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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

気弱でいじめられっ子の僕がネコになった女の子の助けを借りていじめっ子に復讐します。

作者: 天網 慶

 僕は目を丸くした。目の前のネコが喋ったからだ。ここからだ。僕の人生が変わったのは。


 僕の名前は、野原獣太(のはら しゅうた)。18歳の高校生だ。10分前、僕はいつものように下校をしていた。するとどこからか僕を呼ぶ声がした。

「おい、お前、こっちに来い。」

 僕はあたりを見渡したが、周りには誰もいない。

「ここだ、ここ。」

 声のする方を見ると、声の主は塀の上で寝ているネコだった。僕は驚いて思わず叫んだ。

「ネコが喋った!!」

「そう叫ばんでも聞こえてるわ。」

 気だるそうにネコが言う。僕は自分の頬っぺたをつねってみたが、痛い…。どうやら夢ではないようだ。

「現実世界に頬っぺた引っ張る人なんているんだ。」ネコに笑われる。僕はムッとして言い返した。

「喋るネコなんかに言われたくないね!」僕は無視して帰ろうとした。するとネコが呼び止める。

「まあ、そうムキになるな。あんたにちょっと頼みたいことがあるんだけど…。」

 そういってネコは自分がネコになった経緯を話して始めた。どうやらネコになる前は人間だったらしい。しかも僕と同い年の女の子。僕が今18歳だから、18歳の女子高生ということになる。ある日パパ活をして、いろんな男から金をむしり取っていたら、その中の1人が魔法使いでネコに変えられてしまったようだ。そこで人間に戻るの手伝うことが頼みたいことらしい。

 にわかには信じられないことだが、第一ネコが喋ること自体おかしいので、僕は信じることにした。

「それで、君はどうやったら人間に戻るわけ?」僕は尋ねた。

「愛よ。」ネコは淡々と答える。

「愛!?」僕は首を傾げる。

すると(男なら察しなさいよ)と言わんばかりの目でネコが言う。

「魔法使いによるとね。私には愛が足りないらしいの。真実の愛とやらを見つけたら、魔法が解けるらしいわ。だからあんた、私を好きになりなさい。」

 (いや、可笑しいだろ。見ず知らずのネコをなんで僕が好きにならなきゃいけないんだ。)僕はそう思ったが彼女には言わなかった。代わりに、

「僕は無理だよ。」そう言って、ネコを無視して家に帰った。

 今日は変な事があったせいで、いつもよりどっと疲れた。自分の部屋に入るなり、仮眠を取ろうとしたが、「ニャー」という声がする。急いで起き上がると、机の上にさっきのネコがいた。

「なんでお前がいるんだよ!」僕は叫ぶ。

「ネコは体が柔らかいからどこでも登れるの。2階だからって、窓を開けっぱなしにしちゃだめよ。」

 僕はイライラしながら言った。

「出ってってくれ。僕にできることは何もない。」するとネコが言い返す。

「いいえ。あなたが『はい』って返事するまであなたに擦り寄るから。」

「どうして僕なんだ?」僕が聞くと、

「あんたみたいなモテなさそうな男は、簡単に女の子を好きになるのよ。早く人間にもどりたいもん。」ネコはそういった。

 僕は内心はらわたが煮えくり返りそうだったが、ぐっと抑えた。多分これ以上何を言っても駄目だろう。僕はあきらめて、彼女の提案を受け入れた。こうして喋るネコとの奇妙な日常が始まった。

 僕はその日の内に彼女のことを知ろうと色々聞いた。驚いたのは僕と趣味が同じだったことだ。彼女は話し方からして、陽キャって感じで僕とは相いれない存在だと思ってたけど、僕と同じ深夜アニメが好きだったなんて。しかも彼女は結構なオタクだった。僕が引くくらいに。でもなぜか人間だった頃の名前だけは頑なに教えてくれなかった。僕は何とかして聞き出そうとしたけど、この半日彼女と過ごしてものすごく身に染みたのは、彼女がものすごく頑固だということ。そんな頑固な彼女から名前を聞きだすのは無理だなと思い今日は寝た。


