第1話 洗濯メイド アリーナのお洗濯。
ふええええっ、と、かがんでいた腰を伸ばして、アリーナが洗い終わった洗濯物の籠を干場に運ぶ。今日もいいお天気だ。
「ねえねえ、知ってる?アリーナ。」
「ん?」
「モーリッツ公爵が代替わりしたでしょう?あの人の行方不明だった婚約者、見つかったんだって!」
「ああ。聞いた聞いた!何年越し?よく探し出したわよね?」
自分より一回りくらい年上のメイドと、洗濯物を干しながら噂話になる。まあ、いつもの事。
「誘拐されてたんでしょう?どうせ乱暴とかされてたんじゃない?」
「えええ?知らないの?」
「ん?」
「一緒に逃げた侍女と、なんつったっけ?何とかっていう北部の果てにある教会に逃げて、修道女になってたらしいわよ?」
「え?そうなの?」
「そうそう。だから、髪もバッサリ切って、ねえ…貴族令嬢は髪が命なのに。なんで命を狙われたかわからないから、おとなしくお勤めしてたらしい。」
「へええ。そうだったんだ。」
パンッ、と二人でシーツを広げる。いい感じの風もある。
「そうそう。お相手の方も、よく探したわよね。あきらめなかったのね?愛よねえ。」
「きゃあ!素敵ね!愛よね!!みんなに教えてあげなくちゃ!!」
ピンチで留めて、風に吹かれるシーツを眺める。
さて。お昼ご飯でも食べに行こうかな。