最終章・第五章: 「虎嘯、五つの魂が一つになるとき」
夜明け前の王国は、静かだった。
風もなく、鳥も鳴かず。
ただ、空だけが赤く染まっていた。
その色は――血の兆し。
甲子の大地を見下ろす丘に、一堂に会す四つの軍旗。
黒金の巨人軍。天空の燕連邦。炎の竜帝国。そして潮の鯉国連盟。
それらが、ついに手を結んだ。
名を――連合四帝同盟。
それは、覇を競っていた列強たちが、共通の脅威を認めた証。
そう――阪神王国は、いまや“王座に最も近い存在”だった。
この戦に勝てば、王国は真に「天下」に名を刻む。
負ければ、すべてが灰になる。
最終決戦が、始まった。
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■第一波――四帝の連携による“絶対包囲”
四軍の得意とする戦術をすべて組み合わせた完全包囲。
西より炎、東より風、南より水、北より鉄。
それに対し、五虎たちは即座に動いた。
「風は俺が切る。燕の動きは、もう見えている」
疾風・近本光司が最前線へ走る。
塩見と村上の奇襲をかわし、戦場の流れを撹乱。
「俺が見極める。奴らの狙いは、必ず中枢」
参謀・中野拓夢は、情報を瞬時に読み、
味方を再配置して包囲を“面”ではなく“点”で受ける戦術へと転換。
王国は崩れなかった。
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■第二波――竜と鯉の“連携衝撃”
灼熱の竜帝国が突撃し、水の鯉国がその背後を支える。
これまでの中で最も激しい連携の“波”が襲った。
「焼き尽くす気か……なら、受け止めてやる」
剛虎・大山悠輔が、またも最前線へ。
炎に包まれながらも、一歩も退かず、
竜の槌と鯉の波をその肉体でせき止める。
「大山が守るなら、俺は貫くまでだ!」
雷虎・佐藤輝明が、その背を追って前進。
竜帝・細川の盾を破壊し、鯉の波に一撃を加える。
荒野が砕け、炎がかき消えた。
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■第三波――“巨人軍の王”、動く
中央突破を選んだのは、黒金の帝王――岡本和真。
すべての兵を退け、自らの力で“王国の本陣”へと迫る。
それを迎え撃ったのは――
「来たな、王の重みを背負う者よ」
森下翔太、そして中野拓夢。
若き射手と参謀が力を合わせ、
岡本の進軍を数段階で分断。
近本の走力がそれを包み込み、完全に“孤立”させた。
「戦とは、力だけではない」
中野の策により、巨人軍は前線を失い始める。
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■最終波――すべての将が一騎討ち
残された戦場は、将と将の意志だけが支配する空間となった。
森下 vs 塩見
近本 vs 岡林
佐藤 vs 村上
大山 vs 岡本
中野 vs 新井
それぞれの戦いが繰り広げられるなか、
五虎は互いの意思を信じ、声を上げた。
「――俺たちが、阪神だ」
その瞬間、すべての五虎が“ひとつ”となった。
速度、戦略、矢、雷、守り。
バラバラだった五つの武が、奇跡の融合を果たした。
まさに、虎嘯――虎が吼えるとき。
王国全軍がそれに呼応し、最後の突撃に出る。
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■結末――
四帝同盟、総崩れ。
岡本が槌を降ろし、静かに言った。
「……完敗だ。王国は、王国の形を成した」
各軍が撤退を開始するなか、
新井貴浩が言葉を残す。
「……王というのはな、誰かに指名されるものじゃない。
戦場が、決めるんだ」
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■エピローグ
戦が終わり、聖甲子園に平穏が戻った。
五虎は再び、静かに集まっていた。
「これで終わりか?」と佐藤。
「いや、始まりだよ」と近本。
「これからは、守る戦が始まる」と大山。
「……じゃあ、俺たち五虎の仕事はまだまだ終わらないな」と森下。
中野が微笑む。
「そのとおり。“王国”とは、“続けること”だからね」
空には、虎の形をした雲が浮かんでいた。
風が吹き、草が揺れた。
虎ノ國は、今日もそこにある。