 次の日、僕は「ほら、朝よ。早く起きなさい。」という声で目が覚めた。お母さんの声ではない。僕はびっくりして起き上がると、その声の主は昨日のネコだった。

「はいはい、分かったよ。」僕は半分寝ぼけながら体を起こした。そして部屋の前に置いてある朝食を持ってきて、机の上に置いた。

「いただきます。」そう言って僕は朝食を食べ始めた。

「ご飯って普通家族と食べるものじゃないの?」彼女が不思議そうに言う。

「昔はそうだったんだけど、僕、兄さんの高校受験を台無しにしちゃったんだ。それ以来兄さんからは嫌われちゃって。親からも失望されて…。朝は、僕1人で食べることになったんだ。」僕は寂しそうに答える。

「ふーん。あんた何をしたの?」彼女は尋ねる。

「兄の受験の3日前に僕がインフルエンザに罹っちゃって。それを試験当日の日に兄にうつしちゃったんだ。兄は本当は毎年東大に50人合格させている高校に行く予定だったんだけど、インフルが治った頃には、今僕が通ってる偏差値55の高校しか受験できなかった。それから口もきいてくれないんだ。」僕は窓の外の遠くを見ながら答えた。

「今日、あんたと一緒に学校行くから…。」彼女はそう言って窓の外に出ていった。

 身支度が終わり僕が部屋を出ようとすると、彼女がちょうど来た。

「ほんとに一緒に来るつもり?バレたら僕がやばいよ。」僕はおそるおそる言う。

「平気よ。ずっとバックの中に隠れて、上手い感じにやるわ。それよりバックのチャックを少し開けて、私にも外を見えるようにしてね。」彼女は楽しそうに言う。

 僕は彼女の言う通りにして、不安な気持ちで部屋を開けた。すると丁度、兄も部屋から出てきた。

「俺にその顔見せるなっつっただろ。」そう言って兄は僕を睨む。

「ご、ごめん。まだ居るとは思わなくて。」僕は下を向いて目を泳がせる。

「お前きょどってるのほんとキモイな。俺、今日彼女と一緒に学校に行くんだよ。頼むから俺の弟だって言わないでくれよ。お前みたいなキモイやつが弟にいるってバレたらとんだ恥だからな。」兄はそう言って、僕をもう一回睨んでから家を出ていった。

 1階に行くと、両親が待っていた。

「お願いだから雅清(まさきよ)のことは刺激しないでね。彼、昨日の東大模試でC判定だったのよ。今が大事な時期だから、また邪魔するなんてことはしないでね。」お母さんが優しく言う。僕は1言「分かった」と言って家を出た。

 登校中歩いてると、鞄の中から「何さっきの人たち?」と不機嫌そうな声が聞こえた。

「みんなにバレるから黙ってろよ。僕の家族のことは君に関係ないだろ。」僕は小さな声で彼女に言った。

 

 教室に入るや否や、いきなり1人のヤンキーが「みんな!今日も子犬ちゃんの登場だ!」と叫ぶ。周りの男子たちは大声で笑い、女子たちはクスクス笑いながら何か内緒話をしている。僕はそんなのお構いなしに席に着く。さっき叫んだヤンキーは、累川 風(るいかわ ふう)。先生でも手を焼く生粋のヤンキーだ。僕は、学校でいじめられているのだ。『子犬ちゃん』とは、僕の名前が『獣太』なのに僕が小動物みたいに気が弱いから付けられたあだ名だ。

 休み時間、僕は風とその仲間たちに教室の後ろに立たされて、お腹をパンチされたり、プロレス技をかけたりする。風は先生に注意されると、

「ただ、しゅうた君とプロレスごっこしてるだけですよ。」と言う。それに対し先生も

「そうか。怪我には気を付けるんだぞ。」としか言わない。僕が毎日体中にあざを作ってることも知らずに。クラスの残りのみんなは僕がやられてるのを見て笑っている。ほんとにプロレス感覚で見ているのだろう。

 昼休み、今度は風にトイレに呼び出された。今度は無理やり服を脱がされて、動画を撮られた。そしてあらゆるSNSを使って学校中に拡散させられた。こんなことは今日で5回目だ。みじめな思いをしながら服を着なおして、落ち込みながらトイレを出ると、同じクラスの女子3人組とすれ違った。3人は僕をみると、3人で見つめ合って、体を寄せ合い、すれ違い様に「キモッ」と言ってきた。いつものことなんだけど僕の心はもうボロボロだ。

