表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彩雲華胥  作者: 柚月 なぎ
第一章 予兆
8/249

1-8 いつもの光景



 ふとあの日の出来事を思い出していた竜虎りゅうこは、無明むみょうの返事を待つ。


 あれから五年経ち、ふたりは十五歳になった。妖者ようじゃ退治に関しては今のところ無明むみょうの方がまさっているが、背丈と同じようにその内追い抜いてやる予定だ。


「明日は早いから、近場のこっちかなっ」


「よし、決まりだな」


 仲の良いふたりの横で、むうっと璃琳りりんは頬を膨らませる。


「ふたりとも、ちゃんと私を守ってね!」


「怖いなら無理してついて来なくても····」


「私はふたりの監視役なんだから、ついて行くに決まってるでしょ!」


 はいはい、と竜虎りゅうこは自分の肩の高さ辺りにある璃琳りりんの頭をぽんぽんと叩く。単に仲間外れが嫌なだけのくせに、と素直じゃない妹の性格に同情する。


「心配しなくても大丈夫だよ? 璃琳りりんは俺が守ってあげるから」


 ふたりの会話を聞いていた無明むみょうが、璃琳りりんの前にいつの間にかさっと立ち、見返りも悪気もなくいつものように笑った。


 仮面の奥の瞳は相変わらずよく見えず、璃琳りりんは馬鹿っ! 痴れ者! と竜虎を盾にして怒鳴りだす。しかし当の本人は怒られている理由がわからないため首を傾げ、興味をなくしたのかくるりと背を向けてさっさと歩き出してしまった。


(なんなのよー! もうっ!! ばかっ)


 暗闇のおかげで、耳まで真っ赤になった顔を晒さないで済んだのが、せめてもの救いだ。


 夜に相応しくない賑やかしい一行が向かうのは、紅鏡こうきょうの北東の外れ。遠くに見える北の森の奥で、他の術士たちが今夜も妖者ようじゃ退治を行っている中、三人は北東の方へと歩を進める。


 月明かりと、ほのかな灯。

 澄んでいるはずの夜空にあるものがないことを、三人は気付いていなかった。

 

 

 それがこの先に待つモノの不吉さを物語っていたことを知るのは、もう少し後のことである。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