第二十章
北の大地「ノースランド」で行われている剣技大会の会場。
三神将のニコライと戦うことになり、彼の中から邪神スルトが解き放たれた。
スキルを駆使し、アリス、レオと共にスルトを倒したと思った瞬間。
ニコライが、突然苦しみ始めた――。
「ぐっ……ぐぁぁ……!」
「どうした! ニコライ! しっかりしろ!」
「マコト……開放してくれて……ありがとう……」
解放とはどういう意味か、咄嗟には分からなかった。
「魔王の手によって、邪神と融合させられ……苦しみながら今日まで過ごしてきた……やっと、開放されるんだな……」
邪神スルトが灰と化し、ニコライも消えていく……。
僕はニコライの手を取り、ひたすらに見つめることしかできなかった。
アリスは僕の悲しみを払うように、横から抱きしめてくれていた。
――突然、僕の間にウインドウが現れる。
『邪神スルト、ニコライの魂を引き抜きますか――? YES NO』
「これは、まさか……?」
ニコライの気さくな笑顔が脳裏に浮かぶ。
迷う必要はない。
『YES――』
『邪神スルトの名前を決めてください――』
「スルト……」
『三神将ニコライの名前を決めてください――』
「ニコラ……」
名前を呼ぼうとした瞬間、突然何かが頭から降ってきた。
「痛い……今度はなんなんだ……!」
「ほっほっほ、すまんのぅ、まさか、マコト殿の頭に着地するとは思わなんだ……ヒック!」
そこにいたのは、酔っぱらったレナードだった。
どこから降ってきたのか……。頭がズキズキと痛む。
『スルト、二コラが仲間になりました――』
「あ……」
ニコライではなく、二コラで登録してしまったようだ。
後で謝ろうと決めた。
「いやはや……この会場を囲むようにして地中からマグマが噴き出し、多くの市民が犠牲になってしもうた……。元凶を突き止めようと、飛んで馳せ参じたのだが……」
「レナード団長、もう、終わりましたよ」
アリスはジトっとした目でレナードを睨みつけた。
しかし、やはり会場の外でも被害が出ていたようだ。やるせなさが胸を締め付ける。
目の前のウインドウは消えずに、再びメッセージが表示された。
『会場付近の人間の魂を引き抜きますか――? YES NO』
市民の人たちの無念を晴らせるのなら、そう思い、僕は「YES」と答えた。
ステータスウインドウの「影の使い」一覧には、今までレオのみだったが、スルト、ニコラと追加された。
その下に、市民1、市民2と永遠に増え続ける「市民」という文字。増えている間はウインドウを閉じられないらしく、しばらく邪魔だと思いながら若干後悔した。
スキル欄には「バーサーカー」、「業火」が追加されていた。二コラ、もしくはスルトのスキルだろうか。
ふと、騒がしくなるコロッセオ会場。
どうやら、警備兵たちが駆けつけてきたようだ。
「失念しておったのぅ……ワシはともかく、お前さんたちは、連行されると面倒なことになりそうじゃ。今のうちに退散しておくがよい」
「確かにそうだね。今のアリスに余計な容疑をかけられても困るし、僕はもっと面倒なことになりそうだしね。レナード、悪いけどここは任せるよ」
「そうね、ここは団長に任せましょう」
僕とアリスはレオに乗って、その場から去った。会場は大混乱、消えた多くの市民、おまけにキングウルフの影まで現場から逃走……レナードはなんて言い訳をするのだろうか。
僕たちは剣技大会が行われていた「セントワード王国」を離れ、とりあえず南の町「セッテホルム」を目指す。
レオの背中、僕はニコライ改め、ニコラを影として召喚した。
「マコト! 君ってやつは本当に!」
ニコラの影は嬉しそうに話した。僕たちは再会を喜び、軽いハグをした。
「ニコライ! あ……二コラ!」
「君ってやつは本当に……」
同じ言葉でも、今度は明らかにトーンダウンしている。
名前登録を間違えたことで落ち込んでいるのだろう。
「ご、ごめんね。文句なら後でレナードに言ってくれ」
苦笑いしながら謝り、レナードに責任をなすり付けておいた。
「それよりも、二コラ。君や魔王ニルソンについて教えてくれないか……?」
今では僕の影となったが、元は三神将。果たして、口を割ってくれるのだろうか。
「あぁ……!もちろんだよ、マコト!」
心配はいらないようだ。
「ボクは今、影になったみたいだね。不思議な感覚だが、状態は悪くない。ボクのスキルは『バーサーカー』と言って、強靭な肉体と強大な力を引き出せるが、発動すると我を忘れてしまうんだ。性格も怒りっぽくなってしまうしね! 会場では暴れてしまって、すまなかったね」
「二コラ……それを市民が参加する剣技大会で使うなよ……。しかも僕のことも、散々悪く言ってたぞ……」
二コラは「えへへ」と言いながら、握りこぶしを作り自分の頭をコツンと叩いた。照れ笑いどころの話ではないのだが。
「いやぁ……しかも、バーサーカーを使うと邪神スルトが簡単に出てきちゃって、いつも大変なことになっちゃうんだよね……!」
爽やかに言い放つ二コラに、優しくデコピンしておいた。
「それより、魔王ニルソンについてはどうなの……!?」
アリスが詰め寄ると、なんだか照れくさそうに二コラが話し始める。
確かに気持ちは分かる。
慣れてきたからこそ平気だが、アリスは美人だ。どぎまぎするのも無理はない。
「え、えっと! 魔王は……ん~、どこから話そうか……。ボクの知ってる限り話そうと思っているけど、一番重要なことから話しておくね」
僕とアリスはうんうんと頷き、二コラの次の言葉を待った。
「魔王ニルソンは、不死身だよ――」
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