 ようやく長い1日が終わり、下校の時間になった。家に向かって帰ってると、偶然、コンビニから出てくる兄とその彼女と出くわした。

「あ…。」僕はつい言葉を漏らしてしまった。すると、兄の彼女が

「何?この人ガスの知り合い?」と言う。ちなみにガスとは、兄の名前『雅清』を音読みした兄のあだ名だ。

「こんなやつ知らねえよ。さっさとお前ん家行こうぜ。」兄はそう言いて僕のことを無視した。

「だよね。ガスがあんなキモいやつと知り合いなわけないよね。」彼女はそう言って、兄と手を繋いで、どこかに行った。

僕はそそくさと早歩きで家に帰った。そして自分の部屋に入り、すぐにベッドにダイブした。自分の部屋だけが僕の落ち着ける場所だ。僕は傷ついた心をいやすために録画したアニメを見る。何度みてもこの声優さんの声は安らぐ。すると、

「あんた、いつもあんな感じでいじめられてるの?」彼女が鞄から出てきて言う。

「そうだよ。」僕は1言だけ呟いて、テレビの画面を注視する。

「何であんなにいじめられてるのよ。」彼女は真剣な眼差しで聞く。

「あれは、小学校5年生の頃。僕のクラスでいじめられてる女の子がいたんだ。僕はその子を庇ったんだけど、今度は僕がいじめの標的になっちゃって。それから中学・高校といじめが収まることは無かった…。」

「そう…。…。親とか先生に相談しないの?」

「しないよ。親は兄の東大受験のことで頭がいっぱいだ。これ以上迷惑はかけられない。それに先生に言ったところで、表面上はなくなるかもしれないけど、裏でひどくなるだけだよ。」僕はテレビの画面から目を離さずに言った。

「あったまきた!明日あのヤンキーに復讐するわよ!」その言葉に、僕は初めて彼女の方を見た。

「そ、そんなの無理だよ。僕は力も強くないし…。」

「あんたって本当根性ないのね。やるかやらないかだけはっきりして。」彼女は淡泊に言う。そりゃ、復讐できるならしたいさ。だけど失敗したら、いや、どっちにしろいじめられるんだ。ならヤツに一矢報いたい。僕はそう思い、

「やります。」と言った。

「いい返事ね。じゃあ明日の昼休みまでに、大量の体操マットとトランポリン。それからカメラ1台用意しといて。」彼女は淡々と述べた。

「そんなものでどうするの?」僕が尋ねると、彼女は耳打ちしてきた。そして作戦を聞くと、僕は目見開いて

「それはヤバいよ!下手したら捕まるよ!」と言った。彼女はネコの顔でニヤリと笑うだけだった。こうして僕たちの復讐劇が始まる。


 次の日、僕は彼女の言うものを鞄に詰め込んで家を出た。当然、彼女も鞄に入ってついてきた。そしていつも通りいじめられるが、そんなのは無視した。昼休み、こっそり体育館に忍び込んで、体操マットを拝借して、家から持参した組み立て式トランポリンと一緒に言われた場所にセットした。そして僕は、彼女の入った鞄を持って屋上に行った。

「ほんとに上手くいくの?」僕は不安そうに彼女に言う。

「男ならシャッキっとしなさいよ。そんなんだからイジメられるのよ。」彼女の言葉が心に突き刺さる。

「本当、言うことが辛辣だな。」僕はそう言って携帯を取り出し、風を屋上に呼び出した。そしてすぐに物陰に隠れた。全部彼女の指示だ。彼女は屋上の柵をくぐり抜け、落ちるか落ちないかのところにスタンバイした。

