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第二十二章

 久しぶりにイリア、エリックと再会した。


 マーカスの元に集合して魔王対策会議を開こうとするが、三神将カスペルが出現する。


 彼女の中の「邪神ヴルトゥーム」によって、苦戦を強いられることになった――。



「二コラ! レオ! 二人は爆発が起きたタイガーエンペラーの方を見に行ってくれ!」


 影の二人に指示を出し、再び邪神ヴルトゥームとの戦いに集中する。



「イリアとエリックは、僕たちの後方に結界を張る準備をしてくれ! ヤツにバレないくらいの距離……五十メートルほど後方で、できるだけ頑丈なやつを頼む!」


「承知しました!」


 二人は森の奥に消えていった。


 アリスが近寄り、耳元でコソコソと話す。


「私たちは結界を張る為の時間を稼ぎつつ、このまま後方に誘導すればいいのね……?」


「さすがアリス! さぁ、気合い入れていこう!」


 邪神ヴルトゥームによって足場を奪われる中、僕たちはじわりじわりと距離を詰める。


「アリス! 避けろ!」


 頭上から、太い木の枝がムチのように攻撃してきた。


「ありがとう! 大丈夫よ!」


 アリスは刀身の刃の逆側、みねを使って枝をいなした。


 一瞬のミスで大打撃を受けてしまう状況でも、冷静に対応するアリスを見て、修行の成果をひしひしと感じた。


「スキル、賢者――」


 炎を纏わせた短剣を、ヴルトゥームに向けて投げる。


 しかし、足元から急速に伸びる木々が、それを止めた。


 万が一にも火事にならないよう、水風船を創成魔法で作ってぶつけた。


「無理はせず、距離を取りつつ戦おう!」


「わかったわ!」


 僕たちは攻撃を受け流しつつ、時間を稼いだ。


 後方から「ドン!」と、花火のような音が聞こえてくる。


「アリス!」


 生き物のように動く木々を避けながら、アリスの名前を呼んだ。


 アリスは目を合わせ、一度だけ頷いた。


 音が聞こえた方向に向かって、罠だとバレないように、少しずつヴルトゥームを誘導する。



 次の瞬間、僕たちを追うヴルトゥームが、罠にかかった――。


 小さなドーム型の結界に閉じ込められて暴れ出す。


「二人とも、ナイスだ! これ以上、森をめちゃくちゃにさせるわけにはいかないからね!」


 ヴルトゥームは結界に閉じ込められ、内側から壁を叩いている。


「スキル、テレポーテーション――」


 ヴルトゥームの背後に移動。


「スキル、業火――」


 足元に、超高温のマグマを発生させた。


「スキル、呪術――」


 金縛りを発動させた。


「ちょっとごめんよ」


 背後から、肩に手を乗せてスキルを授かった。


ピコン――!


「スキル、テレポーテーション――」


 アリスの背後に移動した。


 邪神ヴルトゥームは炎に包まれ、一層暴れていた。


「マコト様……。これでは、中がどうなっているか分かりませんね……」


 結界内は黒い煙が充満し、確かに何も見えなかった。



 しかし、誰よりも早く勝敗の行方を知った僕は、フッと笑った。


 僕の目の前には透けたウインドウが現れたのだ。



『カスペル、邪神ヴルトゥームの魂を引き抜きますか――? YES NO』



「ん~……高飛車な感じだったし、あんまり欲しくないけど……。っていうか、やっぱり二コラの時と同じように、邪神と三神将の生命って繋がってるんだなぁ……」


 気乗りしないまま答えた。


『YES――』


『カスペルの名前を決めてください――』


「カスペル」



『邪神ヴルトゥームの名前を決めてください――』


「ヴルトゥーム」



 いちいち名前を考えるのも面倒で、僕はそのままにしておいた。


「ひとまず、こっちはオッケーだね。さぁ、レオたちの元へ急ごう!」



 僕たちはタイガーエンペラーの動物園まで戻った。


「主~!」


「レオ! 大丈夫か!?」


「なんとか足止めしておったぞ! あの大量の人間を!」


 見渡すと多くの人がずらりと取り囲んでいる。


「おお! 偉大なる者よ! 人間どもの足止めは任せておけ! しかし、こやつらは何かに触れると爆発するようで、厄介極まりない」


「タイガーエンペラー、久しぶり。君でも厄介だと思う相手なのかい?」


「いやぁ……もしも、我の城に傷でも付けられたら、たまったもんじゃないからなぁ! ハッハッハ!」


「気に入ってもらえてるようでよかったよ」


 そう、確かにただの人間なら心配はいらない。しかし、ここに大量の爆弾が仕掛けられているのと、なんら変わらない。


「マコト……この人たち、なんだか変よね……。生気が感じられないというか、気味が悪いわ」


 アリスの言う通りだった。


 全員、目が虚ろで、中身が入っていない、人形のようだった。


「そりゃそうさ、彼らは人形そのものだ」


 二コラが口を開いた。


「魔王ニルソンはマコトと同じで創造魔法を使える。人間の入れ物を作っているのさ……。そしてその人形にスキル「爆発」を組み込んでいる。趣味が悪いだろう?」


「あぁ……趣味が悪すぎて笑えないね」


 僕たちの会話を聞いていたエリックは怒った表情で話し出す。


「趣味が悪いってレベルじゃないさ! そもそも魔法で人間を生み出すことは禁忌とされているんだ! 魔王のせいで、魔法使いの名が汚れるのは許せないね! まったく!」


 エリックには魔法使いなりの誇りがあるのだろう。プンプンと怒っている。


「レオ、ところでここにはどれくらいの人形があるんだい?」


「おおよそではあるが、二百くらいであろう」


 二百の爆弾が、一斉に起爆することは想像したくない。


「なぁ、二コラ? 「爆発」っていうのは、どういうスキルなんだ? 元々、魔王の部下だった二コラなら、何か知ってるか?」


「ん~、確か……魔王ニルソンが言ってたような気がする……。本来は自分で爆発する箇所や威力を操って、対象を爆発させる仕組みで、扱いが意外と難しいだとかなんとか」


「でも、ここにいる人達は、触れ合うだけで爆発が起きてしまう」


「そうだね。マコトの言うように、触れ合うだけで爆発するのは、きっと意思がない人形だから制御ができないのだろう」


 僕たちは難しい顔をしながら、何か方法がないかと模索する。


 そんな中、アリスが何気なく言い放った。


「この人たちに、意思があればいいのにね……」



 その一言により、僕の頭の中でパズルが組み合わさった――。


「それだ! 意思を入れてやればいいんだ!」


【応援いただけると幸いです】


 「面白かった!」


 「続きが気になる、もっと読みたい!」


 と思っていただけたら、ブックマークなどしていただけると幸いです。


 物語の続きを書く上で、大変励みになります。


 何卒よろしくお願いいたします。

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