終幕:「そして、伝説となる」
春――
かつての戦の地に、緋色の花が咲いた。
かつてそこは、鉄が飛び交い、炎が立ち昇り、
血と涙が混ざり合う戦場であった。
だがいま、その地に響くのは、
子らの笑い声と、野を駆ける足音。
剣の代わりに、鍬が土を掘り、
軍旗の代わりに、風に揺れる王国の旗が立っている。
阪神王国は、勝ったのではない。
“生き残った”のだ。
巨人の重圧に抗い、
燕の鋭さを超え、
竜の炎を鎮め、
鯉の流れを断ち切り、
四帝の連合をもってしても屈せなかった王国。
その背にあったのは、
五つの意志。
風の如く、最前線を駆ける者。
地図と軍を操り、誰よりも冷静に勝機を見出す者。
矢の一本で未来を射抜いた者。
雷の拳で敵を震わせた者。
城のように黙して立ち、すべてを守り通した者。
彼らの名を、今では誰もが知っている。
人はこう呼ぶ――
五虎大将軍。
⸻
そして今、王国の城に静かに集まる、五人の影。
「……どうした?集まるには、理由がいるのか?」
雷虎・佐藤が笑う。
「いや、なんとなく、風が呼んでいたから」
風虎・近本が目を細める。
「国は安定した。だが、歴史は続く」
翠虎・中野は巻物を開く。
「若い奴らが増えてるからな。教えてやらねぇとな」
蒼虎・森下は弓を持ちつつ、どこか照れて笑う。
「守るべきものは、変わらない。……ただ、それが増えただけだ」
剛虎・大山は短く、だが深く頷いた。
彼らはもう、戦の中にいない。
だがその魂は、今もこの国の礎となって、静かに息づいている。
⸻
「虎ノ國」は、いまも生きている。
なぜなら、彼らが戦った日々は、
決して“過去”にはならないからだ。
王国の民は、今日も語る。
あの五人の話を。
風のように速く、雷のように熱く、
矢のように鋭く、策のように賢く、
城のように揺るがなかった、あの男たちの物語を――
そして子どもたちは問う。
「ほんとうにいたの?五虎大将軍って」
老人たちは、微笑む。
「――ああ、いたとも。
俺たちの誇りだったんだよ」
春の風が吹く。
空には、かすかに虎の咆哮が響いていた。
『虎ノ國戦記〜五虎大将軍伝〜』
――終幕。完結。
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