 しばらくすると、「バン!!」と勢いよくドアが開き、風が来た。

「子犬ちゃんの分際で俺を呼び出すとはいい度胸だな。おい、いねえのか!?」風が叫ぶ。僕は怖くて手が震えてきた。でも彼女に指示通り、携帯でビデオ撮影を開始した。

「ニャーン」彼女が可愛く鳴く。すると風はネコの存在に気づき、彼女に近づく。

「どうしたんでちゅか、ネコちゃん。そんなとこに居たら危ないでちゅよ~。」風は急に赤ちゃん言葉を使いながら、柵を乗り越え、彼女の元に近づく。

(おい、マジかよ!あのコワモテの風があんな言葉使いを。)僕は必至に笑いを抑えて撮影を続ける。そして動画の撮影を止めて、こっそり屋上を出た。

(本当に彼女の言った通りだ。どんな怖いヤンキーでもネコの前では甘えちゃうんだ)僕は校庭に向かって走りながら、笑った。

 一方屋上では、風がネコを抱きかかえていた。「さあ、安全なところに行きましょうね~」そんなことを言いながら柵を乗り越えようとすると、「ニャア!」ネコが風の顔を引っ掻いた。風は、その急な出来事に驚いたのと痛みで後ろによろめいた。そしてそのままバランスを崩し、屋上から落っこちてしまった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」風は叫びながら落下する。しかし、落下先には、大量の体操マットとトランポリンがピンポイントに置いてあり、風は無傷で助かった。

 僕はその一部始終を見ていた。風の悲鳴と落下音で生徒と先生たちが集まってきていた。

「お前、一体何があったんだ?」先生が風に尋ねるが、風は文字通り死ぬ思いをしたので上手く話せない。そこで僕が集まった全生徒に見せる形で、屋上で撮った動画を見せた。

「僕、たまたま屋上で見たんですけど、風君がネコとじゃれ合ってって。それですべって落ちちゃったんだと思います。」

 生徒たちは、風の赤ちゃん言葉を聞き、互いに見つめ合ってクスクスと笑った。すると生徒の中の1人が叫んだ。

「おい、風のやつお漏らししてるぞ。」

「まじで~。」「キモっ」そう言って生徒たちは自分の携帯を取り出し、風の写真を撮り始める。

「みんな。止めてくれ、頼むから。ネットにはアップしないでくれ。」風はついに泣き出してしまった。

「僕の気持ちが分かったか?みんなに見世物にされる気持ちが分かったか?」僕はそう言ってそっとその場を立ち去った。

 すべてうまくいった。僕は屋上に向かいながら思わずガッツポーズを決めた。

 屋上に戻ると、そこには誰もいなかった。

「あ、あの…。すべて上手くいきましたよ。」僕はそう言って彼女を探したが、どこにもいなかった。すると、1枚の紙が置いてあるのを発見した。その紙にはこう書いてあった。

「お前の大切なネコは預かった。返してほしければ○○倉庫まで1人で来い。」


 倉庫に行くと、そこにはネコを抱きかかえた兄がいた。

「やっぱり兄さんだったか。何でこんなことをするんだ。」

「愚図が俺に質問するな。あのヤンキーを懲らしめたのはお前だろう。お前が上手くいってるとこなんて死んでも見たくねえんだよ!」

「なんでそれだけでこんなことをするんだ!」僕は強気に出る。

「昨日と今日で本当さんざんな目に遭った。昨日は東大模試の結果が上手くいかなかったし、キモいお前との関係がバレて彼女にもフラれたんだよ!俺がこんな思いしてんのに、お前だけいい思いしてんのは許せねえ!お前、このネコいねえとなんもできねえだろ!」

