
皆が、かつての五虎を「伝説」と呼び、憧れながらも、自らを“影”としていた。
だが、その中に、立ち上がる者たちがいた。
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■前鋒将の継承者:前川右京(風牙の若虎)
少年期より「近本二世」と呼ばれた若者。
俊足、巧打、そして気配を読む力に優れ、王国最前線の新たな風として覚醒しつつある。
「俺は、あの人にはなれない。
けど、俺の速さで、俺の戦いをしてみせる」
彼の一歩は、まだ未完成。だが、誰よりも早く、確かに未来へ届いていた。
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■参謀将の継承者:小幡竜平(翠光の智将)
剣を持たず、言葉と判断で戦う知将。
中野の残した“采配の技”を我流で研究し、
若くして副官として王国全体の再編を任される。
「中野様の背中は追わない。僕は、横に立ちたいんだ。
未来の虎は、誰かの模倣じゃなくて、“選択”で強くなる」
静かだが、意志は鋼のようだった。
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■遊撃将の継承者:井上広大(蒼雷の弓将)
森下が去った後、その弓を受け継いだ若き将。
一撃にすべてを懸けるその姿は、どこか不器用で、だが誠実だった。
「結果を出せなきゃ意味がない、なんて言われてきたけど……
俺は“信じて撃つ”ってことだけは、あの人から教わった」
かつての蒼虎が残した“間合いと覚悟”、
それを、広大は静かに、強く持っていた。
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■突撃将の継承者:渡邉諒(雷脚の突破者)
誰よりも熱く、誰よりも激しい男。
佐藤の力を真似るのではなく、**「突破口を見つけるための知恵と力」**を融合させた、新たな雷。
「俺は雷虎にはなれねえよ。あんなカッコよくねえし。
でも、戦場に穴が空いてるなら、俺が突っ込むしかねえだろ!」
言葉より先に拳が出る性格だが、部隊の誰よりも仲間思い。まさに“現代型の雷虎”。
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■守護将の継承者:中川勇斗(鋼壁の若城)
最年少ながらも、王国の中枢に配置された“新たな守護”。
大山のように語らず、ただ静かに、すべてを受け止めて立ち続ける。
「俺には、まだ何もない。けど……
ここだけは、譲れない。絶対に通させない」
その構えに、兵たちは安心する。
守ることで仲間を支える、それが“虎の血”に刻まれた証だった。
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王国に、また新たな「五」が生まれようとしていた。
だが、これは“継承”ではない。
これは、“挑戦”の物語である。
かつての五虎大将軍が見上げた空を、
彼らは別の角度で見つめていた。
「俺たちは、俺たちのやり方で、この国を守る」
――そして、また虎が目を覚ます。