 そう言って兄は、彼女を思いっきり地面に叩きつけた。

「やめろ!」僕はそう言って兄に殴りかかったが、逆に兄に殴られてしまった。

「野良猫を一匹殺したところで罪になんねえだろ。お前が黙ってたらな…。」兄はそう言って、懐からポケットナイフを取り出した。

 僕は気づいたら、兄に向かって突き進んでいた。今までだったら怖くて動けない筈なのに、彼女のことになると体が勝手に動いていた。

「来るな、愚図が!」兄はそう言って僕にナイフを向ける。しかし僕はそれでもお構いなしに殴ろうとする。

「ッ!」兄が防衛反応で僕の腕を軽く傷つける。

「うおおおお!」

それでも僕は兄を殴った。痛みは一切感じなかった。兄はよろめきながら起き上がり、

「お前、頭おかしいんじゃねえの?」そう言って逃げ出した。

 倉庫を出てしばらく走っていると、兄は警察官とばったり遭った。警察官は兄が手に持ったナイフを見ると、

「君、一緒に署まで来なさい。その制服はどこ高だ?」と言って兄を連行した。


「さっきは助けてくれてありがとう。腕の傷大丈夫?」彼女は心配そうに僕を見つめる。

「こんな傷、全然へっちゃらだよ。そんなことより君に怪我はない?」

「私は…。」彼女が口を開いた途端彼女が光だした。すると彼女は走ってどっかに行ってしまった。

 僕は急いで彼女を追いかけた。(なんで急にどっか行くんだよ…。)そう思いながら曲がり角を曲がると、そこには1人の女性が立っていた。

「すみません。ここら辺にネコが通りませんでしたか?」僕は女性に尋ねる。

「あっちに行きましたよ。」女性は指をさして教えてくれた。

 しかし、僕は彼女を目を見てこう言った。

「何言ってるんだ、君だろ。」

「ど、どういうことですか?」

「ネコからようやく人間に戻れたんだね。だって、ネコの頃と同じ、綺麗な茶色い目をしている。」

 彼女は照れ隠しをするように顔を背けた。僕はさらに続けた。

「ネコの正体は君だったんだね。鐘子さん。」

 ネコの正体は僕が小学5年生の時、いじめから救った女の子、鐘子 瞳(かねこ ひとみ)さんだった。

「やっぱり、あなたは私のこと覚えててくれたんですね。」鐘子さんは頬を赤く染めながら僕を見る。

「私、野原君に嘘をついたの。私はパパ活なんかやってないよ。小学5年生の時、君に救われたお礼を言えずに引っ越しちゃったから、ずっとお礼を言いたかったの。そうしたら、ある日朝起きたら急にネコになってて…。これは神様からのチャンスなんだって思って、ずっと野原君を探してたの。」鐘子さんが目を逸らしながら言う。

「何言ってるんだ。助けられたのは僕の方だ。おけげでいじめっ子に復讐できたよ。ありが…。」僕は鐘子さんの目を見て言ったが、途中で手で口を塞がれてしまう。

「やめて、私のせいで野原君はいじめられてたんだよ。だから私に言わせて。私のせいでいじめの標的になっちゃってごめんなさい。そして、小学生の時も今日も私のことを助けてくれてありがとう。すごくかっこよかったよ!」彼女は僕の目を見てほほ笑む。

「う、うん…。」僕は照れて、鐘子さんの顔を見れなかった。しばらく気まずい沈黙が続く。

「あ、あの…。」2人が同時に喋ろうとする。「な、何?」僕が尋ねると、「野原君こそ何…?」鐘子さんも聞き返してくる。「いや、君から…。」僕がそう言うと、

「ううん。野原君のから聞きたい…。」と真剣な眼差しで言ってくる。

「あの…、僕たち付き合わないかな…。ちょっとの間とはいえ、一緒に過ごして楽しかったし、それに僕たち同級生でもともと知り合いなわけなんだし…。」僕はてんぱってしまって自分でも何言ってるんだろうって思った。

 でも鐘子さんは、そんな僕の告白をゆっくりと聞いてくれて、

「私も…、付き合ってくださいって言おうと思ったの…。先こされちゃった。」鐘子さんは照れ笑いをしながら言った。

「それって、OKってこと?」僕は天に上りそうな気分だった。

 すると、急に彼女が顔を近づけてきて、彼女の唇が僕の唇に触れた。そしてゆっくりと顔を離す。時間にすると一瞬の出来事だったが、僕の脳内では、何時間にも感じた。

「一緒に帰ろう!」鐘子さんは笑顔でそう言って歩き出す。僕は急いで鐘子さんを追いかけて、手を握った。

「順番逆だよ。」僕のその言葉に、2人は見つめ合って笑った。

 鐘子さんと一緒なら勇気が湧いてくる、なんだってできるような気がする。僕は命に代えても彼女を守ろうと心に固く誓った。

 最後まで読んでくださいありがとうございます。モチベーションアップのため、いいね・感想よろしくお願いいたします。

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